第二十六話
「男子生徒からの支持を切り捨てる理由はまだあります」
俺がそう続けると、イザベラ嬢たちは真剣な表情と雰囲気に戻る。
「皆さん分かっている事だと思いますが、男というのは単純な生き物です。可愛い女性や綺麗な女性がいれば見惚れますし、そんな素敵な女性たちに微笑まれながら近づかれ、親し気に話しかけられようものなら大抵の男は大喜びします」
「「「「な、なるほど」」」」
一人の男として熱くそう語る俺を見て、イザベラ嬢たちがちょっと引いている。
気にすると悲しくなるので、気にせずそのまま語っていく。
「そして、最悪の場合自分に気があるのではと勘違いを起こし、調子に乗って暴走していきます。また、マルグリット嬢やイザベラ嬢は公爵家のご令嬢でもある事から、そちらの方面でも邪な事を考え出す可能性もあり得ます」
「……殿下と婚約が決まるまでは、そういった輩が婚約を申し込んできた事もありました」
そう答えたマルグリット嬢だけでなく、同じ公爵家のご令嬢であるイザベラ嬢も、その時の事を思い出したのか苦々しい顔をしている。
さらには、クララ嬢やナタリー嬢までもが苦々しい顔をしているが、一体どうしたのだろう?
そんな風に思っていると、クララ嬢とナタリー嬢がなぜ苦々しい顔をしていたのかを教えてくれる。
「この国って、魔法使いを特別視してるでしょ。だから、私やナタリーさんのように爵位の低い貴族家でも、魔力が豊富で属性魔法への適性が高い子が生まれると、色々な面倒事がやってくるのよ。……それを思い出しちゃってね」
「私もクララさんと同じで、小さい時から色々とありました。それを思い出すと少し……」
二人から詳しく話を聞くと、この国は……という思いを抱いてしまう話ばかりであった。
魔力が豊富で属性魔法への適性が高い女の子が生まれると、次代の子供や孫のためにと考える貴族たちが、婚約の話を次から次へと大量に申し込んでくる。
ただ、その申し込みの大半は同じ爵位の貴族からであり、高位貴族から婚約を申し込んでくる事はほとんどない。
クララ嬢やナタリー嬢のご実家は、爵位が男爵とはいえ、結構な力を持っている貴族家だ。その力のお蔭で、大量に申し込まれた婚約を娘可愛さですべて断ってくれたという。
だが、ナタリー嬢に関しては婚約者がいないという事が逆に仇となってしまい、アルベルト殿下や側近たちから付き纏われているのが現状だ。
もしナタリー嬢に婚約者がいれば、このような状況に追い込まれる事はなかった。
心から愛する娘の為にとやった行動が、裏目に出てしまうとは皮肉なものだと思う。
「話を戻します。男という生き物が単純であるという事は、改めて理解していただけたと思います。そして、男子生徒の支持を切り捨てる理由はもう一つあります。それは、女子生徒たちの固い結束のためです」
「固い結束ですか?」
聞き返してくるナタリー嬢に、俺はその通りだと頷いて返す。
「現状、女子生徒たちは暴走しているローラ嬢とアルベルト殿下を否定的に見ています。そんな状況の中で、お二人が男に色目を使い始めたかのような行動を取り始めたら、女子生徒たちの否定的な感情の矛先が一気にお二人へと変わる可能性が高いです。その結果、味方でいてくれた女子生徒たちが、丸ごと敵に変わる事もあり得ます」
イザベラ嬢たちは、今以上に厳しい環境に置かれた二人の姿を思い浮かべ、男子生徒の支持を切り捨てるという俺の意見に納得してくれる。
「もしそうなってしまった場合、私とナタリーさんは完全に周囲から孤立してしまうでしょう」
「ですので、このまま女子生徒の結束を盤石のものとして、殿下たちに対抗する事をお勧めします。淑女たちが本気を出した時の勢いや迫力は、男性にとって恐ろしいものですから」
俺の最後の言葉に対して、イザベラ嬢たちが全身から圧を放ちながらニヤリと笑う。
その圧を感じ、ニヤリとした笑みを見て、イザベラ嬢たちなら問題ないと確信した。
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