22.シュヴァルツ再び
翌日。俺は森に来ていた。
今日の目標は、雨天に備えるために、洞窟の入り口に屋根を付け、水が入ってこないように周りに溝を掘る作業を行うことだ。
そのためには、屋根の材料として木や葉っぱがある程度必要だ。
あと、スコップも必要だ。
その辺の倒木と地面を材料に、俺は【描写物実体化】を行い、スコップを描き、実体化した。
いざという時には武器にもなるからな、スコップは。
これでゾンビも怖くないぞ。
嘘ですゾンビは許してください。
ついでに、食用のための木の実も平行して集める。
早く食料の安定確保の手段が欲しい。
洞窟近くに畑でも作ってみようか。
……ん?
トスン、トスン、トスン……。
地響きの音がする?
トスン、ドスン、ドスン、ドドスン……!
音は段々と大きくなってきて、
「ブモォオオオオオ!」
「イノシシ?!」
突然現れた大きな巨体。
俺は咄嗟に横に飛ぶ。
ドーーン!! メキメキメキ……。
イノシシの突進で、木が折れて倒れる。
ヒィィッ、なんて破壊力だ。
イノシシはこちらをチラッと見て、
俺から逃げた。
た、助かった……。
……いや、助かっていなかった。
というのも、アイツは俺から逃げたのではなかったのだ。
「ピューイ!」
甲高い声をあげた何かが、イノシシへと飛びかかった。
「ブモッ!」
「ピュィイ!」
イノシシよりも大きな、見上げるほどの大きさの二足歩行の白いトカゲっぽい何か。
ソイツは、暴れるイノシシを鋭い爪で押さえ込み、イノシシの首に噛みつく。
しばらくイノシシから血が流れ、やがてイノシシの動きが止まる。
イノシシは絶命したのだ。
そして、
「ピュゥ?」
俺に気づいたのか、こちらを見た。
ソイツは今にも飛びかかろうとする姿勢を取り、
「って、うぉおおおお!」
「ピューイッ!」
こちらへ飛びかかってきた!
俺は横飛びで回避したが、ソイツは滑らかな動きで、こちらへ爪を下ろしてきた!
「何やってんのよ!」
カキィィィイイン!
ソイツの爪攻撃が、俺へ届くことはなかった。
みすぼらしい布をまとった女の人が、ボロい剣で爪を防いだのだ。
「早く逃げなさい、人間!」
カン! カン! カン!
爪の攻撃が剣で弾かれる。
だが、その度に剣に傷が増えてゆく。
「あ、あんたは?」
「ああもう! 加勢しないんだったら邪魔だから!
とっとと行け! あたしだって、長くはもたない!」
カン! パキッ!
剣が折れてしまった。
「くっ! 拾った武器じゃ、やっぱ駄目ね!」
「ピューッ!」
女は、折れた剣を捨てる。
白トカゲが、爪を振り下ろす。
女はなんと、それを歯で噛んで受け止めた。
「はめんははいはほ……!(なめんじゃないわよ……!)」
バキッ! 剣を折るほどの爪が、女の噛みつきで割れた。
「あたしは誇り高きモンスター! ウェアハウンドだ!」
「ピュゥッ?!」
爪を数本割られた白トカゲが驚き、後退りした。
女は折れた剣を拾い、それを白トカゲに投擲した。
ゴツン!
「ピュ?!」
「あんた! それ借りるよ!」
俺のスコップをひったくり、女は白トカゲの頭へ目掛けて飛び、空中で振り下ろした。
ゴーン!!
白トカゲの頭部に、スコップが当たった。
そして奴は白目になり……ドスーーン! と倒れた。
「ハァ、ハァ、ハァ……」
「どうも、助けてくれてありがとう。俺は新泉尖。あなたの名前は?」
「ハァ……、ん? 何よ。モンスターに名前なんてあるわけないでしょう。
あぁ、そういえばアンタ勝手に名前付けてくれたわね。
確か、シュ、シュ、シュークリーム?」
女は、スコップで何度も白トカゲの頭を叩いている。
念の為に止め刺しをしているのだろう。
というかこの声、もしかして。
「シュヴァルツか?」
「そう、それ!」
何と、俺を助けてくれたのは、以前に夜の洞窟で出会った、喋るワンコだった。




