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王城の大広間は、やけに静かだった。
ざわめきはある。
だが、それは熱ではなく――冷えた視線の集まり。
「レティシア・フォン・アルヴェイン」
名を呼ばれ、私は一歩前へ出る。
視線の先にいるのは、婚約者である王太子。
その隣には――見知らぬ少女。
「貴様の罪は明白である」
ああ、来たのね。
「毒の混入、侍女への暴行、そして聖女への嫌がらせ」
どれも、初めて聞く罪状だった。
けれど私は驚かない。
ただ、ゆっくりと首を傾げる。
「証拠は?」
「証人ならここにいる」
王太子が少女の肩を抱く。
少女は震えながら、私を指差した。
「この人が……やりました……っ」
……なるほど。
“そういう筋書き”なのね。
「他にも証言はある。お前の側近すら――」
「もう結構ですわ」
言葉を遮ると、場の空気が揺れた。
私は一歩、前へ。
そして――微笑む。
「その断罪、見事ですわ」
「……何?」
「よくできています。少なくとも、“初見”なら騙されますもの」
ざわめきが強くなる。
王太子の眉が寄る。
「何を言っている?」
「ですから」
私は、彼をまっすぐ見つめた。
「その流れ、三回目なんですの」
――沈黙。
誰も、理解できていない。
それでいい。
「一度目は、何も分からず処刑されました」
一歩、また一歩と進む。
「二度目は、逃げました。でも無駄でした」
王太子の顔色が変わる。
「そして三度目」
私は、静かに頭を下げる。
「ようやく“配役”が分かりましたわ」
顔を上げる。
その時にはもう、笑っていなかった。
「次は――こちらの番です」
その瞬間。
床が、光った。
魔法陣。
誰かが息を呑む。
「なっ――」
「安心なさって」
私はドレスの裾を摘み、優雅に礼をする。
「今回は、きちんと終わらせますから」
光が、すべてを飲み込んだ。
――そして。
次に目を開けた時。
私は、知っている時間に立っていた。




