表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

第6話 友の誓い

子どもたちの失踪事件は夕方に無事帰ってきた

それもあり、村では火遊びをした程度の扱いで済んだ

とはいっても、二度と危ない目に遭わせないため、各親からキツイお叱りを受けたらしい

アルの家も例外ではなく、レイからは怒鳴られ、逆にライトはブレーキ役になっていた


それでも最後には


「お前が無事でよかった」


その言葉をかけられて、家族の絆を確かめ合ったらしい


――家族っていいな…

ヒナタは自分には無いものを持っているアルたちを羨ましく思っていた

そんなヒナタだが、伝説を唆したのは自分の仲間であることを村の親たちに伝えたが


「幼いころは、ありもしない伝説を求めてみんな冒険するもんさ…!」


辺境の家庭ではそれが当たり前で、村の大人たち…特に父親たちは森へ向かう子どもたちを過去の自分たちと重ねていたようだ


――だから…ライトさんは妙にアルに優しかったのね…

一つ疑問が解消するヒナタ


ヒナタは優しくしてくれる村の人たちに責任を感じて、しばらくの間、村に残ることにした

そして、レイの自宅の天井を見て物思いに耽る

――親のドラゴン…なんとか…この村の人たちが…平穏に暮らせるように…

――アルくんに恥じないように、僕も…"勇気"を示さなきゃ…


そして、ヒナタ行動を始めた


「どうすれば、ドラゴンの親を退治できるか、とでも考えているのか?」

「………………」

レオンが声をかけてきた

ヒナタは目を合わせずに黙っている


「…ねぇ」

ヒナタが冷めた声で言った


「…レオンが僕の前から居なくなるって、できないかな?」

「………」

レオンは怪訝な目を向ける


「俺たちは魂が繋がった身…形はどうあれ離れることはできん」

「そっか…」

興味を無くしたかのように外へ出ようとするヒナタ


「ドラゴンと戦うには、どうせ『俺』を呼ぶしかない」

レオンは不敵に笑いながらそう言うが




「呼ばないよ」




ただヒナタはそう言った


「…なんだと?」

訝しむ目でヒナタを見るレオン


「一緒に戦いたくないから…また、いつ誰を巻き込むか分からないし」

「それは…小僧の成長のためで…」

そうレオンは言おうとするが


「それはただの言い訳だよ、利用される子どもたちの気持ち…少しは考えた?」

「本物を信じて騙されるとか…踏みにじられるとか…そういうのって…辛いよ」

目を背けながら、ヒナタは言った


「なぜ…弱い者の気持ちなど考える必要がある?」

「人間はいつもそうだ…自分たちは力がない…弱いと声高々と叫びながら、強者に縋る…そして、用が済めばその強者を迫害するではないか?」

――我々、神獣をこの幻想世界から追いやったように…

レオンは人を信じていなかった


「今更、勇者などという伝承に縋る愚か者までいる始末…俺の言うことは、今の世が証明しているではないか?」

いつまでも他者に縋ることしかできない人の弱さに辟易していた


「確かに、人間は弱い生き物だよ…力はないし…裏切って、命を傷つけることだってできる…」

「それでも…逃げないで…信じ合って…どんなに痛くても…立ち向かう"勇気"があれば…手を繋げる!」

「みんなが手を繋げば…どんな大きな力にだって、負けない"強さ"を持てるんだ!」

「僕は…そう信じてる…」

そう強く言ってヒナタは出て行った


「………」

レオンはただ黙っている


――これも宿願のため…だが…

――そのために、誇りを捨てた俺を…同志たちは受け入れてくれるのだろうか…

レオンはぬいぐるみとなった自分の手を見る



♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢



それから、村の人に聞き込みをし、打開策を練るヒナタ

その中で、一つ有力な情報を得た


そこは村の寄り合い所


冒険者が集まって知恵を出し合っていた


「天敵がいる…?」

「ああ、その名は、アリアンドリス…ドラゴンにも効く毒を持った大蜘蛛さ」

その情報を伝えてくれたのは、レイさんの夫のライトさんだった


「いま、この村が生き残るために…策を練っていた。それが…」

「アリアンドリスとドラゴンを戦わせること…?」

ライトの策を先んじて答えるヒナタ


「ええ、でも問題が二つあるわ」

