第六十一話
アンナ公爵夫人に鋭い視線で見られたイザベラ嬢とクララ嬢は、その迫力に気圧されながらも、アンナ公爵夫人をここに呼ぶに至った経緯を説明していく。
マルグリット嬢の誕生日の話から、俺がその誕生日になにを贈ろうか悩んでいるという話をすると、アンナ公爵夫人の顔が微笑ましいといった表情に変わる。
アンナ公爵夫人は、マルグリット嬢とナタリー嬢をとても気に入ってるからな。
しかし、すぐに真剣な表情に戻り、イザベラ嬢に続きを促す。
続きを促されたイザベラ嬢は、俺が誕生日の贈り物で候補が一つあると言い、それが本当に喜ばれるのかどうかを確認してほしいとお願いし、若返りの桃を取り出して机に置いたという一連の流れを語った。
アンナ公爵夫人は、桃がどこかへ消え去らないように両手でガッシリと掴みながら、ジッと俺を見続けている。
その視線はギラついていて、獲物を狙う肉食獣のようで怖くてたまらない。
「……話は理解したわ」
アンナ公爵夫人はそう言って、桃を掴んだまま紅茶を一口飲み、精神を落ち着かせる。
そして、いつものデキる女性に戻ったアンナ公爵夫人が、桃を大事に持ちながら口を開く。
「ウォルターさんの質問に答えましょう。この桃が誕生日の贈り物で喜ばれるかという質問でしたが、マルグリットのみならず、この国に生きる全ての女性が喜ぶ贈り物である事は間違いありません」
アンナ公爵夫人がそう断言すると、イザベラ嬢もクララ嬢もその通りと頷いて同意する。
「そ、そうですか。良かったです。でしたら、マルグリット嬢への贈り物はこれに……」
俺がホッと胸を撫で下ろしながらそう言うと、アンナ公爵夫人が待ったをかけた。
「それは少し待ちなさい」
「ですが、これ以外となると……」
アンナ公爵夫人は分かっていますと微笑んだ後、若返りの桃がどういったものであるのかというのを教えてくれる。
「若返りの桃は、非常に貴重な果実なの。市場に出たのも、正式な記録によれば七十年前が最後。それも、たったの一つだけ。その貴重な若返りの桃を食べた事が周囲に露見すれば、確実に厄介事がマルグリットに降りかかるわ」
「そこまでなのですか?」
俺がそう聞くと、アンナ公爵夫人がそうよと頷く。
イザベラ嬢とクララ嬢も、間違いないとばかりにウンウンと頷いている。
「若返りの桃を食べると、肌艶がきめ細やかになり、身体の不調も立ち所に良くなると言われている。でも、それはあくまでも噂。マルグリットが若返りの桃を食べた時、どんな変化が身体に起きるか分からない。だから、これに関しては慎重にならなきゃいけないわ」
アンナ公爵夫人が説明してくれた桃の効能を聞き、俺は桃を食べ始めてからの母さんや叔母さんたちの変化を思い出す。
確かに、桃を食べ始めてから母さんや叔母さんたちの肌艶が良くなっていき、病気も大分減ったような気がする。
俺はなるほどと納得し、そういう事だったのかと呟く。
「だから母さんや叔母さんたちは……」
その呟きは、三人の耳にもしっかりと聞こえていた。
「「「!!」」」
俺の呟きを聞き取った三人の表情が劇的に変わり、もの凄く恐ろしい表情へと変わる。
そして、三人は椅子から立ち上がり、勢いよく俺に詰め寄ってきた。
「「「それは一体どういう事なのか、しっかりと説明してください」」」
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