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第1話 少年とぬいぐるみ

幻想世界

孤独でも愛するぬいぐるみたちと祖父の言葉に心を支えられてきた少年ヒナタ

彼は元の現実から、ぬいぐるみであるレオンに導かれて、この地に降り立った

全ては、幻想世界を救うため…

様々な思惑が入り乱れる中、少年の心が世界を照らし出す――

それは、少年のたった一人の家族…祖父との思い出

彼の心を奮い立たせる…大切な思い出


「陽向…お前は本当にいい子じゃのう…」

「その優しさを…どうか忘れないでおくれ…」

祖父はそう僕の頭を撫でる


「でも…みんな…僕のこと…気味が悪いって…疫病神だって…」

少年は泣いている


「皆…怖いんじゃ…おおと、陽向が、ではないぞ」

「わからないものが怖い…怖いから傷つけ、遠ざける…」

「じゃが、陽向は人の心の光を信じられる子じゃ…」

「その優しさと、逃げずに立ち向かう勇気があれば…いつか手は届く…」

「そして…それは絆を結び…周り周ってお主を救うじゃろう…それを、忘れんでおくれ…」

祖父は微笑む


「でも…寂しいよ…じいちゃん…」

少年は俯く


「ほれ…これをやろう…」

そして、祖父から三つのぬいぐるみが渡される


「あっ!これ!僕が好きなやつ!」

「本物と見比べてずっと作っておったのじゃ…わしのお手製じゃから、少し丈夫じゃぞ!」

得意げに祖父は語る


「うん!ありがとう!じいちゃん!大切にするね!」

少年は涙を拭いて、笑顔で微笑んだ


「大丈夫じゃ…何があっても諦めぬその心があれば、陽向は一人ではない…」

祖父は、陽向を託された日を思い出し、救いの言葉をかける

遠い…遠い…先を見つめながら…


それを見た少年の胸は何故かざわついた――


それから、少年はたった一人の家族を失い、孤独となる


だが、彼には祖父の残した心の支えがあった――



♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢



数年後、十五歳になった春

友人ができないことに悩み、ため息をつく少年


少年は自分の家に帰宅する

亡き祖父が残してくれた遺産である平地の一軒家

家に入り、自分の部屋へ向かった


そこには…


少年の大好きなキャラクターのぬいぐるみたちがいた


炎をイメージした勇ましい獅子

風をイメージした凛とした鶴

水をイメージした渋さのある亀

それぞれがデフォルメされたようなデザインだった


「ただいま!レオン、クレア、トータ!」


そう呼びかけた瞬間、ほんの一瞬だけ

誰かに見られている気がした


いつものように、今日の出来事を語り、ぬいぐるみを優しく抱く少年

そうしているうちに日が暮れたので、一日を終える準備をする

その日、少年は幻想の世界へ誘われた



♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢



「……きろ…」


――ん…?誰か…呼んでる…?


「…起きろ…小僧」


――なんか暖かい…いや、熱い…?

――息苦しい…汗が…


「起きないか!小僧!」

「わっ!」

大きな声で目を覚ます少年


少年が顔を上げた先には


「……………」

少年は言葉を失っている


「どうした?俺が勇ましくて声も出ないか?」

尊大な態度で少年に語りかける声


その声の主は


「レオンだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


灼熱を纏い、勇猛な刃を含むたてがみをもった雄々しくも美しい獅子だった

少年は即座に飛びつき、そのたてがみに顔を埋める


「小僧…貴様、死にたいのか?」

レオンと呼ばれた獅子が少年を睨みつける


「なんで!?レオンが喋ってる!なんかぬいぐるみよりもかっこいいし!」

そんなレオンに目もくれず、大興奮する少年


「そうか…かっこいいか…人間にしてはよい審美眼を持っているな」

かっこいいと言われ、満更でもない獅子


「俺は…炎の神獣…いや…」

「そんなことはいい…貴様には使命がある…」

「夢の世界にしては…妙にリアルだよね」

少年は周りをきょろきょろし始めた


「これは夢の世界ではない…紛うことなき、現実だ」

「え…?またまた~…現実にレオンがいるわけ…」

少年はそれを否定しようとするが


「あれを見ろ」

「僕の家だね…ってだんだん離れて行ってるけど!どこいくの!?」

「見ればわかる…」


それとは反対に雄大な大地と海…緑に囲まれた世界に誘われていく

そこには、人とモンスターが住まい、少年の世界とは何もかも違って見えた


「小僧は…この幻想世界を救わねばならん…」

――我々が再びかの地に顕現するため…神獣の世を取り戻すため…

そう心に念じる獅子


少年の目には雄大な光景だけでなく、凄惨な光景も映し出された

血の染みた大地

折れた玩具

雨水に濡れ、廃墟と化す村

焼け落ちた家の前

子どもの焼けこげた靴が無造作に転がり落ちている

雄大な景色の足元に、守れなかった命の重さが沈んでいた


「……っ!」

少年は思わず息を呑む


「レオンみたいな生き物がいっぱいいる世界なの…?」

「俺たちはすでに幻想世界にはいない…幻想世界に俺たちを顕現させられるのは選ばれた小僧のみだ」

少年の問いに獅子が答えた


「僕…?なんで僕が…?」

少年は首を傾げている


――こんな小僧に照らせるというのか…日々、命が消えゆく…あの世界を…

――あの方たちは一体何を考えている…

獅子はそう思考を巡らせる


「小僧が知る必要はない…貴様は貴様に課せられた使命を果たせ」

獅子はいきなり重責を背負わせようとした


「うん…いいよ…」

「少しは悩まないのか…?」


少年は孤独な過去を思い浮かべて、獅子に向き直る


「僕は…君たちに、ずっと救われてきた…」

「僕がこうしていられるのは、じいちゃんの教えと君たちの温かさがあったから…」


少年は離れゆく大好きなぬいぐるみたちを見やる

――レオン…クレア…トータ…じいちゃん…今までありがとう…

心の中で今までの感謝と別れを告げ、決意する――


「それに…もう…見ちゃったから…」

先ほどの凄惨な光景が目に浮かぶ


「この世界の人たちのために…レオンたちのために…僕にできることがあるんでしょ?」

「なら、迷う必要ないと思ってさ」

ヒナタの目は真剣だった


「………奇妙な人間だ」

獅子は再び少年へ目を向ける


「それで…そのレオンとはなんだ?」

「え?レオンはレオン…君のことだよ?」

目を顰める獅子


「小僧…よほど死にたいらしいな…使命を終えたら覚悟しておくがいい」

「よろしくね!それと、僕は小僧じゃないよ!僕の名前は…」


「僕の名前は、陽向ヒナタ!」


元気よく、少年は名乗った


「弱そうな名前だ…気品も感じない」

「それでは行くぞ、小僧」

「あ、待ってよ!レオン!」

レオンに急いでついていき、光の中へ消えるヒナタ

彼に続き、大切にしていたぬいぐるみたちも光は消えていく


ヒナタは、思い出を胸に新たな世界へ飛び込む


レオンと呼ばれた獅子は、ヒナタの背を見て誓いを立てる

――この小僧を利用し、我が宿願を果たす…待っていろ…同志たちよ…


二人の相反する心は、幻想を駆け抜ける冒険の始まりに溶けていった――

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