第8話 勇気ある者
それから数刻
ヒナタたちは村へ帰還した
そこには、彼らを案ずる者たちが
「パパ!ママ!ヒナタさん!」
「ヒナタにいちゃん!無事だったんだな!」
まず、エルがライトとレイに抱きつく
そして、アルはヒナタに懐いたのか、飛び上がって彼の無事を喜んでいる
「おお…お前たち…今、帰ったぞ」
「本当に…無事に帰れてよかったわ…」
二人が感慨深く思っていると
「ライト…レイ…こんなこと言う資格はないのかもしれないが…無事で本当に…本当に良かった…」
「ヒナタも…あの時見捨てちまって…すまねえ…許してくれとは言わねえ…だが…これだけは言わせてくれ」
「この村を救ってくれて…本当にありがとう…」
先に退避した冒険者たちが皆土下座をして頭を下げる
「ちょっと待ってください!顔を上げてくださいって!僕は…少しアイデアを出しただけで…」
ヒナタはそう弁解するが
「いや!ヒナタ…お前は俺たちが動けないとき…逃げることもできたはずだ…」
「でもそれどころか、お前は逃げずに、たった一人でドラゴンに立ち向かった」
「そのおかげで…俺たちは生きて帰って来れたんだ…」
「今のお前を、この村の"勇者"だと認めない奴は誰一人居ねえよ」
そう村の皆が感謝していた
ありがとう
ただ、その言葉が止まらない
「その称号は…僕一人には重たいですよ」
「きっと…"勇者"って…一人でなるものじゃないんです」
ヒナタは自分の考えを語り出した
「この地に生きる一人ひとりが…自分にできることを精一杯やる…その隣人を想いやるその行動が積み重なって…先陣を切る人はやっと戦えるんだと思います」
「だから…"勇者"がいるとすれば、この村の人が全員です!僕はたまたま知恵を出して、最後に前に出た…一番目立つ所にいただけです」
謙遜混じりに、しかし、そう信じて疑わない目で語った
「なるほど…ヒナタらしいな…」
「ええ…そっか…私も勇者なのかね…」
ライトとレイはそれを聞いて微笑む
「……………」
ルナはそれを黙って聞いている
――勇者は一人でなるものじゃない…か
――確かに…でも、なら…私のしていることは…
そう思い、迷い始めるルナ
「こりゃ、一本取られたな!でも、やっぱり俺は、ヒナタは"勇者"だと思うぜ」
「ライトたちを救ったときも、子どもたちを救ったときも、今回のドラゴン退治も…」
「お前が見せたとびっきりの"勇気"に、俺たちは動かされたんだからな!これを"勇者"と言わなくてなんて言うんだ!」
気前の良さそうな冒険者がそう高らかに言った
「ちげえねえ!」
「武勇伝は、地に根づいて男の生き方を変えてくれるもんな!」
「うちのガキたちもヒナタたちの話聞かせてくれって五月蝿いんだよな!」
「 「 「ははははははっ」 」 」
みんなで笑い出した
「あ、あの……」
「諦めろ、お前の負けだヒナタ」
話が進んでいくのを止められないヒナタに声をかけたのはレオン
「お前の示した"勇気"が、人の心を…俺の心を動かしたのは事実なのだから」
「レオンも…?」
レオンはぬいぐるみ姿のまま、目を瞑り頷く
「だから…すまなかった…」
「ヒナタを軽く見たこと…なにより、誇り高きレオニア族が誇りを…命を軽んじ、人の子を巻き込んだこと」
「ここに謝罪する。本当に…すまなかった…」
レオンはそう頭を下げる
「それは…僕より言わなきゃいけない相手がいるでしょ?」
そうして、ヒナタは大人たちに頼み事をする
数刻経つと、村の子どもたちがレオンに集まり出した
「おお!赤い猫だ!」
「ダメだよ…お兄さんの友達なんだから」
「私もこんなぬいぐるみ欲しいなぁ…」
無邪気にレオンを取り囲む
「お前たち…」
レオンは意を決して、息を大きく吸い込む
「本当に…!すまなかった…!」
「お前たちの心を利用し、勇気を騙り、ヒナタの成長の糧にしようと目論んだ」
