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ちょとつ!@異世界にて  作者: 月蝕いくり
第五章~ロープ際の攻防~
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第2話 秘密裏のアフタースクール

2021/05/27大規模修正

 上空から一直線に黄金が伸びる。

 閃光の強さに目が眩む錯覚を覚えた。

 あれは魔力だ、物理的な光とはまた別のもの。


「……目立ちすぎだ、あの馬鹿。つってもまあ気持ちは解るんだが。」


 地上で、倒れたゼルド氏と生存者を前にフォクシ嬢は乱暴に頭を掻いた。

 生存者のほうは、どうせ国境まで向かうつもりだ。

 駐屯している近衛騎士に事情とともに引き渡せばいい。

 問題なのは再封印を施したゼルド氏のほうだ。


『いかんな。その男、随分と体内魔力を持っていかれているぞ。』


 封印を解いた途端の大暴れが原因。

 大いなる魔力である聖獣は人が宿すには規格外だ。

 世界を修繕するという本能に引きずられ、宿主の魔力を引きずり出す。

 奴隷落ちする前は、魔法の応酬で生まれた空白を塞ごうとしたのだろう。

 それこそ加減もせず、宿主の魂をすり減らすまで食い散らかした。

 今回は魔物の真っ只中だ、その時以上の魔力を持っていかれている。

 だが、回復させる手立てが思いつかない。


「ほんっと役にたちそうなところで立たねえなこいつ。モルグだったか。何か方法はねぇか?」


 正直な所、手が減ることは防いでおきたい。

 基本ソロで腕を磨いてきたフォクシ嬢だが、今回の仕事は少々厄介なのだ。

 できればもう一踏ん張りくらいは働いて貰いたい。


『ふむ。以前も似たような事を起こしたようだな。別種の魔力が混ざり込んでいる。取り込ませるのが最善だが……。』


「ああ、それでこいつ、仲間を手に掛けたのか。」


 宿主が事切れる前に、聖獣が生存本能を発揮したのだろう。

 既に変質した魔力が生存本能というのもいささかおかしな表現だ。

 ただし、それは生者にとって最悪な手段だった。

 そういう事が起こりうるため、聖獣憑きという名は知られていない。

 大抵が厄介者や狂人として扱われ、早いうちに命を落とす。

 よくこの歳まで生きられたものだ。


「つまり他から魔力を取り込ませりゃこいつの中の聖獣が勝手に変換してくれる感じかい?」


『その認識で合っているのだが……、どうしたものか。』


 問題は何処からその魔力を引っ張ってくるかだ。

 眼前は綺麗さっぱり黄金に染まったとは言え、直前まで停滞だらけだったのだ。

 自浄作用が働き出した今、それを横から引っ張っていくのは難しい。

 実際モルグ氏も、会話に応じはすれどそちらに意識を割かれている。


「……流石のオレも、魔力の渡し方なんざ知らねーぞ。」


 有事に備えて余裕を見て封印を解除したのだ。

 フォクシ嬢の方は力が余っている。

 とは言えお嬢様でもなし、どういう原理で魔力を変換するのか解らない。

 攻撃魔法を叩き込めばいいのか、素直に回復や補助魔法が必要なのか。

 はたまたこの手綱を通して魔力を流し込めばいいのか。

 下手をすればまた封印を解きかねない。

 魔獣使いとしての鍛錬など行っていないのだ。


「ぐ……。」


 フォクシ嬢が悩んでいると、ゼルド氏がうめき声を上げた。

 意識が戻りかけているらしい。

 丁度領主邸へ向けてノックしたお嬢様たちが降りてくるところ。

 急ぎ状態の解析を行ってもらい、手段を講じるしかあるまい。

 と、思っていた所でフォクシ嬢に影がかかる。


「あ……?」


 視線を戻した先にゼルド氏は居なかった。

