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白馬の王子様と呼ばれる女騎士は、熊団長に恋してる  作者: 御仕舞


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6 . 着飾る道化





 任務のあるものは任務を優先したが、団長の晴れ姿が見れなくて悲しいですと泣かれた時は戸惑った。

そこまでしてみたがるものではないだろうに。

午後休の面々だけで城下町でも評判の洋装店『フェアリーシャイン』に行くことにした。

シルクのドレスやレースのショールが天井から吊るされ、宝石のように煌めいていた。

甘い花の香りと染料の匂いが混ざり合う空間に、私たち騎士の一団は明らかに異質だった。



「いらっしゃいませ」



 店主であろう婦人が私たち一行を見て目を見張った。

豊満な体に高級なビロードのドレスを纏った女性は、驚きながらも上品な笑みを浮かべた。



「あらまあ、まさかあの女騎士団長様でしょうか?ご高名はかねがね伺っております。私どものような辺鄙な店まで足を運んでいただけるとは光栄の至りに存じます」

「今日は団長の特別な日の装いをお願いしたいのですわ」

「喜んでお手伝いさせていただきます」



 セレスティアが得意げに前に出て説明する。

他の団員たちは目を輝かせて店内を見回している。

婦人は生き生きと両手を揉み合わせ、



「どのようなイメージをご希望でしょうか?」

「清楚で気品がありながら、それでいて女性らしさを最大限に引き出すようなデザインを」



 彼女の目には確固たる自信が宿っている。

他のメンバーも大きく頷いた。

私はそれをどこか他人事のように捉えていたが、店主店の奥から何枚もの美しい布地を取り出して並べ始めると、状況が変わる。


 セレスティアを筆頭に他の団員たちが店内に散り、煌びやかな布地の海から候補を探し始める。

私は所在なく待合用のソファに腰掛けた。

平時でも騎士服を脱ぐことのない私は、普段着すら持っていない。



「クラウディア様はどのようなお色がお好みですか?」



 婦人に尋ねられても答えに窮する。

店内の視線が一斉に私に集まった。



「好きな色などないが、傷があるので露出を少なくしてほしい」



 セレスティアたちの動きが一瞬止まった。

騎士である彼女たちに、傷を気にしている者がいれば申し訳ないが、私たちの身体についた傷はどうあがいたって消えるものではない。

彼女たちが日々それをいかに隠し、女性として魅力的見えるよう努力しているのを私は知っている。

誰もが望んで騎士になったわけではない…私と違って。

鎧の下の幾つもの古傷は、誇りと共に痛々しさも伴う。

私が誇りだと思っても、わざわざ見合いの席で晒すべきものではない。


 婦人は動揺も見せず、にっこりと頷いた。



「それでしたら、こちらは如何でしょう?」



 広げられたのは深い藍色のドレスだった。

落ち着いた光沢が優雅で、腕部分は長めの袖に繊細なレース飾りが施されている。



「こちらでしたら肌の露出も最小限でございます。それに」



 婦人はドレスの背中の部分を見せた。

スリットが入っているものの、編み上げ式になっておりしっかりと留めることができる。

傷のある箇所を巧みに覆い隠しながらも、動きやすさを考慮した機能性が見て取れた。



「団長の蒼眼によく映えると思いますわ」



 セレスティアが近寄ってきて、他の団員たちも口々に称賛の声を上げる。

婦人は裁縫用の紐を手に、「では採寸させていただきますね」と促した。

鏡の前に立たされ、婦人が器用に寸法を測っていく。



「団長様のご体型は非常に端正でいらっしゃいますね。これならラインも美しく出るでしょう」



 セレスティアが小箱を持ってきて、



「この髪飾りと合わせてはいかがでしょう」



 銀の細工に小さな青い宝石が嵌め込まれた単純ながら上品なデザインだ。

他にも団員たちが、靴や鞄、装飾品をどんどん持ってくる。

洋装店だがこの店一つで買い物全てが済んでくれるのだけはありがたいなと思い、飾り付けられる人形のようになりながら、ふとイヤリングに目が向く。



「団長、そちらが気に入ったのですか?」



 目敏い。

セレスティアの鋭い観察眼に内心焦る。

否定する前に、婦人が小箱を差し出してきた。



「こちらは新作でございますよ。秋の森をモチーフにした琥珀と黄金の組み合わせが」



 説明は右から左へ抜けていく。

彼の美しい瞳の色と同じ色の石。



「私もそれが一番お似合いになると思いますわ」



 セレスティアが微笑み、他の副官たちも同意する。

全員の視線が一点に集中する中、誘惑に負けた私は静かに頷いた。

婦人は嬉々として箱を包む。



「それではお仕立てに入りますので少々お時間を頂戴いたします」



 鏡の中の自分を見る。

普段の鎧姿とは別人のように見える自分に、複雑な感情が湧き上がる。


みっともないし、気持ち悪い。


鏡の中の情けなく眉根を寄せ、周囲に人がいるから無表情を気取っているが、目に感情が浮かんで出ている。

愚かにも彼に気に入られるかもと期待してる媚びた目だ。

身分も生まれも、私の愚かさや汚さもすべての清濁をこのドレスで着飾れば、隠し切れるのかもしれないと期待している。


 でも、そこまでして彼を騙して、その次は?


子どもを産めないかも知れないと、結婚式で告げるつもりか?








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