第6話 クイック・カウンター2
2021/12/19追加
何かしら行動をはじめた日には何かが起きる。
州都行きの便に乗る時、到着した日にも何も起きなかった。
そのためこのジンクスは破られたのだとばかり思っていた。
「厄介ですね……!」
お嬢様は外壁の整備通路に潜り込み、手槍で応戦していた。
最初こそ数を減らして行けたのだが、流石に全滅とまではいかない。
裏で動くミリィ嬢に気づいた監視者達はついに行動へ移った。
意識の変化を察知した二人は、モルドモ氏に聞いた扉に入ったのだ。
『短刀には強い麻痺毒が仕込まれてた。エルは気をつけて。』
『……今すぐ潰します。』
絆を通しての静かな怒気が伝わる。
ばちばちと周囲の魔力が悲鳴を上げ、翼の輪郭を取り始める。
初めて引き離された時、相方に傷を負わされてしまった。
初めて賊に襲われた時、仕込まれていた毒のせいで痛い目にあった。
『外壁を壊したら目立つよ。大丈夫、僕の本体は竜で、そもそも魔物だ。いまさら生き物に対する毒は効かない。』
『貴方が傷つけられることが嫌なんです!』
ちょうど投げてきた短刀を弾き、蹴り飛ばして返す。
小さく倒れる音が聞こえると同時、無数の風切り音が飛んでくる。
立ち止まったことで更に刃物が飛んできたため、すぐに身を翻した。
下の通路めがけて飛び降り、高い位置で結んだ髪が踊る。
「整備が終わっていたのは不幸中の幸いです……!」
がしゃんと落下の勢いで足場がたわみ、受け身を取った後ろに刃が刺さる。
お嬢様、相方、ミリィ嬢の三手に別れて追手に対応していた。
得意の接近戦に持ち込もうにも、幾重に鋼糸が張り巡らされている。
波状攻撃のせいで遠距離の術式を描く猶予がない。
竜の息では州都自体が傾きかねない。
指揮棒の中に残っている魔力は有限だ、乱用は控えたい。
『心配してくれるのは嬉しいけど、自分を見失わないで。僕は北の櫓へ向かうよ。たしかラヴィテスさんがいるはずだ。』
『……解りました、私はこのまま西へ。ツァシュテさんがいるはずです。』
相手もなりふり構っていない、人気のないところまで来られたのは幸いだった。
有事の際を除き、外壁の配置は少数の見張り要員でまかなえる。
そのためバシリス嬢の護衛を担う冒険者パーティが追加で割り振られていた。
州都で問題があればそれぞれの櫓から近い者が向かうためだ。
「今までの分、面倒事がまとめてきたんじゃないでしょうね……!」
術式にすることなく黄金の魔力が一点へ打ち出された。
世界という絵画に開きかけていた停滞は即座に修繕される。
お嬢様が厄介と口にした理由がこれだ。
停滞を考えない魔法の行使には、代償が求められる。
本来ならその吐出口はどこになるのか解らない。
それをある程度操作する魔道具を用いている。
「フェイル州はどれだけ世界を壊したいのですか!」
停滞は人が手を出して良いものではない。
あれは世界に落とされた奇跡の影、願いの代償。
それを更に酷使するというのならば、自浄作用が追いつかなくなる。
――なんていうのはただの建前。
「ベーラ領での一件といい、私の対等はカイゼル以外認めません。」
本音はお嬢様が貫き通す我儘だ。
意図して停滞を従えるのは自身の対等以外認められない。
攻撃の合間を塗って指揮棒を化石樹の手槍へ変える。
「――哈っ!」
たん、と軽い音を聞くと同時、飛んできた礫を二本の穂先で弾く、弾く、弾く。
あっという間に足元へ鉄礫の絨毯が広がった。
火槍まで持ち込んできたようだ。
お嬢様の身体は、今や過剰だった動体視力に対応できる。
砲撃が中断したため、ひぅんと二本の槍を回して物陰へ移動する。
