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15/23

15.のじゃロリ魔王


俺は洞窟の中に椅子を並べた。


若干デコボコしている地面だが、置けないことはない。



「ワォ! イカス椅子デスネ!」


「言うな。ちょっと後悔してる」



同じ椅子ばかり描くのもつまらなかったので、途中で装飾を付けたり形を変えたりした。

後半の方は、どこの高級家具屋に置いてある椅子だよ、と思うような、無駄に凝った装飾が施されている。


ヴァイスがその高級椅子に座る。



「魔王サマニナッタヨウナ気分ニナリマス!」


「魔王? 魔王が居るのか?」


「イマスヨー。人間ト、ドンパチシテイルミタイデス。

尖モ、気ヲ付ケテクダサイヨ」



君子危うきに近寄らず、だ。

危ないモンスターに近づくような自殺行為はしていない。


異世界転移の小説やマンガだと、何でか主人公がモンスターを当然のように殺すよな。

自分が殺されるかもしれない、なんて微塵も考えずにモンスターに突っ込む。

あの絶対的な自信はどこから来るのだろうか。




◇ ◇ ◇ ◇



・魔王城


空には暗黒の雲が浮かび、止まない雷鳴が鳴り響く。


黒レンガで作られた、山より大きな壮大な城。


この世界で最強の魔王ディストピアが住む、魔王城である。


その城の一室で、魔王ディストピアはマンガを読んでいた。

たまーに日本へ転移し、人知れず購入し持ち帰っているらしい。

本屋で帽子を被り角を隠したゴスロリ少女を見かけたら、もしかすると彼女かもしれない。



「はぁー、至福の時なのじゃー。しかし残念なのじゃ。

新泉尖先生はくも膜下出血で死んでしもうたのじゃ。

あー、続きが読みたい、読みたいのじゃー」


「原作の小説家が在命なら、他の漫画家が続きを担当されるのでは?」


「セバスチョン! お主は何も分かっておらぬ!

この画風! この魅せ方! このテンポ!

新泉尖先生でなければ描けぬのじゃ!」


「は、はぁ」



執事服に身を包んだ、ダークエルフの青年セバスチョンは、主のマンガ愛について全く理解する事ができなかった。


ちなみにディストピアは原作は読んでいない。

文字ばかりだと眠くなるので。



「俺っチ、帰宅! ディストピア様、帰リやしタぜー」


「おお、フリスタ。よく戻ったのじゃ」



ネクロバットのフリスタが、パタパタ飛んで天井に逆さにまった。



「まずハ報告。都市ダークフレイムは降伏勧告を拒否。

俺っチを殺そウとしタ。俺っチじゃなけれバ死んデたぜ!」


「使節1匹殺したところで、わらわが気づくのが遅れるだけで、何も変わらぬというのに。

人間の何と狭量なことよ」


「だヨなァ! せっかク、ディストピア様が平和的ニ降伏勧告しタのニなァ!」


「して、敵戦力は推定と比べ?」


「推定通り! ディストピア様の計算との誤差1%以下だゼ!」



ディストピアは、宙に浮かぶ報告画像を見て、一つ気になった物を見つけた。



「この人間は……!」


「あァー、こレは軍事にゃ関係ネぇ画像だゼ。

俺っチが個人的ニ親しくしタ人間の一人。

名前は……聞き忘れたゼ!」


「今すぐ、この者を保護するのじゃー!」



ディストピアはピンときた。

この男、新泉尖先生に違いないと。

作者のブログに顔写真が載っていたから、見間違いではないはず。


おそらく神が、異世界転移させたのだろう。


この男を捕えるまで、都市ダークフレイムへの攻撃を中止とする、とディストピアは配下へ伝えた。


せっかく攻撃する気満々だった配下達だったのだが、魔王の命令は絶対。

きっと何か理由があるのだろう。


そう思い、都市ダークフレイムにこっそり潜入し、情報収集を試みることにした。


新泉尖が魔王軍に見つかるまでの3ヶ月間、都市ダークフレイムは新泉尖のおかげで、人知れず平和が保たれたのだった。



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