第2話 幻想の世界へ
光を抜けた先、そこには…
「わぁぁぁぁ………!!」
どこまでも広がる緑の平原
果てしなく続く青空
時々、見られる人の集落
地球では、もう見られないような大自然の迫力にヒナタは包まれていた
――空気が透き通って…あれ?空から何か声が聞こえたような…
「何をしている…いくぞ…小僧」
「あれ?レオンの声も…どこ行ったんだろう…」
ヒナタはきょろきょろ周りを見る
「下だ…下を見ろ」
「下って…わぁ!」
そこには
「ぬいぐるみに戻ってる!喋ってる!?さっきのも良かったけど、やっぱ可愛いのもいいよねぇ!!」
そうして、ぬいぐるみのレオンに頬ずりするヒナタ
「こら…やめんか…小僧」
「とりあえず、近場の集落へ向かうぞ」
「集落って…さっき見えたあそこかな」
先ほどの景色を思い出すヒナタ
レオンはぬいぐるみ姿でとてとて歩き出すレオン
「地面に足つけちゃ汚れちゃうって!」
「俺を誰だと思っている?汚れ程度、浄化の炎で消し飛ばせるわ」
そうレオンが言ったとき、電流が走ったかのように思い出すヒナタ
「そうだ!魔法!って僕も使えるの?」
「使えるはずだ…何か武器を念じてみろ」
「武器か…武器、武器………」
そうして思い浮かべる
だが、邪念が入り…
――それにしても熱い…レオンと一緒だからかなぁ…まあ嬉しさが勝つからいいけど…
すると
シュイン!!
「出た!………ってなにこれ?」
「それは…鉄扇…心得があるのか?」
レオンはそう問うが
「いや…なんか熱いなって思ったら扇ぐものが欲しくて…それで…」
そうして扇ぎ出すヒナタ
「………………」
レオンは開いた口が塞がらない
それを見て気まずくなったヒナタ
「ほら、やり直せば…」
そうすると、瞬く間に鉄扇が光となって消える
「武器…武器…そうだ!剣で!」
そういうヒナタだったが
シュイン!!
光と共に現れたのは
「また…鉄扇ってやつ?」
「一度、錬成の儀を終えてしまえば、一から変化させることはもうできない…まったく…」
レオンは呆れている
「まあいい…一応、れっきとした武器だ…かなり扱いが難しいが…」
――しかし、本来、錬成の儀は邪念が入ろうが、本人に適性のあるものしか出ない…どういうことだ…?
レオンがそう疑問を抱えていると
「それで!?出し入れはできるけど、魔法ってどう使うの!?」
「今の小僧には、"心力"が足りん。魔法を起こすほどの量はない」
「"心力"……?」
ヒナタは聞き慣れない言葉に首を傾げる
「心の力とも言う…理性で己が心の高ぶりをコントロールし、それを力として放つ…訓練すれば、心力を規定量まで増やし、小僧も使えるようになる…」
「そっか…これからってことだね…」
そういって鉄扇をくるくるジャグラーのように投げて遊ぶヒナタ
「思いのほか手馴れているな」
「こういう芸を磨いてた時期もあったからね」
♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「着いた!って」
グゥ~
「おなかすいた…お金ないよ、どうしよう」
「自分で何とかしろ…俺にできることは、この世界の指南だけだ…」
レオンはそう突っぱねる
「そんなぁ…」
そう言っていると、村の市場に顔を出す
「おう、坊主!よかったら買ってくかい?」
気前のいいおじさんが声をかけてくれた
「あの…実はお金がなくて…仕事をしたいんですけど…どうすればいいですかね…」
恐る恐るヒナタは尋ねると
「あぁ…なるほど…さては、坊主…戦争で住む場所追われた難民ってとこか…」
「戦争…?」
ヒナタはそう尋ねると
「ああ、みなまで言うな!ほれ!もってけ!」
「わっ…!」
そこには大きな袋があり、硬そうなパンや干した魚、野菜などがあった
「そんな…こんなにもらえないですよ!」
申し訳なくなり、返そうとするヒナタだが
「いいってことよ!困ったときは、助け合いだ!こんな世の中だからこそ…支え合って生きていかねえと…」
おじさんは神妙な顔をする
「あの…!何か僕でも…この村のためにできるようなことありますか?」
「おお…坊主!今どきのよそもんにしちゃ、随分気骨があるじゃねえか!」
ぽんぽん、とヒナタの背を叩くおじさん
「それなら…村の寄り合い所を訪ねてみるといい…冒険者資格がなくても、受けられる仕事があるはずだ」
「うん!おじさん!親切にありがとう!今度、お返し持ってくるね!」
「あいよ!あと、余計な気回さんでいい!」
おじさんは、手を振るヒナタを笑顔で見送ってくれた
♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢
村の寄り合い所では
「はい、こちらエルム村の寄り合い所です」
「本日、受注可能な依頼は掲示板をご覧ください」
受付の村娘が案内してくれた
「ありがとうございます!あんまり戦うの得意じゃないんですけど、できそうなものってあります?」
「それなら、薬草採取などはいかがでしょう?実物もお渡ししますので、見間違えることもないかと…」
村娘はそう説明する
「じゃあそれで!ありがとう!」
「依頼達成に向けて、頑張ってください!」
そうして、一度村を出て、採取ポイントへ向かうヒナタたち
「なんとかなったようだな、小僧」
「あ~レオン!右も左もわからないのにほっとくなんてひどいよ~」
「それも、試練だとおもえ。一人で生きていく力がなければ、到底、小僧一人で使命を果たすことなどできん」
