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第二十五話

 イザベラ嬢の秘密の作戦会議という言葉に、どんな事をこれから話し合うのかと少しワクワクしてしまう。

 そんな事を考えていたら、イザベラ嬢がこちらに顔を向けて俺を見てくる。

 俺は顔を向けられた事に驚き、なんでこっちを見るんだろうと不思議そうにしていると、イザベラ嬢はにっこりと微笑んで続ける。


「早速で申し訳ないですが、ウォルターさんに聞きたい事があります」

「え、俺ですか?」


 一体なにを聞くつもりなんだろうと困惑と驚きの俺に、クララ嬢が答えを教えてくれる。


「女性の印象について、男性視点からの意見が聞きたいの」

「ああ、そう言う事でしたか」


 現状、マルグリット嬢やナタリー嬢の傍にいる友人は、イザベラ嬢とクララ嬢を含めた若干名の女子生徒だけ。つまり、同性である女性のみという状況なのだ。

 それ以外の女子生徒たちや、魔法学院に在籍する男子生徒たちは、未だにマルグリット嬢にもナタリー嬢にも近寄る事はないとの事。

 そして、アルベルト殿下や側近たちは全員男性だ。なので、同じ男性である俺から意見を聞きたいのだろう。


「男性視点からの意見といっても、俺一人の意見だと全て主観のものになってしまいますが……」


 俺は今後の事を心配してそう言うが、イザベラ嬢とクララ嬢は「それはそれで、私たちにとっても二人にとっても役立つ情報だから」と、ニヤリと笑ってよく分からない事を言う。

 相も変わらず分からないままだが、イザベラ嬢とクララ嬢がそう言うならと、無理やり自分を納得させた。


「では、男性は女性のどのような行動や仕草を、好意的に見るのか教えてくれますか?」


 イザベラ嬢からの問いかけに、変にカッコつける事をせずに、素直に俺が好ましいと思えるものを口にする。


「う~んと、そうですね。まず簡単な例えを一つ出すとするなら、挨拶をするかしないかですかね」

「挨拶、ですか?」


 マルグリット嬢が、不思議そうにしながら問いかけてくる。

 ナタリー嬢の方も同様で、どういう意味なのかという表情をしている。

 イザベラ嬢とクララ嬢は、俺の言いたい事を理解してくれているようで、それはそうねといった様子。

 俺はマルグリット嬢とナタリー嬢に、「少し長くなりますが、最後まで聞いてください」と言い、挨拶をするということに関する個人的な考えを話していく。


「自分と同じクラスに、皆さんのような可愛らしい女性や綺麗な女性がいるとします」

「「「「…………」」」」


 皆は恥ずかしそうに頬を染めるが、事実なのでそのまま話を続けていく。


「そういった女性たちが、笑顔を浮かべて教室に入って友達と挨拶を交わすのと、真顔で教室に入って誰とも言葉を交わさずに席に着くのでは、大分その女性の印象は変わると思います」


 俺の簡単な説明に、マルグリット嬢やナタリー嬢はなるほどといった表情になり、イザベラ嬢とナタリー嬢は挨拶は大事よねといった様子でウンウン頷いている。

 しかし、この情報だけだとマルグリット嬢とナタリー嬢に変な勘違いをさせてしまいそうなので、そうならないように補足していく。


「勘違いしてもらいたくないのは、真顔で教室に入る事や静かに席に着くのが、悪い事であると言っている訳じゃありません。皆さんのような可愛らしい女性や綺麗な女性は、ハッキリ言って凄く目立ちます。なので、男女問わず周囲からの注目を良くも悪くも集めてしまいます」


 俺の説明に思う所があるのか、マルグリット嬢とナタリー嬢だけでなく、イザベラ嬢やクララ嬢も何かを考えている。

 そんな四人をそのままに、俺は続きを話していく。


「そういった注目を集めやすい女性にとって、周囲の人々が普段から抱く印象というのは、非常に大事なものになると一人の男性として思います。今回の場合で言えば、マルグリット嬢が嫌がらせをしているとローラ嬢が追及していますが、マルグリット嬢に良い印象を抱いてくれた女子生徒たちはそれを信じていません」

「皆さんローラの言葉を真に受ける事なく、私が嫌がらせなどしていないと信じてくれています」


 マルグリット嬢は、自分を信じてくれた女子生徒たちを思い出したのか、自然と笑みを浮かべながら言う。


「気を付けないといけないのは、交流がない男子生徒たちです。男子生徒たちは交流がない事から、マルグリット嬢が実際どういった人であるかを知りません。ですので、このまま事態が深刻なものになっていくと、流される噂を真に受ける人も出てくるでしょうし、心無い言葉を浴びせてくる事もあるでしょう」

「そういった方々に対して、一体どうすればいいのでしょうか」


 マルグリット嬢の問いかけに、俺はハッキリと断言する。


「切り捨てましょう」

「え?……つまり、男子生徒を味方につける事はしないと?」

「そうです、そういった意味で間違いありません」


 俺がそう言う意味であると肯定すると、四人共驚いた顔をする。

 イザベラ嬢やクララ嬢は、俺が男子生徒を味方につけるようにと進言すると予想していたのかもな。


「理由を聞いても?」

「まず第一に、男性目線からは女の戦いに見えるからです」

「女の戦い?」


 俺の言葉に、クララ嬢がどういう意味なのかと聞き返してくる。


「良い印象を抱いてくれた女子生徒たちからしてみれば、マルグリット嬢がアルベルト殿下に恋愛感情がなく、政略結婚の為の婚約であると理解してくれています。ですが……」


 言いたい事を理解してくれたマルグリット嬢が、なるほどといった表情で続ける。


「交流がない男子生徒たちからしてみれば、婚約者である殿下をナタリーさんに奪われそうになり、その事に怒った私がナタリーさんに嫌がらせをしていると思うでしょうね」


 マルグリット嬢がそう言うと、イザベラ嬢たちも確かにそう思っていそうだと納得する。

 マルグリット嬢もナタリー嬢も、話を聞く限りでは魔法学院に親しい男子生徒はいない。

 ならばいっその事、男子生徒の支持は完全に切り捨てた方がいい。中途半端に仲良くして勘違いさせても、双方にとって悲しい事にしかならない。

 なぜ男子生徒の支持を切り捨てるのかを納得してもらう為に、男という生き物について分かりやすく説明することにした。

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