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第五十八話

 ジャンやマークたちと共にダンジョンに潜り、実戦訓練を行ってから三日が経った。

 俺はカノッサ公爵家の屋敷を訪れ、イザベラ嬢たちと情報共有をしている。

 イザベラ嬢たちは順調に計画を進めているようで、イザベラ嬢をトップとした派閥は大きくなっているそうだ。


「学院内にもそれなりの影響力を与えられるほどには、私たちの派閥も力を増してきました」


 イザベラ嬢がそう言うと、クララ嬢がやる気を漲らせながら続く。


「ここからは、魔法学院への影響力をさらに高めつつ、社交界の方にも影響力を高めていこうと考えているの」

「まだ計画の第一段階が終わったばかりなのに、急速に勢力を拡大させていて凄いです」


 しかし、クララ嬢はまだまだであると首を横に振る。


「この国のトップたちと真正面から殴り合うとしたら、まだまだ力も影響力も弱いわ」


 現状イザベル嬢たちの派閥の影響力や力は、慕ってくれている女子生徒たちにしか通用しない状態との事。

 女子生徒たちのご両親が協力してくれるのは、イザベラ嬢たちの派閥の影響力や力というよりも、イザベラ嬢のご両親であるカノッサ公爵やアンナ公爵夫人の影響力の方が大きい。

 これについては、親と子の世代の違いもあり仕方のない事でもある。

 ベイルトンの実家でも、俺の事を甥っ子のように可愛がる親父の部下たちも、親父とは仕える主と部下という関係性を崩す事は無い。

 まあ、私的な場では仲の良い友人として、親父と肩を組んで酒を酌み交わすオジサンたちだが。

 女子生徒たちのご両親と、カノッサ公爵たちが同じような関係なのかは分からないが、仕える主と部下といったような関係なのは間違いはないだろう。


(計画についての情報共有も大事だが、俺個人にとって最も大事な情報についても共有しておきたい)


 イザベラ嬢へ密かにアイコンタクトを送り、内密で話がしたいと身振りでそっと伝える。

 アイコンタクトを受けたイザベラ嬢は、即座に俺がなにかに困っているという事を察し、スススッと傍に近づいてきてくれた。


「ウォルターさん、何かお困りごとですか?」


 イザベラ嬢は周りに聞こえないように、小さい声で俺に話しかけてきてくれた。

 そんなイザベラ嬢に、俺は恥ずかしがらず素直に聞いてみる。


「ジャンやマークから聞いたんですが、マルグリット嬢の誕生日が近いそうですね」


 あの時の俺と同じように、イザベラ嬢がなにを言っているですか?という表情になった。

 そして、イザベラ嬢はなにかに気付き、もしかしてといった様子で言う。


「……マルグリット様の誕生日がいつなのか、ご存じではなかったんですか?」

「…………そうです。ジャンから聞いて驚きました」


 俺がそう告げると、イザベラ嬢が呆れの混じった視線でこちらを見てくる。

 そのイザベラ嬢の視線に、記念日を忘れているのを咎める恋人の怒りのようなものを感じて、申し訳ない気持ちになってしまう。

 確認不足でごめんなさいと心の中で謝っていると、イザベラ嬢が仕方ないなという表情を浮かべる。


「私たちが伝え忘れていたのも悪いんですから、そんな顔しないでください。ほら、なにかお聞きになりたい事があるんですよね?」


 イザベラ嬢にそう言われ、俺は気を取り直して内緒話に集中する。


「お恥ずかしながら、家族以外の女性に誕生日祝いを贈った事が一度もなくてですね。一応候補はあるんですが、本当に喜んでもらえるのか分からないんです。なので、相談に乗ってもらえればと思いまして」


 恥ずかしさから少し照れながらお願いすると、イザベラ嬢がニヤリと笑って頷いた。


「なるほど、そう言う事ですか。分かりました。私たちで良ければ喜んでお力になります」

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