 耳が動き、即座に動きを補足。

 暴走の可能性など考慮済み、とは言え命を取るつもりはない。

 鞘に納めたままの太刀を叩きつければそれで事足りる。


 * * *


 全力の一打をぶちかまし、多少の仕返しが済んで気分が晴れた。

 さて戻ろうかと相方と絆を通してやり取りの後、視界の端に何かが入り込む。


「あれは……飛行船?」


『ヴィオニカ連邦国のものみたいだ。まだいたんだね。仕込みの最中だった、ってところかな。』


 追いかけるわけにはいかない。

 正式な手順で国境を超えなければ、国を跨いでも身柄の引き渡しが要求できる。

 もう一打打ち込みたい所だが、流石にお嬢様のほうもガス欠だ。


「……流石に立て続けて全力二回は堪えます。カイゼル、甘えさせてください。」


 ぱちん、と意識が切り替わる。

 下腹部に少しの疼きを残し、黄金が霧散して竜は人へと戻る。

 そのまま大きくなった相方のふかふかでもふもふのたてがみに飛び込んだ。

 屋敷のベッドより心地良いかもしれない。


『うん、まあ、甘えられて僕も悪い気はしないから良いんだけど。』


「何ですか。私この姿のカイゼル、好きですよ?」


 上空には人目がない。

 お母様には見られているかもしれないが、ちょっと気持ちを口にしただけだ。

 ……だけのはずなのに、耳の先が赤くなった。

 たてがみに顔を埋め、ぱたんぱたんと脚をぱたつかせる。

 想像を遥かに超えて恥ずかしい。


『うわあ、今すごく抱きしめたい。』


 言葉だけでなく、絆越しにも気持ちがお嬢様へ流れ込む。

 お嬢様としても問題は無いのだが、気持ちとは別に状況に問題がある。

 逃亡中に大変目立つことをしてしまった自覚はあった。

 これはもう一気に国境まで抜けなければならないだろう。


「だ、めです。フォクシさん達と合流して、生存者を保護してもらわないと。ゼルドさんの状態も気になりますので。」


『もうひと押ししたいところだけど。』


「だ……駄目、です。」


 内心で葛藤したことなどバレている。

 お嬢様が相方の動きや考えをある程度察せられるのだ。

 一緒に育ってきた相方側もまた然り。

 状況については相方も同様の認識らしい、一気に降下を開始する。

 上昇する時には気付かなかったが、お嬢様へ負担をかけぬよう気圧を操っている。

 周りが見えなくなりやすいお嬢様にはありがたい気配りだ。

 過ぎた相方だとは思うが、この立場は譲るつもりはない。


『さあ、すぐに地上だ。移動の準備をしておこう。』


 お嬢様から熱い感情が絆を通して溢れているが、指摘するつもりはない。

 乙女の内面をこっそり把握するとは、流石魔王である。

 多くの男性記憶をねじ伏せる乙女心は底知れない。

 下降速度から一気に減速、地面に脚をつける頃には地響きも起きなかった。

 その頃にはお嬢様も乙女モードから平常モードへ意識を切り替え終わっている。


「お待たせしました、フォクシさ……。」


『ああ、エルエル。これはだな。』


 カイゼルの背から降りたお嬢様が硬直する。

 モルグ氏の声が聞こえるが、ちょっとそれより眼前の光景が衝撃的すぎた。

 空を見上げて瞬きして見返しても光景は変わらない。

 うわ、という意識が絆から届く。

 ルゼイアの姿になった相方も絶句したようだ。


「んー! ん、んっ! ……っぷぁ、この、馬鹿!」


 手足を蔓で押さえつけられたフォクシ嬢が、ゼルド氏に唇を奪われていた。

 しかもがっちり腰と頭裏を押さえつけて逃げ道を断っている。

 唇が離れた途端に暴れて突き放そうとした。

 即座にまた封じ込められ、動きが止まる。


「し、正気に……お、おいうそ、だろ? まだ、んぐっ!?」


