表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/66

第六十四話

 動きが止まった三人だが、俺がマジックバッグからお皿、包丁、まな板を取り出し、桃を綺麗に切り分け始めると一気に再起動した。

 そして、最後にナイフとフォークを取り出して並べ、切り分けられた桃が乗った皿が目の前に置く。

 三人は切り分けられた桃を真剣な表情でジッと見つめ、静かにゆっくりとナイフとフォークを手に取り、綺麗なテーブルマナーで桃を一口食べる。

 感動なのか美味しいからなのか分からないが、三人は体を震わせて何も言わない。

 そのまま次の一口、また一口と、無言だが満面の笑みを浮かべながら桃を食べていく。

 その姿は、母さんや叔母さんたちが桃を食べる時とそっくりだ。

 ゆっくりじっくりと桃を楽しみ終わった三人は、長く深く息を吐く。その姿から、若返りの桃を十二分に堪能したのが良く分かる。

 そして、桃を楽しみ終わった三人の肌艶が、心なしか良くなっているように見える。


「流石は、桃の中でも最高位に位置する若返りの桃。効能を抜きに考えても、味もさることながら香りに瑞々しさなど、果物としても最高級なのは間違いありません」


 アンナ公爵夫人がニッコリと微笑みながらそう言うと、イザベラ嬢とクララ嬢もニコニコしながら同意する。


「形も大きくて、しっかりと甘いのも素晴らしいです」

「それに皮まで美味しいなんて、もう普通の桃では満足できません」


 クララ嬢のその言葉に、アンナ公爵夫人とイザベラ嬢はウンウンと頷く。

 三人共ご満悦のようで、食べ始めてからずっと笑みを浮かべたままだ。


「皆さん味見の結果はどうでしたか?これなら、マルグリット嬢に喜んでもらえますかね?」


 俺がそう聞くと、三人共間違いないと答えていく。


「ええ、絶対に喜ばれるでしょう」

「マルグリット様が喜ぶ姿が目に浮かぶわ」

「そうね。マルグリット様も女性だから、この桃を贈られたら嬉しいでしょうね」

「では、この若返りの桃を使って、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「「「!?」」」


 俺が口にした言葉に、三人共衝撃を受けたように固まってしまう。

 しかし、流石は経験豊富な公爵夫人。すぐに我に返り、俺の発言から様々な事を脳内で想定し、今後の動きを色々考え始めていく。

 アンナ公爵夫人に遅れる事数十秒、イザベラ嬢もクララ嬢も我に返り、アンナ公爵夫人と同じように色々と考えを巡らせ始める。

 アンナ公爵夫人とイザベラ嬢たちでは、交渉する相手の年齢に差はあるだろうが、それでも同じ女性である事に違いはない。

 そして、桃が持つ暴力的なまでの魅惑の力には、余程強靭な意志を持つ者以外抗えないだろう。

 極論を言えば、桃を上手く使って立ち回れば、この国の全ての女性を味方に引き入れる事が出来るという事だ。


「……所属する派閥の関係で、絶対に味方にはならないという人たちがいるけれど、中立を維持している人たちとは協力関係を結べるかもしれないわね」


 アンナ公爵夫人がそう言うと、イザベラ嬢とクララ嬢もそれに続く。


「私たちの方も、どこの派閥にも属していない中立の女子生徒たちと協力関係を結べると思う」

「それから、ここ最近のマルグリット様とナタリーさんの様子を見て、考えを改めた子たちにも効果があるかもしれないわね」

「という事は、この桃は食べ物としても政治的に考えても、十分利用価値があるという事でよろしいですか?」


 俺がそう問いかけると、アンナ公爵夫人が真剣な表情と雰囲気となり、カノッサ公爵家を支える夫人として答える。


「どちらの意味であっても、間違いなく価値があると断言していいわ。マルグリットとナタリーを守るのに、これ以上ないほどの武器よ」


 社交界の頂点の一角に君臨し、海千山千(うみせんやません)の貴族や商人たちと渡り合ってきたアンナ公爵夫人の太鼓判に、俺はよかったと安堵し笑みを浮かべた。

ブックマーク、評価お願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