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第二十一話

 私が何を言ってもアホな男共は心から納得しないし、ローラも自分の意見を曲げることはない。なら、徹底的に現実を知ってもらい、ぐうの音も出ないほどに叩き潰されてもらうしかない。

 この不毛な茶番をさっさと終わらせるために、私はナタリーさんの方を向いて合図を出す。ナタリーさんは直ぐに合図に気が付いて、私に向かって頷いてくれる。


「私としても、ナタリーさんが嫌がらせを受け続けている事に対して、早急に犯人を見つけて止めさせた方が良いとは思っているわ。ですが先程も言った通り、嫌がらせ行為の犯人がマルグリット様だという証拠も無しに、ひたすらにマルグリット様を責め立てている殿下たちもどうかと思います。……当事者であるナタリーさんは、この事に関してどう思っていますか?」


 私の問いかけに、ナタリーさんは真剣な表情と雰囲気で答える。


「嫌がらせ行為については、直ぐに止めて欲しいと思っています」

「ほら、彼女もこう言ってるじゃないか‼」


 ナタリーさんがハッキリと告げた言葉に、アルベルト殿下がそれ見た事かといった様子で声を張り上げる。

 だが、そんなアルベルト殿下や側近たちを無視して、ナタリーさんは続けて言う。


「ですが、私はマルグリット様が犯人であるとは思っていません」

「な、何⁉」

「私とマルグリット様は友達です。それに、私とマルグリット様が友達になる前の面識は、一切ございません。それこそ、嫌がらせ行為を面と向かってされた事もありません」

「……ナタリー、君は何を言っているんだ?もしや、マルグリットにそう言わされているのか⁉友達というのも強要されているんだろう‼」


 切り札の威力が強すぎて、アルベルト殿下の思考回路がショートしかけている。

 それに、アルベルト殿下はナタリーさんの心配をしているようでしていない。どちらかと言うと、マルグリット様を犯人として責め立てたい気持ちの方が強いように感じる。

 まあ、それも当然か。

 アルベルト殿下はマルグリット様と婚約破棄をして、ナタリーさんと婚約を結びたいと思っているから。

 恋は盲目。今のアルベルト殿下にはピッタリな言葉。私もクララも、こうならないように気を引き締め直さないといけない。


「いくら殿下といえども、決めつけが過ぎるのでは?」


 アルベルト殿下のあまりの言い様に、ナタリーさんも我慢が出来なくなってきている。

 ナタリーさんに否定されてしまい、アルベルト殿下は動揺を隠せない。


「な、ナタリー?」

「嫌がらせを受けた被害者として、色々と気を遣ってくださるのは大変ありがたいと思っております。ですが、私が誰とどのようにお付き合いをしていようとも、失礼ながら殿下には関係ないかと」

「え、な?…………マルグリット‼こんな事をナタリーに言わせて、お前は恥ずかしくないのか‼」


 貴方と私は特別な関係ではないとハッキリと否定されたアルベルト殿下は、困惑と驚きの混ざった状態になった後、全身から怒りを溢れさせながらマルグリット様に怒鳴る。

 セドリック、フレデリック、マルクもアルベルト殿下同様に全身から怒りを溢れさせ、マルグリット様を言葉によって責め立てていく。


「そうですよ。このような事を強要するなど、貴き血を引く公爵家の者とは思えません」

「何故国王様も、貴女と殿下を婚約させたのでしょうか。理解に苦しみます」

「ここまで人の心がない非道な行いをする者と、少しでも同じ血が流れていると思うと吐き気がするよ」

「み、皆さま‼なんて事を‼」


 アルベルト殿下たちの心無い言葉の数々に、ナタリーさんが酷過ぎると声を上げる。

 最早その言動は、次期国王たる者であったとしても目に余る。

 それは側近たちも同様であり、次期宰相、次期魔法師団長、次期公爵家の当主として見ると、とてもではないが相応しいとは思えないほどの醜態を晒している。

 そんな状況の中で、ローラだけは口角を上げて笑みを浮かべている。厳しい言葉でマルグリット様を責め立てたのは、ローラの中ではポイントが非常に高かったのだろう。

 だが、アルベルト殿下たちは一線を越えてしまった。

 マルグリット様に言い放った厳しい言葉の数々に、ナタリーさんはドン引きしてしまっている。今ここで一旦退かなければ、貴方たちに対するナタリーさんの評価が、一気に急降下していく事は間違いない。

 ナタリーさんがドン引きしているのに気付く事はなく、アホな男共とローラは、その後もマルグリット様に難癖を付け続ける。

 私やクララだけでなく、マルグリット様やナタリーさんもアホな男共やローラに対して呆れてしまい、その後は完全無視を決め込んでスフレパンケーキを楽しんだ。

 スフレパンケーキを楽しみ終わった私たちは、食堂のオバちゃんたちに美味しかったと笑みを浮かべながら伝える。そして、周囲の生徒たちに騒がしくした事を謝り、食堂の出入り口に向かって歩き始める。

 そんな私たちに、ローラとアルベルト殿下が声を張り上げる。


「お姉さま‼早く自分の罪を認めて、ナタリーさんを解放してください‼」

「ナタリーも、無理をしないで私を頼ってくれ‼」


 アルベルト殿下がナタリーさんにそう言うと、フレデリック、セドリック、マルクが自分たちもと続く。


「私も貴女の力になってあげたいと思っています。気軽に声を掛けてくださいね」

「俺も力になるから、何でも相談してくれ‼」

「私たちはいつでも待ってますからね‼」


 私たちの後ろからそんな声が聞こえてくるが、マルグリット様もナタリーさんもガン無視で取り合う事はない。

 今回の一件で、ナタリーさんはアホな男共への評価を大幅に下方修正したようだ。マルグリット様を責め立てる言葉の数々を聞かされ、四人に対して表情や感情が無になっている。

 私は最後まで自爆に自爆を重ねて終えたアホな男共に、心の中でご愁傷様と告げて、四人で仲良く食堂から出ていった。

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