 姉弟子が敏感なことはよく知っている。

 そんな彼女がこんな目に合えばどうなるか。

 ゼルド氏の顎が動くたびに腕の中の姉弟子がびくっ、と跳ねる。

 無言のまま握拳するお嬢様、婦女暴行罪は殴り飛ばさなければ。

 覚醒は無理だが、使わずともある程度の威力は出せる。


『待て、エルエル。あれは欠損した魔力の補充だ。』


「……。」


『憑いている聖獣が宿主の体内魔力を随分外に出してしまってな。確かに強引な手段ではあるが、手綱の持ち手とは経路が……エルエル?』


 だがしかし、それにしてもだ。

 姉弟子は普段の荒っぽさから信じられないほど大人しい。

 キスは相方と何度も交わしているし、する方の知識もある。

 その上何をされているか解ってしまうのがお嬢様の無駄な解析能力。

 一番引き出しやすい感情を揺さぶり、望みを抱かせることで魔力として吸引する。

 現在ゼルド氏の行っていることはそれだ。

 フォクシ嬢が選ばれたのは単純に側に居たからではない。

 封印の手綱を握っているため魔力の経路が繋がり、変換がしやすいからだ。

 だからと言ってこれはいささか情熱的すぎるというか、激しすぎるというか。

 余す所無く味わい尽くすつもりなのだろうか。


「エル。あんまり見てると後でフォクシさんに叱られるよ。」


「……はっ!?」


 合間に漏れる吐息はクリムゾングリーズで聞いた時よりも湿っていた。

 普段は音を聞くために立てられている耳は力を失い垂れ下がっている。

 尻尾の毛は逆立っているくせに足の間で堪えるように震えている。

 拘束されている腕の先、きゅうっと握り込まれた指から力が抜けてゆく様子。

 二人の年齢もあるのだろうが、お嬢様達よりも大人な感じのそれを連想させる。

 お嬢様は拳を握ったまま、思わず生唾を飲んでいた。

 呆然と見入っていたがこれ以上はいけない。

 改めて踏み出そうとした所でゼルド氏の聖獣は満足したらしい。

 蔓が力を失ったところでフォクシ嬢に突き離されて倒れる。

 姉弟子から奪った体内魔力は徐々に変質し、彼のものへと馴染んでいく。


「はっ、はぁっ……。お、覚えてろあの馬鹿……、いや、覚えてるなよ……。」


 だが同時に姉弟子もその場にへたりと座り込んだ。

 思い切り肩で息をしながら、手の甲で荒っぽく唇を拭う。

 あれだけされた後だ、誤魔化した所で熱は残ることは知っている。

 見ているだけで鼓動が早鐘を打つが、睨まれると思わず硬直した。

 いつもの鉄拳制裁を覚悟する。

 ――いつまで経っても頭部に衝撃は来なかった。


「……今見たもんは忘れろ、記憶するな、何も見なかったよな?」


「「はい。」」


 お嬢様、相方共に姉弟子の珍しい懇願には逆らえなかった。

 降りてくるまで何もなかった、姉弟子はちょっと疲れて座り込んだだけ。

 そういう体裁で二人は行動を開始する。

 疲れすぎて(・・・・・)立ち上がれないようなのでお嬢様がフォローに回る。

 ゼルド氏の方はルゼイアが、そして生存者の方は――。


「こういう奇跡(まほう)の使い方はどうかと思うよ、(ルゼイア)。」


「……自覚はあるけど、人手は居るだろう、(カイゼル)。」


 分見の知恵ある聖獣に、更に肉体をまとわせるという暴挙に出る魔王。

 空中でこの姿も好きだと言われたためについ行ったのだろう、視線が泳いでいる。

 さすがに成竜サイズではない。

 竜人と同じサイズに縮まっている空帝竜。

 お嬢様を乗せたときと同じ大きさになるのは流石に目立ちすぎる。

 カイゼルが本体へ揶揄しながら生存者を担ぎ上げた。


「後で髪とたてがみ、両方撫でさせてもらいますね。」


「おい妹弟子。あ、いや、助かる。」


 姉弟子に肩を貸すことはさほど苦にならない。

