14話 ラジオ
白いセダンの中に、沈黙が落ちていた。
三人とも、何も言えないまま前を見ている。
エンジン音だけが、やけに大きく聞こえた。
どれくらい走ったのか、誰にも分からない。
智和がおもむろにラジオをつけた。
『ニュースを続けます。
東京の各地で発生しているデモの勢いは増す一方です。
あ、今、現場から中継が繋がっています。
本田さん?
どのような状況ですか?』
『放送席、放送席、こ、こちら、国会前より現場中継です!
ものすごい数のデモです!
暴徒と化した市民達と警察隊との凄まじい衝突が続いています!
一向に収まる気配がありません!』
『本田さん、こちら放送席、
デモを行っている市民の目的は?
暴徒達はなぜ暴れているのでしょうか?』
『分かりません、この騒ぎの原因は全く不明です!
警察官が必死に鎮静し落ち着くよう呼びかけていますが、暴徒と化したデモ参加者とは話し合いが全く通じません!
あ、まずい、こちらにも暴徒がやってきます!
まずい!来る!来る!』
『本田さん、こちら放送席、どうしました? 大丈夫ですか?』
『やばい!逃げろ、カメラを捨てろ!
うわっ、来るな、離せ、やめろ……ああああああ!
うわああああっ!』
ザーっという雑音がラジオから流れた。
『本田さん?本田さん!
…えー、映像も音声も乱れています!
一旦中継を中断し…』
琴美が耳を塞いで目を強く閉じている。
智和がラジオを止めた。
「一体何がどうなっているんだ?」
拓真が誰に言うわけでもなく呟いた。
車内が沈黙する。
その重い沈黙の空気を切り裂くように、拓真のスマートフォンから着信音が鳴った。
拓真は画面に表示された名前を見た。見覚えのある部下の名前だった。




