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第三十二話

 屋敷に到着したジャンとマークたちを出迎えるため、イザベラ嬢の部屋から出て玄関へと向かう。

 今日も今日とて、影の者たちが目を光らせカノッサ公爵家の屋敷を守っている。

 そんな影の者たちの視線を時折感じながらも歩き続け、ジャンとマークたちが待つ屋敷の玄関に到着した。

 そして、俺が初めてこの屋敷を訪れた時と同じように、イザベラ嬢とクララ嬢が大きな両開きの玄関扉を開いて歓迎し、ジャンとマークたちを屋敷の中に招き入れた。

 ジャンやマークは勿論の事、マリー嬢やソレーヌ嬢も緊張しているのが見て分かる。

 マリー嬢もソレーヌ嬢も魔法学院の生徒ではあるが、イザベラ嬢たちと直接の面識はないとの事。

 なので、今回の屋敷への訪問がそれぞれ初顔合わせとなる。


「本日はお招きに与り誠に光栄に存じます。私はコルネ侯爵家の長子、ジャン・コルネと申します。私の隣にいるのが、婚約者の――」

「オブライエン家の長女、マリー・オブライエンと申します。本日はお招きに与り誠に光栄に存じます」


 最初にイザベラ嬢に挨拶をしたのは、ジャンとマリー嬢のペア。

 ジャンから惚気話としてマリー嬢の事は色々と聞いているが、直接会うのはこれが初めて。

 マリー嬢は、ワインレッドの髪に同じくワインレッドの瞳の、童顔でつり目の美少女。

 ジャンとマリー嬢が並んで立っていると、華やかな雰囲気が漂っているように感じる。


「本日は、お招きに与り誠に光栄に存じます。私はオランド子爵家の長子、マーク・オランドと申します。私の隣にいるのが、婚約者の――」

「デュブール子爵家の長女、ソレーヌ・デュブールと申します。本日はお招きに与り誠に光栄に存じます」


 ジャンとマリー嬢の次に挨拶をしたのは、マークとソレーヌ嬢のペア。

 マリー嬢と同じく、ソレーヌ嬢の事もマークから惚気話として色々と聞いてはいたものの、直接会うのはこれが初めて。

 ソレーヌ嬢は、ラベンダーの髪にグレーの瞳の、おっとりとした雰囲気のたれ目の美少女。

 対するマークは、ブラウンの髪にブラックの瞳の、優しく柔らかい顔立ちをした女性顔のイケメン。

 マークとソレーヌ嬢が並んで立っていると、のんびり暖かい雰囲気が漂っているように感じる。


(どちらのペアも、お互いの雰囲気がもの凄く合っていて、正しくお似合いのカップルといった感じだな。――正直言ってめちゃくちゃ羨ましい)


 前世でボッチだった俺には、当然の事ながら彼女ができた事はない。

 学校にいたイチャイチャするカップルを見ては、“リア充爆発しろ”と毎回心の中で叫んでいた。

 今世でも十七年間生きてきたが、彼女ができた事は一度もない。

 まあ、今世については仕方のない部分はある。いくら辺境伯家に生まれたとはいえ、領地の近くに魔境があるのでは、貴族の女性としては嫁ぎ先の候補から外したくなる。それ程までに、魔境と言うのは危険な場所だ。

 それに、彼女が欲しいというのも本音だが、早死にしないためにも強くなりたいというのも本音だ。

 乙女ゲームの世界であるようだが、それと同時に剣と魔法のファンタンジーでもあるこの世界では、命があまりにも軽い。

 彼女ができたとしても、自分が弱いままだと彼女を守る事も出来ないし、もしもの時に自分も守れない。自分を守れずに死んだら、彼女を悲しませる事になる。

 目の前の二組のペアを見てもの凄く羨ましい気持ちになるが、いつか現れる彼女を悲しませるくらいなら、簡単に死ぬ事がないくらい強くなることを優先したい。――――だから、早く強くなって俺も彼女を作るんだ‼

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