20.スキルについて分かってきたこと
おはよう。
今日も良い天気だ。
ちょっと寝すぎたかもしれないな。
ヴァイスも、シュヴァルツも居なくなっていた。
俺は洞窟の外へ出る。
今日は罠を確認しに行くとしよう。
と、その前にスキルの実験だ。
「『ツール表示』」
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最初に、材料の範囲を指定してください。
範囲:最大1×1×1メートル
射程:1メートル
残り:60分
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その辺の地面を指定。
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次に、絵を描いてください。
残り:59分
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いつも通り、空中に、光のキャンバスが現れた。
そして光のペン、光の消しゴム。
ちなみにこのキャンバス、俺が動くとついてくる。
俺は、何も描かずに森まで歩くことにした。
そして、食べられそうな木の実が見つからずガッカリし、罠を仕掛けた小川へと向かうことにした。
◇ ◇ ◇ ◇
・洞窟付近にある小川
罠の確認をする。
おお、小魚が数匹入っている。
って、しまった。
こいつらを入れる壺を持っていないぞ。
で、そろそろ先程発動したスキルの時間が切れるのだが。
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次に、絵を描いてください。
残り:1分
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1分待ち、キャンバスは消えた。
特にペナルティなどは無いらしい。
◇ ◇ ◇ ◇
・とある神の間
ここは神が住まう壮大な城がそびえ立つ場所。
鑑定の神と呼ばれている彼の元へ、1枚の設計図と依頼書が届く。
「ふぅむ? 白紙の設計図?」
鑑定の神は思った。
これは俺に対する挑戦状だと。
「材料は土。そして設計図は白紙。
依頼者は日本人の転生者。
ということは、答えは日本語」
ブツブツと独り言を言う鑑定の神。
「白紙……白だから城? いや、この材料では作れない。
ならば空……殻? だとしても、欲しがる理由が無いから違うか。
無地……なし……ハッ! そうか、梨か!」
鑑定の神は、梨と書いて、無駄に達筆なサインを依頼書に書いた。
依頼書と設計図は消え、鑑定の神は神ポイントを獲得した。
【描写物実体化】スキルは、要するに描いた物が伝わりさえすれば良いのである。
それが本人の意図した物であるかどうかは別問題である。
それに新泉尖が気づくのは、この後すぐ……
◇ ◇ ◇ ◇
・洞窟付近にある小川
ポン、と軽快な音とともに梨の実が現れた。
意味がわからない。
俺の【描写物実体化】の結果か?
でも何で?
……もしかして、何も描いていないから、無し、で梨ってか?
だとすれば、描く物、というか欲しい物が伝われば、絵自体は精密でなくてもいいのか?
以前、同じ材料と同じ描写物でも、成功した場合と失敗した場合があった。
理由は、神様(あるいは魔王様もしくはその他)に伝わらなかったからなのか?
いや、失敗理由は「材料が不適切」とのことだったから、伝わらなかったわけではないはず。
つまり、神様が『作れる』と判断した物は作れるが、『作れない』と判断した物は作れない。
そういう解釈でいいのか?
なるほど。
だんだんとスキルのことが分かってきたぞ。
この梨にしたって、土の炭素やら水分やら栄養素やらをあーだこーだして作った物だろう。
人間ではまず作れない。しかし、神様は作れると判断した。
ということは、スキルが成功する条件、それは『俺の絵から作りたい物が神様に伝わり』かつ『材料からそれを作れると神様が判断した時』。
この2つのステップを満たした場合が成功で、逆にこの2つのうちいずれかが失敗すれば失敗する、と。
特に後半の『材料からそれを作れると神様が判断した時』の成功確率が、神様の力量によって左右される。
そういう認識で良いんだな?
『届き先指定』を使うことで、その後半の成功確率を上げることが出来るってわけだ。
しまったな。昨日は乱用し過ぎた。
もっと大切に使うべきだった。
「『ツール表示』」
川に来たので、壺を作ろうと思う。
川の中の、ぬちゃっとしている場所を指定。
で、『届き先指定(ランダム)』と書かれている所を触る。
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届き先指定(現在ランダム)
→・ランダム(MP消費1倍)
・猫神T(指定回数3回、成功率100%、MP消費2倍)
・冥王H(指定回数0回、成功率100%、MP消費2倍)
・女神P(指定回数0回、成功率0%、MP消費0.5倍)
・魔王N(指定回数0回、成功率100%、MP消費2倍)
・樹王S(指定回数0回、成功率100%、MP消費2倍)
・鑑定神S(指定回数0回、成功率100%、MP消費2倍)
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……ん? んんんんっ?!
俺は、猫神Tの項目に注目した。
・猫神T(指定回数3回、成功率100%、MP消費2倍)
昨日3回指定し、その度にMP消費が上昇したのだが……何とMP消費が2倍に戻っているではないか!
一晩寝たら、MP消費増加は収まるってことか!
やった! これで気兼ねなく猫神Tを指定出来るぞ!
で、鑑定神Sってのが増えている。
多分ランダム指定で、さっき届いた先が鑑定神Sだったのだろう。
ランダム指定をする度に、届き先指定の項目が増えるのか。
あるいは一定数以上は載らない仕様なのか。
分からないが、少しずつ試すしかない。
とりあえず今は、届き先指定はランダムのままにする。
そして壺をキャンバスにささっと描写。
「『実体化』」
◇ ◇ ◇ ◇
・とある神の間
畳が敷かれた和室のような空間にて。
猫神Tは、おしりをフリフリして、ダンボールへ飛びついた。
ズサーッと滑った先に、1枚の設計図と依頼書が届く。
「にゃー(壺だな。うーむ、このままだと材料が微妙だが、俺の持ってる油と石灰をプレゼントしてやろう)」
猫神Tはどこからともなく油瓶と石灰入りの袋を取り出し、依頼書に添える。
そして肉球スタンプを依頼書に押す。
油瓶と石灰入りの袋、依頼書と設計図は消え、猫神は神ポイントを獲得した。
お人好しの神様の場合、材料を足してくれる場合がある。
余った材料は、足した神様の元へと返却される。
今回はピッタリなので返却はないが。
当然、新泉尖がそれを知る機会は無い……
◇ ◇ ◇ ◇
ポン、と軽快な音とともに壺が現れた。
見事なツヤだ。重厚感もあり、それなりに丈夫そうだ。
その方面に詳しくない俺でも、これは高価そうだと分かる。
だが、俺は飾るために壺を描いたわけではない。
遠慮なく川の水を汲み、そこに先程の小魚を投入だ。
それから俺は、もう一度罠を仕掛け直し、壺を持ち運び、洞窟へ帰ることにした。