レオンはそう言ってそそくさ先へ向かってしまう
「一人…ね」
「一人で生きる術を身に着けるのは大事だと思うけど、一人だけじゃ、きっと使命は果たせないよ…」
ヒナタはそう小声でつぶやいた
♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「よし!採取終わり!……ってもう夕方かぁ~」
おじさんに分けてもらった食料を食べて昼食を済ませたのち、元気よく採取活動を行った
その帰り道に
「止まれ!」
レオンが大きな声を出す
そこには
「モンスター?…それに、あれは人…!」
モンスターと人が戦っているところだった
四人でうまく連携し合い、モンスターの群れをバッタバッタとなぎ倒していく
「すごい…あれが」
「冒険者だな…モンスターを倒し、生計を立てる職だ」
レオンは草木の影に隠れながら説明する
「奴らの動きをよく見ておけ、特に回避は重点的にな」
「なんで回避を…?」
「小僧に戦う力はない…戦いのときは『俺』を呼び出して戦うことになる」
呼び出すという言葉の意味が理解できなかったヒナタ
「レオンはそこにいるでしょ?」
「こんな姿で戦えると思うか?この姿は先代も経験した戒めの姿。より力を出せる姿に"顕現"させねば戦えん」
どうやら普段のレオンは力をほとんど出し切れていないらしい
「その"顕現"はできるの?」
「その鉄扇と小僧の心力をすべて使えば…一日三分程度は顕現できるだろう…」
――それも今後成長していけば……の話だがな…
レオンはあくまでヒナタには期待していなかった
「たった三分!?それだけしか戦えないの!?」
「それだけ、小僧の心力が脆弱なのだ。俺を呼び出せるだけありがたいと思え」
呆れた表情でヒナタを見るレオン
「なるほどね…だから、僕はひたすら回避に専念しろと…」
「足を引っ張られたら、たまらんからな」
そうヒナタを侮った目で見るレオン
「うん…わかった…イメージトレーニングしとかないと…」
「小僧にはプライドというものがないのか…これだから、か弱い人間は…」
煽りが通じず、レオンは皮肉を言った
「必要なことでしょ?それとも、何も考えずに前に出たほうがいい?」
「馬鹿を言うな、俺と小僧は魂が繋がっている。小僧が死ねば、俺も消えるんだ。それでは、宿願が果たせん…」
「宿願って…使命以外に何か目的があるの?」
「………」
レオンは黙り込む
「…小僧には関係のないことだ」
冷たくレオンはそういった
「あっ!何か新しいやつが!」
回避行動を観察していたヒナタがレオンに声をかける
「あれは…ドラゴンだな」
人間の三倍ほどの大きさをしたドラゴンだった
「まだ若い…生後百年といったところか…」
「百年で若いんだ…ドラゴンって」
そうヒナタは衝撃を受けていると
「でも、若いなら…あの人たち…勝てるの…?」
「いや、まず勝てんな。逃げることすら叶わんだろう」
「そんな…」
ヒナタの顔に焦りが浮かび始める
「ドラゴンは百年の若さでも、達人たちが徒党を組んで撃退がせいぜいだ…」
「所詮、力の無い人間ごときに勝てる相手ではない」
「………」
そう言っているうちにドラゴンが辺りのモンスターを蹴散らしていく
そして、その手は冒険者たちにまで伸びようとしていた
「ヲォォォォォォォォォォォォォ!!!」
ドラゴンが雄たけびをあげると、冒険者たちは怯んで腰を抜かしてしまう
カラン!
「あっ…剣が…」
剣を落としてしまう冒険者の女性
「レイさん危ないです!ここは私が…!」
一人の少女が囮になろうとする
「へっ…へへっ…俺はこんなところじゃ死ねねえ…あばよ!」
ドシン!!
「きゃっ!」
「悪く思うなよ!ルナ!」
なんと、その少女をドラゴンのほうへ蹴り飛ばした
ルナと呼ばれた少女は頭を打ち、気を失ってしまった
「あいつ…生きて帰っても重罪だぞ…レイ!ルナを助けるぞ!」
「あなた!でも、ドラゴンになんて…」
レイと呼ばれた女性からは怯えが見えて取れた
「それでもやるんだ!若い命を見捨てて、生きて帰っては…俺たちは冒険者…いや、親失格だ!」
「そうね…ごめんなさい…アル…エル…わたしも…覚悟…決めたわ…」
意を決し、前に出る二人
「やぁぁぁぁ!!」
その男性がドラゴンに先手を仕掛ける
一瞬、ドラゴンが怯んだ
その隙に、レイと呼ばれた女性がルナを救い出す
だが
「ヲォォォォォォォォォォォォォ!!!」
「ぐはぁ…」
長い尻尾で男性を薙ぎ払った
木に叩きつけられ、男性は動けない
「あなた!?待ってて!いま!」
「ダメだ!早く…その子を連れて…」
今にもドラゴンはその男性を喰らおうとする
それを見ていたヒナタたちは
「助けなきゃ…」
「無駄だ、戦えん小僧が行っても、奴の腹の肥しが増えるだけ…」
「僕に戦う力が無かったとしても…あの人たちを見捨てる理由にはならない…!」
ヒナタが叫んだその言葉が辺り全体に響いた
そして、一瞬の迷いも見せず、駆け出す
「待て!正気か!?小僧!」
「えぇぇぇぇぇぇい!!」
その鉄扇を鈍器のように構え、ドラゴンの頭に振りかぶった!
――力のない小僧が…なぜ無駄に命を散らそうとする…!?
レオンは、弱者であるにもかかわらず、身を挺して別の弱き者を守ろうとするその心が理解できなかったーー
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