『傷つけられたら、その瞬間に一帯を停滞めるから。』
『心配してくれるのは嬉しいですが、魔物を生み出すつもりですか!』
お互いのことになると見境がなくなるのも同等だ。
毒を使うのであれば傷つけられるわけにはいかない。
整備通路が長物を振り回すだけの空間があって助かった。
「攻勢に転じるためには、外壁の上まで出なければなりませんね。」
動き回るにはいささか足場が心もとない。
相手の練度は低くはないが、突出して高いとは言い難かった。
遮蔽物が多い場所で迎撃に回るには手数が足りないことは確かだ。
それも櫓に駆け込めば、同僚の冒険者が解消してくれるだろう。
「おかしいです。私達を狙うなら、どうしてこの程度の力量、物量なのでしょう。」
身内が囚われてから追撃を出すにしても早すぎる。
こちらの戦力をまるで分析していない。
バシリス嬢を助けた折、違法技術を用いた一斉砲火すら遮断した。
そんな防御力を持つ相手に短刀や火槍を用いても効果は薄いだろう。
何より突破するだけの攻撃密度が足りない。
ただただ停滞が目障りなだけだ。
釈然としない思いを抱きながら、黄金は礫と白刃を叩き落として駆け出した。
* * *
「全く厄介だね。」
二の腕に突き刺さった短刀を引き抜き、放り捨てる。
人の身体であれば血でも噴き出るだろうが、彼の身は竜だ。
皮膚ですら鱗の一部でしかない。
ただしそこに塗られている毒物はお嬢様の知識から解析できる。
「相当強い麻痺毒だ、エルは耐えられない。」
お嬢様が規格外と言えど、その身は人だ。
それ故に絆を通して危険を伝えておいた。
立ち止まったため、更に空を切って短刀が飛んでくる。
袖口から滑るように現れた黒銀の刀身が弾く。
右から左、左から右とへ持ち替え、滑るような軌跡で凶刃を叩き落とした。
毒が効いてきた頃にダメ押しを狙ったのだろう。
もとより突き立てられようが短すぎてダメージにもならない。
「……さて、そろそろ毒が効かないと悟って別の手を――。」
たん、と乾いた音を聞くとと同時に右の手を払う。
飛んできた礫がひしゃげ、甲高い金属音が整備通路に響き渡った。
対人兵器でそうそう竜が傷つくことはない。
悠々と歩きながら邪魔な礫を払い、切り捨てる。
魔法は圧縮した自身の魔力刃に触れれば術式ごと破壊される。
撒き散らされた停滞など、魔王が最も御しやすい力だ。
「ベーラ領と同じようなことを。……なら、絶対に潰そう。」
お嬢様の隣に立てる対等は自分以外に認めない。
毒、短刀、魔法、火槍、鋼糸に停滞。
襲撃者は様々な手を使ってくる。
自身も無数の技を知ってはいるが、この場は使うに値しない。
その程度の力量しかない相手だ。
「まあ、君たちの狙いが何だか知らないけど――。」
目指すは北の櫓。
何せ今、大事な保冷箱を提げているのだ。
お嬢様に任された以上、これを失うわけにはいかない。
「エルに少しでも見惚れたら、ましてや手を煩わせたら――。」
襲撃者には、彼の太陽に焼かれる権利を与えない。
ほんの僅かな影になる事すら許すつもりはない。
魔物を前に、人は心の強さを試される。
「存在を停滞めてやる。」
魔王ほどの存在であれば、選定の厳しさは想像を絶する。
距離を取って攻撃していたことは彼らにとって幸いだった。
発狂した者は半数に抑えられたのだから。
襲撃者の狙いは、彼にとってどうでもいいことだ。
並び立てる者が居ない以上、魔王の足止めなど叶うはずがなかった
* * *
ミリィ嬢の戦場は他の二人とは違っていた。
彼女の二つ名を知るものにとって、閉所がどれほど危険か知っている。
泣き虫とは知らず知らずのうちに首を断つ裏世界の始末屋。