「まず、ドラゴンかアリアンドリスのどちらかを、もう一方の縄張りに誘い込まなきゃいけない…その囮役がいないの」

「二つ目は、距離が遠いこと。確認できたアリアンドリスの巣とドラゴンの巣は森二つ分ほど離れている…とても逃げ切れる距離じゃないわ」


ルナの説明を聞いて打つ手がないことを知るヒナタ

何か見落としがないかと、地図に目をやる


――ちょうど間くらいにこの村がある…ん?

地図に一つの違和感を抱く


「ここは…盆地なんですか…?」

「ああ、そうだ…近くに湖があるだろう?そこに向かって、双方から川が流れているのさ」

ライトに質問するヒナタ


「仮に、ドラゴンを引き付けるとして、何で引き付けるんですか?」

「それは腐肉だね…ほらあそこ…」

外の肥溜めの近くにあるツボを指さすライト

ヒナタは近くに駆け寄り、蓋がきちんと閉まって簡単には開かないことを確認する


――高低差のある地形…臭いで引き付ける策…双方をつなぐ湖…


「川を使うというのは…ダメか…臭いが消えちゃう…」

「ああ、それは俺も思いついたんだが…あと少しなんだよな…」

手詰まりを感じる二人


だが


――待てよ…


「川が流れてるってことは…湖まで障害物は…?」

「ないはずだが…」

「なら…!可能性はあるかもしれない…!」

「何かいい策があるのか!?」

ヒナタの機転にライトが食いつく


「できるだけ長い…太くて頑丈な縄を作ってください…双方の巣の近くからつなぐように」

「用意できなくはないが…そんなもん作って何を…」

「腐肉の入った瓶の蓋が開くように仕掛けを作って…縄張りから湖側へ同時に落とすんです」

ヒナタが説明したのはローラーのようなもので壺を固定し、スイッチを起動することで縄を伝って、高速で湖まで腐肉を運ぶという策だ


「ちょうど、湖は一番標高が低いと聞きます…これなら…失敗した時のリスクも少ないし…どうですか?」

「………」

「………」

一同は黙り込む


すると


「上出来だ!坊主!」

「縄さえあれば、すぐにでも試せるな!よし!」

「腐肉と同じ重さにした壺を用意しとけ!中は土でも…臭いがなければ何でもいい!」

冒険者たちは動き出した


「え、ええと…」

ヒナタは少し困惑している


「ありがとう…君の知恵で…犠牲を払わずに済んだ」

「犠牲って…まさか…!?」

「この村のためだ…何人かの男が命を賭けた囮を志願していた…俺もその一人だ」

「ライトさんまで…」

「だからありがとう…俺たちに生きる希望をくれて…」

ライトの感謝にヒナタは照れ臭く微笑む


「お礼は全部終わってから聞きます!この苦難…何としても乗り越えましょう!」

「君は…こう言っては何だが、村の外の人間だ…疎外するわけじゃない…でも、なぜここで命を懸けられる…?」

ヒナタはライトと握手をするのと同時に、その真意を確かめ合う


「僕には…使命があります…それに…」

「この村は…この村の人たちは…僕にとって…恩人です」

「初めて…家族ってどんなものか…知ることができた…だから…その恩返しがしたくて…」

ヒナタはただこの村に恩返しがしたかった



「そうか…そう言ってくれてこの村の者としても嬉しい!」

「共に戦おう!」

ライトとの握手を強めるヒナタ

死地に向かうにあたって、周りの冒険者たちとも結束を深め合った



♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢



そして、幾度もテストを繰り返した作戦当日

湖で待機する冒険者一同

そこには、ルナもレイもいた


「ありがとね…ヒナタさん」

「ルナさん…」

ルナは優しく微笑みながらも、ヒナタに感謝を述べる


「あなたのおかげで何人もの犠牲が減った…」

「この作戦が失敗に終わっても、アリアンドリスとドラゴンが対峙すればもう…人を襲うほどの力は持てないはず…」

「だから…たとえ何があっても…あなたを恨む人なんて一人もいないから…安心してね」

なにがあっても、責任を感じて欲しくない

ルナからの心からの気遣いだった



「………そんな…」

――確かに、ここまではうまくいってる…でも…

そう思ううちに、作戦実行の時が訪れた


「いくぞ!作戦開始まで、3,2,1!」


その瞬間、仕掛けが発動し、はるか遠くから壺が縄を伝って転がり下りてくる

そして、近くの茂みに隠れる一同

数刻経ったとき


パリーン!!