 細い体つきではあるが、筋肉の質は変わってきている。

 外観に変化が無いのはもう受け入れることにした。

 いっそ意表をつけるし良いかもしれない、前向きに捉えよう。


「……こほん。そんなことよりフォクシさん、降りてくる際にヴィオニカ連邦国の飛行船を見かけました。州章からフェイル州のようです。」


「明確な領空侵犯行為だな、ベーラ領の領土が貸し出しされてるなんざ、知られてねえ。」


 これに対して行える手段は二つある。

 一つはお母様を介すること。

 王宮魔法団長の追求となら、ある程度の牽制にはなるだろう。

 ただしお嬢様の証言となれば連絡魔道具の存在を知られてしまう。

 匿名からの証言となれば墓荒らしによって曖昧にされるのが落ちだ。

 もう一つは国家間をまたぐ組織に知らせること。

 冒険者ギルドはほぼ世界中に展開されている。

 たとえ王国内でもみ消されたとしても、他国で知れ渡れば国としての損失は大きい。

 そういった騒動や出来事を出し物として求める層は思いの外多いのだ。


「後で魔法貨物に書いて送っとくぜ。一応こことヴィオニカ連邦国、それにレフス帝国とカシード神国と……。お袋の伝手を使えば後での立ち回りにも役立つだろ。」


「……セラの活動範囲広すぎません!?」


「セラさん、世界中歩いてそうだね……。」


 フェルベラント王国とヴィオニカ連邦国は隣国だ、まだ解る。

 レフス帝国は陸続きとは言え、途中小国をいくつか挟むほど遠い。

 カシード神国といえば南の海原を超えた先、別大陸にある大国だ。

 くたんと身体から力の抜けきった姉弟子は、耳を倒して聞かないの姿勢。


『神国か、確か聖獣を神の使いとして定める国だ。各国の葬送手段はここから伝わっているとか。』


「普通思いつくなら孤児院やら神殿なんだが……やっぱ変なやつ多いな。」


 モルグ氏の言葉は元墓守一家ならではのもの。

 神学科でもなければ詳しくない知識まで有している。

 普通は神国と言えば孤児院と神殿を運営する場所、程度の認識だ。

 それ以外に各国と特筆するような接点がない。


「ともあれ、ここで出来ることはもうありません。早く動くことにしましょう。」


「お前が派手なことしたお陰でな。でもよくやった、オレもちょいとばかりスッキリしたわ。」


 姉弟子の言葉に少し、碧目をさまよわせる。

 言え怒っているわけではないのが幸いだ、見なかったことにしたおかげだろう。

 三人、うち一人は二人に分かれただけだが、それぞれ一人ずつ運んでの移動だ。

 道中の魔獣や魔物は恐らくまだ残っているだろう。

 モルグ氏が着いてきてくれれば手が増えるのだが――。


『手前はここまでだ、また世界をめぐろう。……全く、奇跡も裏を返せば呪い(・・)とは。墓荒らしと共に気にかけておくと良い。』


「それがフリグさんからの言伝と考えて良いのかい?」


 そうはいかないらしい。

 唐突なモルグ氏の発言に返すのは、彼から身分けをしてもらったカイゼルだ。

 竜の顔なのに流暢に人語を操るが、鳴き声を聞けなくなったのは少し残念。

 当たり前だが声はルゼイアのものと全く同じ。

 ふわふわを堪能できる箇所が増えるのは嬉しいが、これはこれで大変かもしれない。

 だが矢張りあの手触りがとても良さそうなたてがみは良いものだ。


「エル、僕達を撫でる時の手になってる。」


 こちらはルゼイアからの突っ込み。

 姉弟子に肩を貸して逆側に手槍をかけているが、つい感触を思い出す。

 こほこほ咳払いをして誤魔化した後にモルグ氏の発言が続く。


『さて。少なくともこの国の成り立ちが平和でなかったことは覚えておくべきだろうな。』


 カイゼルがそう感じたということは、十中八九当たりだろう。