首から漏れる空気の音が泣き声に聞こえるために付けられた通り名だ。
「これだから、昔を知る奴はウザい。」
戦いの場は外壁の上。
遮蔽物がほとんど無い上に、仕掛けを施す暇もない。
前後を囲む黒装束は彼女の古巣、暗殺組織ビーイの装束。
無理やり幹部を押し付けられ、面倒で死を偽装して逃げた。
その地位があったからこそ、情報漏えいを恐れて追手が差し向けられた。
こちらは相手を知っているが、相手もこちらを知っている。
そう思っているのならば、既にグラウンド一派の術中だ。
「……惑えばいい。」
誰の耳にも届かぬほどの小さな声。
それが文言魔法の鍵なのだが、世界の変質に気付いたものは居ない。
当たり前だと思っていた認識が滅茶苦茶に乱される。
ミリィ嬢は魔力を図形として認識している。
それ故に迷宮の応用と相性が抜群に良い。
手に馴染む鋼糸は使えずとも、魔力の糸は即時仕掛けることが可能だ。
ハンドサインで動く闇組織の視界を誤魔化し、違った行動を取らせて絡め取る。
違和感に気づき始めた聡い者は即時分断し、縛り上げる。
「あたしが抜けてから、質が落ちてる。」
泣き虫の名で知られているため、それ以外の対策を考えていなかったのか。
一瞬の油断で返り討ちに合うのがこの世界。
例え手の内を知っていたとしても、それが全てと思ってはならない。
開けた場所での戦い方など、とうの昔に確立していた。
知っている、という固定観念は誤った判断につながる。
だが、それは彼女にも言えることだった。
「……あの、バカたち! 州ごと殺す気か!」
異変に気づき、ミリィ嬢が弾かれたように空を見上げた。
魔法の行使、停滞の魔道具、練度の低い使い捨ての追手。
被害を抑えようとした時点で判断を誤っていた。
糸で捉えた全員が、一斉に停滞を生む魔道具に体内魔力を捧げたのだ。
おそらく各所でも同様の事が起きている。
「ミリィさん、こちらは一段落つきました。……状況は芳しくないようです。」
ちょうどお嬢様達が合流する。
ミリィ嬢の視線を追うまでもなく、竜人は魔力に敏い。
彼らの暗殺は、最初から州都そのものが対象だったのだ。
雲ひとつ無い青空から、ぱきりぱきりと世界が剥離し始めていた。
* * *
州都を囲む外壁での攻防戦。
お嬢様、相方、ミリィ嬢、ツァシュテ氏とラヴィテス氏が集う。
襲ってきた組織員の腕はいずれも二流だ。
逃げに徹し、誘い込んだところで合流した仲間と反撃に転じる。
あっけないほど簡単に制圧は完了した。
彼らの行動は全てフェイク、本当の狙いは上空にあった。
「悪い意味で予想通りです。空から停滞を撒き散らす魔物、死に翼。魔災です。」
「何人か使い物にならなくしたけど、魔災級となると誤差範囲だなあ。」
死の間際、自分たちの存在そのものを奪わせ起動させた停滞の群れ。
今や青空というカンバスには、ぽっかりと大穴が空いていた。
正確には生じた無数の穴を集め、一つに繋げたものだ。
原理としてはベーラ領で行われていた人工魔王の作成手順に近い。
いくつもの死骸の塊が混じり合い、巨大な鳥を象っている。
「ここまでバカとは、思わなかった。」
ミリィ嬢が苛立つ声を上げて程なく、外壁から轟音が立て続けに響く。
備え付けられていた火砲から、対魔物用の砲弾を打ち出したのだろう。
どの道襲われるのなら、少しでも時間を稼ぎ、少しでも力を削ぐ。
「媒体になる死骸に収集装置か。よくまああんな高いところに。」
バトルディアは高高度に位置する。
それを更に超える場所に、何十匹もの魔獣の死骸を吊るした飛行船が飛んでいた。
停滞を集積する魔道具が積み込まれていることは想像に難くない。
目視するまで気づけなかったのは、停滞で世界から切り離しているためだ。