「俺は大罪を犯した…何なりと罰は受ける…だから…」
レオンは俯く
子どもたちはキョロキョロし出す
そして、皆で顔を合わせ頷いた
「じゃあ!しばらく、わたしたちの遊び相手になってね」
「…ん?」
そう声を上げたのは、エルだった
「そんなことでいいのか?いや、親に判断してもらおう…こやつらの親は…」
そう言ってレオンはキョロキョロし始める
「あ〜、いいんじゃないかい?」
「そうだな、俺らが仕事してる間、遊び相手になってくれれば大助かりだ」
「レオン君が唆さなくても、この子ら暇があれば森に行くからね…ダメって言ってるのに…」
大人たちは、子どもの自由奔放さに振り回されていた
「……あー………」
レオンは白目になって動かない
「じゃあ!しばらく、俺様の子分にしてやるぜ…」
「こ、子分…だと…誇り高きレオニア族の俺が…子分…」
レオンはなんとか堪える
「ねえねえ!わたしたちとおままごとしましょ!わたしとアルくんがママとパパだから!レオンちゃんは赤ちゃんね!」
「あ…赤子…だと…?」
レオンはそれもなんとか耐える
「ほら!赤ちゃんは言葉は喋らない!ばぶーって言って!」
「な!?ば、ばぶーだと?この誇り高き俺がばぶー…」
声が詰まるレオン、そのプライドは崩壊寸前だ
「ば、ば、ば、……………無理だ!」
「ヒナタ!ヒナタ!俺を助けろ!ヒナタ!」
「って!居ない!?」
いつの間にか消えたヒナタ
唯一の逃げ道を失い、絶望するレオン
「ほら、レオンちゃんばぶばぶでちゅよ〜」
「嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
レオンの悲鳴が村中に響いた
♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢
レオンが子どもの遊び相手になっている間
ヒナタはルナと共にライト宅へお邪魔していた
「本当にお疲れだったな、ヒナタ」
「ありがとうございます、ライトさん!レイさん!」
出されたお茶をググッと飲み干す
「あ、あの…ヒナタさん…!」
声をかけたのはエル
「あれ?レオンの方はいいの?」
きょとんとした顔でエルの顔を見るヒナタ
「あ…あの…ヒナタ…さん…」
もじもじし始めるエル
レイが背中を押して
「ほら、言うんでしょ…?」
「うううっ……」
顔を布で隠して照れているようだ
ヒナタは何のことか気が付かない
そして、意を決して、エルは言った
「あの…ヒナタさんのこと…ヒナタお兄ちゃんって……呼んでもいいですか…?」
涙目でうるうるしながらそう頼む
「もちろん、いいよ!嬉しいな、僕、兄弟とかいなかったから!」
ヒナタは笑顔で返した
「やったー!ヒナタお兄ちゃん大好き!」
むぎゅ
小さい体でヒナタに飛びつくエル
そして、ライトに目が行くと
「……娘はそう簡単に……」
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「あなた、その辺で…いいじゃないですか、仲の良いことは」
「レイ…いくらヒナタとはいえそれはまだな…」
そう言い淀んでいると、話題を変えるレイ
「そういえば、ヒナタ君はどのくらいこの村にいるの?」
「それは…」
ヒナタは返答に困る
「ヒナタお兄ちゃん…居なくなっちゃうの…?」
エルは目に雫を溜め始める
ライトとレイが慌てだすと、目線でヒナタに助けを求めた
「すぐには行かないよ。もう少し居るから…安心してね…」
エルの頭をくしゃっと撫でながら安心させる
「えへへ…」
安心してヒナタに寄りかかるエル
――僕には、使命がある
――でも、ここには…ずっと僕が欲しかったもの…家族…友人…絆…全てがある
――僕は…僕は…
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