双方から、腐肉の入った壺が湖近くの地面に叩きつけられた

そして、さらに数刻が経つと


ドシーンドシーンドシーン


ガサガサッ ガサガサッ ガサガサッ


遠くから音が聞こえる


すると…


「でた…!でっけえ…」


冒険者が驚きの声を上げる

人の数十倍はある大きさのドラゴンだった


――あれがドラゴンの親…

――それで…向こうが…


「うげっ…あれが…」

「アリアンドリス…!」


ドラゴンに負けず劣らずの巨大な毒蜘蛛がそこにいた

そして、ドラゴンとアリアンドリスが互いに視界に入ると

「オォォォォォォォォォォォン!!!!」

「ヌヴォォォォォォォォォォォ!!!!」


大地が揺れ、木々が倒れていく

空気が激しく振動し、その波動がヒナタたちまで伝わってくる

そんな大激闘が繰り広げられていた

毒蜘蛛は糸で足と翼を止め、噛みつき

ドラゴンは、爪で体表を切り裂き、炎のブレスで蜘蛛ごと焼き払った


そして、数刻にわたる大激闘を制したのは


「ドラゴンが勝ったのか…」

アリアンドリスはひっくり返り、息絶えている

ドラゴンも毒に苦しみながら勝利の雄たけびを上げた


「ギャオオオオオオオス!!!!」


「あのまま毒が回れば…いずれ息絶えるだろう…」

「よし!作戦は成功だ…帰るぞ!」

歓喜に震える中、静かにその場を去ろうとするが、


ドシーン!!


ドラゴンがしっぽを大地に叩きつけると、地割れが起きる

その瞬間、冒険者たちが跳ね上げられた


――くっ!なんて揺れだ…っ!!

ヒナタは近くの木につかまり、事なきを得る

揺れが収まると


「ルナさん!みなさん!」

目の前には、気を失ったルナと冒険者たち

皆の身体をゆするが目を覚まさない

時間が過ぎていくのと同時に、ゆっくりと迫るドラゴン


全滅はもはや、目前だった――


――なんとか…なんとかしないと…!


「『俺』を呼べ…小僧…呼ばねばここにいる者たちは皆死ぬぞ?」


陰にいたレオンがそう声をかけるが


「こっちだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


冒険者たちとは反対方向に走り、鉄扇をブーメランのように投げて誘導する

それがドラゴンの目をかすめ、ドラゴンは怯む


「ドラァァァァァァァァァァァァ!!!!」


痛みを感じた怒りで雄たけびを上げた

その瞬間、気を失っていたルナが目を覚ます


「ここは…はっ!」

目の前には、囮として皆を逃がそうとするヒナタがいた


「みんなを起こさなきゃ!」

「起きて!起きて!はやくしないと!ヒナタさんが死んじゃう!」

慌てて周りの皆を起こすルナ

そうして冒険者たちも目を覚ます


だが


「これでは…我々が加勢しても…もう…間に合わん…」

「そんな!?彼を見捨てるの!?」

一人の冒険者がそう言うが、ルナは納得できない


「ルナの言うとおりだ…あの子は恩人…ここで見捨てては…冒険者の名折れ」

「だが、お前の意見も分かる…ここは二手に分かれよう」

ライトはそう提案する


「すまない…ライト…お前にも家族がいるのに…」

「気にするな…それに、こんなところで死ぬ気はない!」

ライトたちは撤退する冒険者たちを見送る


残ったのは


「俺たちか…因果だな」

「そうね…行きましょう…あなた、ルナ」

「はい!」

最初に出会ったルナ、ライト、レイの三人が残った


――わたしも…もう命は見捨てたくない…!