『排煙に混じって毒ガスまで散布している。外壁の刻印じゃ心もとないね。』
正体を見られないよう、相方の分身は知恵ある聖獣を模している。
一同に声を残すと同時、魔力を世界に溶け込ませる。
風を用いる魔法では、空帝竜を超える事はできない。
「矢張り、私達は巻き込まれた側でしたか。」
相手は州都を全滅させるつもりだ。
撒き散らされた毒ガスを、無害になるほど薄めて散らす。
返さない理由は簡単だ。
下手に苦しめては飛行船が追加で停滞の苗床となる。
「進んで自害していたのもこのためか。……逃げ場はないな。」
「あれは、最初から誰も逃がすつもりはないみたい。」
「ああ、援軍を呼ぼうにも空の孤島だ。金の君、州長殿とお姫様を連れて逃げてくれないかな。」
無数の空虚な瞳に宿る感情は憎しみのみ。
そして、その対象は都合よく眼下に存在している。
魔災は通常、完全に消滅させるのに何ヶ月もかかる。
こんな所で出現したとなれば、逃げるのは不可能だ。
「お断りします。バシリスさんを守るということは、州都を、マギク州を守るということです。」
技術ある者は未来を負う。
そう掲げるのであれば、技術ある者を守るために州都を守らなければならない。
思い出すのは学園での実地研修。
あの時のお嬢様は恐怖に足がすくんで、学友を失ってしまった。
後悔を繰り返すつもりはない。
「エル、目立つけどいいんだね?」
「覚悟は決めました。ベーラ領と同じなら観察する船があるはず。確認をお願いします。」
覚醒を経て、金の竜が首をもたげる。
凪いだ声は、内側の嵐を隠すものだ。
激情に任せた翼では、魔災を上塗りするには足りない。
効率的に翼を広げるためには制御するだけの冷静さが要求される。
『目視じゃないと難しいね、外壁の面々との中継もしておくよ。』
お父様のような圧倒的な破壊を行う翼。
お母様のような存在を引きずり込む翼。
竜人による魔力の顕現は個人差がある。
お嬢様のそれは、固定魔法として圧縮された黄金の翼。
「どうせ逃げ道はない、か。こうなっては魔災を収めたと噂の美姫に任るしかなさそうだ。」
「王国で話題になった、あの与太話か……?」
流石六ツ葉、お嬢様の正体は知っていたようだ。
逃げる打診をしたものの、それができれば魔災と呼ばれはしない。
墓荒らしと違い、翼乱しは広域に渡って飛び回るのだ。
僻地で生まれてしまった以上、成長していくつもの州を飲み込みかねない。
だからここで修繕する。
「魔性、なんて言われていたら殴っているところでした。」
「他言無用でお願いするよ。」
相方が黒銀の剣を振るう。
空帝竜としての体内魔力の裏では、巧妙に停滞が隠されていた。
魔王の停滞と魔物の停滞は格が違う。
世界の穴ではなく断絶なら、お嬢様の一打を一時的に封じ込める。
行うべきは魔物を討つことではなく世界の修繕だ。
『フィアさん達から細かい位置は聞いた。撹乱の二つ名は伊達じゃないね。』
「ならツァシュテ、金の君の守護はお願いしよう。俺が野次馬の排除に回る。」
ラヴィテス氏が覚醒を行使し、音もなく外壁から飛び出した。
白い兎は落下することなく空を駆ける。
フィア氏のパーティは州都を遠巻きに停まる飛行船を見つけたらしい。
撹乱を得意とするため、される側の心得もあるのだろう。
「町の方は、まだ少し持つね。」
天を裂く斬撃で範囲を絞りながら、魔王は戦況を確認している。
既に翼乱しからこぼれた停滞が別種の魔物となって降り注ぎ始めていた。
州都に集まっている者は、いずれもいくつかの業務を兼任している。
大半が火槍を取り、こぼれた魔物の欠片と戦闘を始めていた。
