表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/66

第五十七話

 再び生み出された騒がしい混沌の戦場での戦いは、正しく激闘であったと言えるだろう。

 分厚い脂肪という、天然の防具を持つオークたちは非常に防御力が高い。そして、なによりも非常にタフである。

 何度切りつけようと、何度貫こうと、一撃二撃程度では地に倒れる事はない。

 それこそ、一撃で倒したいのなら心臓を一突きで貫くか、首を一撃で切り落とすしかないのだ。

 オークはその高い防御力とタフさから、魔物の中でも上位にあたるほど厄介であり、上を目指す者たちにとって一つの登竜門となっている。

 そんな登竜門であるオーク十体を連携力で圧倒し、大きな怪我をする事なく倒せた。


「ウォルター、落ちてる素材の中に睾丸とか貴重なものはあったか?」


 ジャンにそう聞かれるが、今の所そういったレアな素材は見かけていない。

 俺はジャンに向かって首を横に振り、一つも見ていないと答える。


「いや、今の所一つも見てない。基本的には肉ばっかりだ。ダンジョンだから、それもしょうがないけどな」

「まあ、そうだな」


 ダンジョン外でオークを倒していたら、一体分丸ごと素材が取れた。

 しかし、ダンジョンで魔物を倒した場合は違う。

 ドロップアイテムはその魔物に関連したものであり、且つドロップするアイテムの数も質もランダムだ。

 ダンジョンでオークを倒すと、基本的には肉しか落とさないのは、この世界の常識と言っていい。

 オークは一体倒すだけで、肉を始めとした様々な素材を得る事が出来る魔物。

 その中でも特に価値が高いのが、オークの睾丸(こうがん)だ。

 オークの睾丸を使って作る精力剤は効能が高く、貴族御用達と言ってもよいほどに高く売れる。

 そのため、地上やダンジョンでオークを見かけたら、積極的に倒した方が良いとまで言われているのだ。


(一つだけでもいいから、レアドロップがあるといいんだけどな)


 そんな淡い希望を抱きながら、せっせとドロップアイテム回収していると、大きな歓声が聞こえてきた。


「ウォルター!!睾丸が出たみたいだぞ!!」


 様子を見に行ったジャンが、喜びの笑みを浮かべながらそう言った。


「流石は階層主。一体からは出してくれたか」


 一体分だけとはいえ、睾丸がドロップした事を皆で喜び合う。


「今回は運が良かったな。肉だけでもいいんだが、やっぱり睾丸が出ると大分違うからな」


 俺がそう言うと、マークが確かになと答える。


「知り合いの冒険者にも、オークを大量に倒して結構な額を稼いだって人もいたよ」


 そんな会話をしながらもせっせと手を動かし、ドロップアイテムを全て拾い終えた俺たちは、安全地帯となった階層主の部屋で身体を休める事になった。

 基本的に、階層主を倒した後の部屋に魔物が出現する事はない。なので、部屋で一休みしてから次の階層へ降りていくのが一般的だ。

 階層主の部屋でゆっくりと身体を休め、ジャンやマークと談笑していると、ジャンが唐突に一つの話題を振ってきた。


「そういやウォルター、もうすぐマルグリット嬢の誕生日だが、贈り物はちゃんと用意してあるよな?」

「…………え?」


 ジャンの言葉を脳が理解出来ず、かなりの間を開けてから一言を絞り出す。

 すると、話題を振ってきたジャンだけでなくマークまで、おいおい嘘だろうという表情になる。

 そして、マークが恐る恐る俺に聞いてきた。


「……まさかとは思うが、知らなかったのか?」

「…………全く」


 イザベラ嬢からもクララ嬢からも、そういった話は聞いていない。

 呆然としてしまう俺を見て、ジャンとマークが仕方ないとフォローしてくれる。


「まあ、俺もマリーからの情報でその事を知ったから、ウォルターにそこまで何か言える立場じゃないけどな」

「俺もそうだ。ソレーヌから教えられて、マルグリット嬢の誕生日が近い事を知ったんだ」

「イザベル嬢やクララ嬢から、誕生日についてなにか聞かされていなかったのか?」


 ジャンの問いかけに、今までの休日の事を頭の中で振り返っていく。

 しかし、俺が記憶している限りでは、マルグリット嬢の誕生日についてなにか言われた事はない。

 なので、一つ考えられるとしたら……


「多分だが、次の休日に知らせるつもりだったのかもしれん。……誕生日までまだ日はあるのか?」


 俺がそう聞くと、マークが時間はあると頷いて答える。


「ああ、まだ日はある。かと言って、そんなに遠くでもないぞ」


 ジャンとマークが、マルグリット嬢の誕生日がいつなのかを教えてくれる。

 確かに直近でもないが、遠い日でもなかった。次の休日に教わっても、贈り物を選ぶ時間は充分なくらいには余裕がある。

 だが、家族以外の女性への贈り物を考えるのは、今世では初めての事。

 うちの家族の女性陣には、毎年魔境に実っている果実を贈り物としていた。その果実を女性陣はもの凄く喜んでいたので、毎年なにも考える事なくその果実を贈るだけでよかった。

 しかし、今回は同年代のマルグリット嬢への贈り物。

 うちの家族の女性陣には高評価な贈り物が、マルグリット嬢にも喜ばれる贈り物とは限らない。

 その辺の事を、次の休日にイザベラ嬢たちと会った時に相談してみよう。

ブックマーク、評価お願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