――理想主義者で…世間知らずで…でも、誰よりも優しくて…救いの言葉をかけられる…

――ヒナタさんはきっと…本物の…!

ルナの心に浮かぶ伝承の勇者とヒナタの心が朧げに重なる


「ヒナタさん!」

ルナは思わず声を上げる

もう助けが間に合う距離ではなかった


――させない!あの人は…わたしの…!

しかし、ルナは諦めず、全速力でヒナタの元へ向かう

今にも、ドラゴンのブレスで灰塵に帰す勢いだった


それを見ていたレオンは


「小僧!早く『俺』を呼べ!」

「はぁ…はぁ…はぁ…」

ヒナタはレオンを呼ばない


――なぜ…俺を呼ばない…弱い人間が…

――いや、弱いとは誰がそう決めた…?他でもないこの俺だ…

――力は確かに貧弱だ…だが、それはあやつの一側面にすぎない…

――あやつは戦場において、誰よりも"勇気"があった

――あの小僧は…本当に弱かったのか…?


そう考え一つの結論に至るレオン


――宿願に固執するあまり…人を嫌うあまり…瞳を濁していたのは『俺』だったのだ…

――ならば…!


「……わかった!」

「もう、目的のためとはいえ、人間を利用したり、その命を粗末に扱ったりはしない!」

「だから…『俺』を呼ぶんだ…!ヒナタァァァァァァ!!!」

レオンの魂の叫びが響き渡る


「ちゃんと…迷惑かけたみんなに謝る?」

「も、もちろんだ…」

渋々頷くレオン


「じゃあ…いま、誓って…言葉にして!」

「…くっ…お…お…」

プライドが邪魔をして、言葉が発せないレオン

しかし、ぬいぐるみ姿で声高々に宣言した


「…『俺』は!」

「"勇気"の神獣!レオン!」

「本物の"勇気"を示したヒナタを、友として認め!」

「最後まで、共に戦い抜くことを誓う!」


「…君の言葉…確かに響いたよ」

その瞬間、レオンがぬいぐるみと共に鉄扇に吸われていく


ドラゴンのブレスが放たれると


「扇げ!ヒナタ!」

「えぇぇい!!」

鉄扇によって巻き起こした爆炎でドラゴンのブレスをかき消した


「すごい…あのブレスを一蹴するなんて…」

寸前でそばに追いついたルナは目の前の光景を疑う


「行くぞ!ヒナタ!」

「うん!」

初めて心を重ね合わせて、鉄扇を前に構える



「…顕現せよ!大いなるたてがみを抱きし、"勇気"の咆哮!レオギアス=ブレイズ!」



「グオォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!」

王者の咆哮を放ち、ドラゴンを怯ませる

燃え上がる勇気の炎

その輝きを宿すたてがみは王者の風格を放ち、その眼差しは恐れを焼き尽くす

"勇気"の神獣がそこにいた


「神…獣…」

レオンの真の姿を見てそう零すルナ


――やっぱり…!彼が…!ずっと探してた…勇者様…!

伝承で描かれた姿とヒナタとレオンの姿が重なる


「ふん…前よりは骨がありそうだが…」

「オオォォォォン……」

「その様子では…もう…立っているのもやっとだろう…」

毒が回りはじめて身動きが取れなくなるドラゴン

「せめて…苦しまぬよう…介錯を務めてやろう」



「キングスフレア!」



黄金と灼熱が融合した煌びやかな炎がドラゴンを包む


その一撃でドラゴンは骨だけが残った


シュピーン


その瞬間、ぬいぐるみに戻るレオン


しばらく沈黙が包む中


ヒナタは屈んで、レオンと目線を合わせる


「やったね…!」

「ああ、俺たちの勝利だ…!」

そうして、ヒナタとぬいぐるみに戻ったレオンは初めて友情の握手を交わした――


戦いの中で何かを見定めていた小さな影に気づくこともなく――

よかったら、感想・レビューなどお気軽にどうぞ♪

お待ちしてます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