一部の指揮に回っているのはベルドラド氏とそのパーティだ。
魔物の傾向を判別し、対処方法を即時編み出している。
「元凶が一箇所にとどまってくれたのは不幸中の幸いです。」
呼気は整った。
竜の息は己の内で起こす現象。
最早踏み込みすら必要ない。
魔力撹乱の効果を落とし、固定魔法によって世界はお嬢様に染まる。
町中で戦力を逐次投入されていたから決定打を打てなかった。
「こちらの準備も整ったよ。暴れ方が酷い、持って数分かな。」
黒銀に偽装された断絶が、はるか上空の停滞を縫い止める。
憎悪のまま、全てを壊そうと暴れ狂うが魔王の有する絶望は破れない。
自身の本性を隠すため、相当な体内魔力を投じたらしい。
手にした魔力刃は随分薄く、短くなっている。
「――っ!!」
気合はない。
短く吐いた息とともに、右の拳を天へと撃つ。
竜の顎が開き、その体躯が駆け登る。
音はない。
お嬢様に従う大いなる魔力が小さな拳に圧縮され、黄金の糸と化す。
魔王の張った断絶の結界へ入り込み、内部の空白に触れた瞬間に拡散。
下から注がれ続ける魔力の奔流は尽きること無く大穴を染め上げる。
「つじつま合わせのお陰かな、一息で足りそうだ。」
最後に金の翼がきゅるりと捻じれ、ダメ押しに突き刺さった。
荒れ狂う金の魔力は空いたカンバスを塞ぎ、断絶すら塗り替える。
巨大な穴は塞がれ、過剰分の魔力は雨のように州都へ降り注いだ。
魔物にとってそれは無数の矢だ、貫かれれば小さな停滞など即座に消える。
「……こっちも、ばけもの。」
ミリィ嬢の感想は、この世界で生きる者の代弁だろう。
個人が一打で魔災を収められるのならば、災害と呼ばれない。
他に可能なのは、それこそお父様くらい。
停滞に対する世界の最終兵器、それが世界に愛されるものだ。
「私だけではないです。上空の飛行船はバレッタさんです。」
とは言えお嬢様の一打で消し飛ばせたのは魔物のみ。
州都にいる世界に愛されたものはお嬢様だけではない。
作られた存在とは言え、バレッタ氏も近しい能力を持っている。
魔災規模の停滞となれば気づかないはずがなかった。
停滞の技術を用いるのはフェイル州だ、それは報復対象を意味する。
竜の息と同時に、無色透明な短槍が飛行船を蒸発させている。
「監視していた三隻も落としたみたいだね。」
州都を落とすついでに経過観測を行うつもりだったのだろう。
復讐に身を投じたバレッタ氏はそれを許さない。
『神速』の体内魔力位置を参考に近場の停滞を狙い、撃ち抜いた。
「……うわ、フォクシさんあの距離で斬ってたんだ。」
姉弟子に至ってはそれより早く隠されていた州章を切り落としていた。
バレッタ氏が放つ殺意の籠もった攻撃では飛行船そのものが消えるためだ。
襲撃の証拠は抑えておく必要がある。
ラヴィテス氏が制圧から回収に転じ、余波に巻き込まれる前に退く。
「六ツ葉以上となると、大抵人の枠から外れるんですね。」
意思疎通もままならないというのに、場面場面で行動が噛み合っている。
思わずつぶやくと、ツァシュテ氏から怪訝な視線を向けられた。
何せそれらが霞むほどの成果を、僅か一打で成し遂げているのだ。
お嬢様は停滞に対する切り札。
総合能力は、少し世間知らずな点を加味してぎりぎり四ツ葉だ。
もちろん五ツ葉が目前という意味で。
「ああいうところでしか打てません、秘密ですよ?」
「下手に話しても危なそうだ。心しておく。」
他人の情報を吹聴することは冒険者でなくともマナー違反。
それに大きな力、大きな情報は災いを招く。
うっかり口にしようものなら意図せぬ事件に巻き込まれかねない。
堅実に五ツ葉となった獅人の男性は重々しく頷いた。




