19.ウェアわんこのシュヴァルツ
夜の洞窟内。
俺達は椅子に座り談笑する。
昼間に川に仕掛けた罠のことを話す。
それから、作った槍を見せびらかす。
あとは、スキルが少しだけ進化したことも話した。
ヴァイスは自分の事のように喜んでくれた。
本当に彼は良い奴だ。
話題が無くなったので、俺の探し物である、毒蛇の牙のネックレス、炎竜の瞳のブローチ、マーにゃんこの置物、ドラシルの種。
これらについて心当たりがないかどうか、ヴァイスに聞いてみた。
「ウーン、聞イタコトガナイデスネ」
「そっか。まあ人間の国の国宝の事なんて、知らなくても仕方ないよな」
「オ役ニ立テズ申シ訳ナイ……」
「いや、気にしないでくれ」
さすがにヴァイスに頼りすぎだよな、俺。
いずれは俺自身があのダークフレイムとかいう都市に入って、情報収集をする必要がありそうだ。
「尖ハ、ソレラ国宝ヲドウスルツモリデ?」
「探して、返すように頼まれているんだ」
「誰カラ頼マレテイルノデス?」
「神様から」
「ワァオー! トイウ事ハ、尖ハ神様ノ使徒トイウ事デスネ!」
そんな大層なものではないのだが、一応そういうことになるのだろうか?
「デ、何トイウ名前ノ神デショウ?」
「えっ? ……知らない」
「エッ」
「いやだって、あの神様、スキルの説明どころか自己紹介すら、ろくにしてなかったし」
今度会う機会があれば、聞いてみるか、名前。
「人間ノ都市ノ教会ニ行ケバ、神ノ事ヲ記シタ図書ガアリマスヨ!
ソコデ調ベテミテハドウデショウ!」
「それ以前に、都市に入る方法を考えなきゃだなぁ」
神様から、捜し物の期限は特に言い渡されているわけではないが、未だに手がかり無しというのもよろしくない。
せめて4つの国宝とやらが、どこにあるかだけでも分かればいいのだが。
というかほとんど全部、あの神様の説明不足のせいじゃないか。
俺の落ち度ではないはずだ。
「都市ニ行ッテモ、タマニハ遊ビニ来テクダサイヨ?」
「当たり前だろう。なんたって、俺達は親友だ」
「尖!」
「ヴァイス!」
がしっ。
俺達は抱擁した。
「で、ヴァイス。
昼間に動けるモンスターの事が知りたいんだが、教えてくれないか?」
「エエ、イイデスヨ。
トイッテモ、難シイ話デハナイデス」
ヴァイスによれば、モンスターは野生動物などと子どもを作ることがあるらしい。
で、モンスターと野生動物のハーフは、純粋なモンスターと違い、日中の弱体化が軽減される。
といっても、弱体化すると野生動物より弱いらしい。
そのため生存競争を生き残れないことが多いのだとか。
だがまれに、例外が生まれる。
日中の弱体化がそれほどでもなく、なおかつモンスターとしての力も持つ者。
例えば、魔王。
そいつは、人型のモンスターである吸血鬼と人のハーフらしい。
吸血鬼のくせに、日中でも平気で歩き回れるのだとか。
例えば、ヴァイスの仲間。
犬型のモンスターと人間のハーフ。
昼間は人間だが、夜になると犬型モンスターになるらしい。
要するにウェアウルフか?
「昼間ニ動ケル彼ニ、道案内ヲ頼ムノモイイカモデス」
「そいつは、ヴァイスと仲良いのか?」
「ボクガ頼リナイノデ、タマニ助ケテモラッテル感ジデス。
オット、噂ヲスレバ」
ガサガサと、入り口の草木の蓋が外される。
「まぁ! 相変わらず汚らしい住まいですこと!
たまには床を磨いたり……人間?!」
チワワみたいな小さくて可愛らしい黒犬が喋ってきたかと思ったら、俺を見て驚いている。
「コノ方デスヨ! 口ハ悪イデスガ、最終的ニハ優シクシテクレマス」
「誰が口悪いですって?!
というか、何で人間と一緒に椅子に座ってくつろいでるのよアンタ!」
黒チワワは、がるるると俺を威嚇している。
「どうも。俺はヴァイスの所で世話になっている、新泉尖だ」
「ヴァイスって何よ」
「おっと」
そういえば、ヴァイスは俺が付けたニックネームであって、彼自身は名前が無いんだったな。
「ヴァイスハ、尖ガ付ケテクレタ名前デスヨ!」
「はぁ?! アンタ、人間に名前を付けてもらうなんて!
ペットにでもなったの?!」
「確かに口の悪いわんこだな……」
人の親友をペット呼ばわりするとは、失礼な奴だ。
というか、さっきから気になっている事がある。
「ヴァイス、さっき“彼”って言ったよな?」
「エエ。ソレガ?」
「コレ、オスなのか?」
「コレって言うな!」
俺は黒チワワの両後ろ足を掴み「きゃー?!」持ち上げる。
……ふむ、付いてるな。
「ちょっと、何、人の股間をジロジロ見てるのよ! 変態!」
「おっと、悪い悪い」
俺は彼を離してやった。
彼は触られた所をペロペロと毛づくろいしている。
そして尻尾をブンブンしている。
「おおっ、どうやらクロは喜んでいるようだ」
「はぁ?! あたしは怒ってるんだけど!
ってか勝手に名前付けるな!」
「あれ? ワンコって、尻尾振っていると喜んでるサインじゃなかったっけ?」
「あたしはワンコじゃなぁぁあいっっ!!」
「クロが気に入らないなら、タマはどうだ?」
「だから勝手に名前を付けるなぁ!」
「ワガママだなぁ」
その後、俺は30種類ほど呼び名を提案したが全部却下された。
なのでここは強引に名前を決めることにした。
「ってなわけで、よろしくなシュヴァルツ」
「何が『というわけ』よ?!」
「シュヴァルツはドイツ語で黒色って意味だ」
「ワァ、色同士、ボクトオ揃イデスネ!」
「認めないわよ! ペットみたいに名前を付けられるなんて!」
シュヴァルツはギャーギャー騒いでいたが、俺が寝る時間になると「覚えてなさいよ!」と帰ってしまった。
こうしてモンスターの友人が、また一人増えたのだった。




