23.アルビノ・レプター
前に見たシュヴァルツはワンコだったはず。
今は人間の姿をしている。
「どうしてそんな姿に?」
「シッ! まだ4体くらいコイツの仲間が居るみたい。
血の臭いにつられて、すぐにこっち来るわ。
すぐにここを離れるわよ」
スコップを回収し、俺達は足音を立てないようにソロソロと、しかし急いで森を抜けた。
あぁ、イノシシの肉、欲しかったな……。
命には代えられないから仕方ないけど。
◇ ◇ ◇ ◇
そしてしばらく歩いて、ヴァイスの洞窟へとやって来た。
「ふぅ。ここまで来れば一安心ね」
「ありがとう。助かった」
「べ、別にアンタのためじゃないんだから!
アンタが死んだらヴァイスが悲しむから、仕方なく助けただけよ!
勘違いしないでよね!」
ツンデレ頂きましたー。
それにしても、昼間だというのにモンスターに襲われるとはな。
夜だけしかモンスターが活性化しないものだと思って油断していた。
「なぁ、昼間ってモンスターが弱体化するんだろ?
さっきの大きい白トカゲ、あれで弱体化してるのか?
強すぎじゃないか?」
「はぁ? 何言ってんの? アレはモンスターじゃないわよ」
「へっ?」
シュヴァルツは続けて、恐ろしい事を言う。
「アレは野生動物よ」
「マジか。下手なモンスターより強いんじゃないのか?」
「でしょうね。でも、さっきのアルビノ・レプターは、この辺に住んでいる生態系の頂点よ。
あれより強い野生動物は、この辺には居ないから安心しなさい」
「さすがにアレより強い野生動物とか想像したくないぞ。
ってか白トカゲは、アルビノ・レプターって名前なのか」
「人間が大昔に名前を付けたみたいね。通りすがりの冒険者がよく口にしていたわ。
アルビノ・レプターには気をつけろ、って」
冒険者! 冒険者が居るのか!
早く町に入って冒険者登録とかしたいな。
「で、アンタはあそこで何をしていたわけ?」
「食料探しと、屋根の材料探しと、探索だな」
「近くにアルビノ・レプターの新しい足跡や糞があったでしょ?
危ないって思わなかったわけ?」
「そもそも気づかなかった」
「……よくそれで今まで生き延びられたわね」
今までは単純に運が良かっただけなのだろう。
今回もシュヴァルツが現れなかったら、きっと死んでただろうし。
「そういうシュヴァルツは、どうしてあそこに?」
「なーんかアンタの臭いが森の方から臭って、危なっかしいから注意しに行こうと思ってたところだったのよ」
「俺ってそんな臭うのか。ヴァイスには、驚くほど無臭って言われたんだが」
「私、半分は狼型のモンスターだから、鼻が良いのよ。
そうね。アンタ自身から臭いはしないわ。
アンタの身につけてる服や、持っている道具類の臭いね」
俺の道具といっても、ナイフやスコップや背負い籠くらいしか無いが。
くんくん。全然分からん。
「服も、たまには川で洗濯した方がいいわよ」
「そうだな」
汗の臭いとか、全然しないんだけどな。
汚れはそこそこ付いているけど。
洗濯するには、洗濯干しが必要だな。
あと替えの服も要るか。
ま、その辺のあれこれは今すぐ必要ってわけではない。
優先度の高いのは、雨天に備えた準備だ。
俺は洞窟前でスコップを用い、溝を作成。
あとは、屋根を作るために木を用いようとし……ストックが心許ないので、木は使わないようにするか。
アルビノ・レプターが出たせいで、集める作業が中断されたからな。
代わりに俺は【描写物実体化】で地面を材料に、Yの字型の支柱を10ほど作った。
次に【描写物実体化】で同じく地面を材料に、棒を5本作成。
あとは【描写物実体化】で、Jの字型の瓦を作成だ。
支柱を地面に突き刺……そうとしたが、俺の力では突き刺さらない。
地面が固いのだ。
「貸しなさい」
「頼む。等間隔に、屋根が傾斜になるように」
ザクッ! ザクッ!
次々に支柱が地面に刺さる。
「よーし、あとは棒を乗せて、その上に瓦を引っ掛けるように乗せて……簡易屋根の完成!」
「チャチな屋根ね」
「無いよりマシだろ。さってと、スキルを使うのに疲れたから、昼寝でもするか」
描写は手書きで、原寸大で描くので、結構手間なのだ。
MPは残っているが、気力が持たない。
「ならあたしは帰るわ」
「おう。今日はありがとな」
「せっかく助けたんだから、ヴァイスのためにも生き延びなさいよね」
シュヴァルツを見送り、俺はこうして、雨天の準備を整えた。
そんな俺を待っていたかのように、夕方から天気が崩れ、雨が降り始めるのだった。