 お母様は国に対して行動が制限されすぎている。

 だが、それは生者に対してのことだ。

 死者となったモルグ氏には独り言というていで伝える事ができる。

 本来知恵ある聖獣は特定の生者以外にこだわりを持たないため、言伝を頼めない。


「成り立ち、奇跡、呪い……、巨人(・・)。」


 三つの言葉に自身の体験を重ねる。

 魂と魔力の関係性だ。

 魔法という奇跡は魔力と関わりがある。

 そして魔力は魂に結びつく。

 ならば、そこから引き出せる答えは簡単だ。

 魂と魔力は累々と続いていく。

 ――至った答えは口にできない、国をひっくり返しかねないからだ。

 正解と言うようにモルグ氏の輪郭が少し解ける。


「フリグさんも随分な爆弾を押し付けてくれたね。少なくとも国内では言えない事だ。」


 相方も同様の結論、フォクシ嬢等頭を抑えている。

 この国が拠点なのに、なんて情報を押し付けたのだ。

 お母様をわざわざ敵に回すような発言はできない。


「だからといって彼らを許しはしません。」


「……ま、結局最後の舵をとってんのは当人だろ。」


 巨人による純人の血筋に対する魔法。

 代替わりが早い彼らにしか効果を発揮しない遅効性の猛毒だ。

 だが一方、カリスト嬢のように責務を果たす者もいる。

 組織の中に居ながら、こちらに寄ってくれたカール氏のような前例も居る。

 そう思えば随分命がけのことをしてくれていた。

 二名に分かれた相方から嫉妬のこもった視線が向けられる。

 杞憂だがその気持ちは解ってしまう。

 ギルドで相方が女性冒険者に絡まれた時、お嬢様も同じような視線を向けていた。

 誰かに侍るつもりはない、一緒に並んでくれるから相方を選んだのだ。


「ありがとうございます、モルグさん。」


『では、息災でな。』


 ここで別れるのは、これ以上の情報を口にすれば国に仇なすと判断したからだ。

 お母様の視界は停滞を消し飛ばした今、この辺りにまで及んでいるだろう。

 大本の停滞が排除されたのだ。

 フォクシ嬢が復活すれば道中の襲撃はどうにでもなる。


「さて、そんじゃこのまま北方向だ。」


「解りました、急いで向かいましょう。」


 姉弟子が道を示し、お嬢様達は仲間と生存者を担いだまま移動を開始。

 進軍速度は遅くなるが、ここまで来れば国境までもう少しだ。

 東の大峡谷を繋ぐ巨橋と製粉の町、シアンフロー。

 そこがこの国での終着地点。


「あ、あー……、も、もう少し肩借りるぜ?」


「だ、大丈夫です。道中無理していただきましたから。あっ、今日の夕食は久しぶりにあんかけ揚げパスタ作りますね。」


「お、おう。あの食感と味、面白くて好きなんだよな。」


 進もうとして、フォクシ嬢の声は若干どもり気味になった。

 生々しいあれこれを思い出してしまうため、料理のほうに意識を裂く。

 ゼルド氏に背負わせ直した大型保冷箱のお陰で食材の長期保存ができる。

 暑い中での調理になるが、むしろ今はその大変さがありがたい。

 ……それにしても、腰砕けになるほど、そんなに、そんなにも。


「エル、僕達は肉団子も入れて欲しいかな。」


「はいっ、そちらも入れます!」


 思考中断のフォローが相方から入る。

 思わずびしっと背筋が伸びた。

 耳の先が火照りだしていたので助かった。

 今晩の食事は豪勢になりそうだ。

 なお、フォクシ嬢より先にゼルド氏のほうが立ち直った。

 聖獣に動かされている時の記憶は無いらしい。

 全員がぼかしたため真相は闇の中。

 本人は気にしていたが、こればかりは団体行動の和を保つためだ。

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