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第二十話

「何度も言っておりますが、私はナタリーさんに嫌がらせした事はありません。それに、今も楽しく食事をしていただけです」


 アルベルト殿下の不愉快な言葉に対して、マルグリット様は怒りを滲ませながら静かに言う。

 しかし、そんなマルグリット様の静かな怒りに気付く事なく、アルベルト殿下は怒気を強めて反論する。


「だがローラが、君の実の妹である彼女がやったと言っているんだぞ‼」

「ローラの真意は私にも分かりません。ですが、私ではない事は断言できます」


 マルグリット様がそう断言すると、ローラが悲し気な表情を浮かべながら声を張り上げる。


「お姉さま、私が嘘を言っていると⁉」

「さあ、それも貴女にしか分かりません」

「マルグリット‼開き直るのか‼」


 あまりにも一方的で、決めつけが酷過ぎる趣味の悪い茶番を見させられ、イラつきを抑えられなくなった私が口を挟む。


「あの、そろそろいいでしょうか?このままだと料理が冷めてしまうのですけれど」


 突然私が口を挟んだことで会話が止まり、皆の視線が私に集まってくる。


「貴女はカノッサ公爵の所の……。いくら公爵家の者といえど、今は殿下とマルグリット嬢が話しているんだ。口を挟むなんて何を考えているんだ」


 私と同じ公爵家のマルク・カルフォンが、会話に割り込んだ私に注意をしてくる。

 だが、あんな一方的にまくしたてる事を会話とは言わない。


「私は貴方ではなく、アルベルト殿下に話しかけているの。それで殿下、もう宜しいですか?私たちも料理を楽しみたいのですが」

「貴様、殿下に対してその態度は何だ‼」


 私の態度が気に入らないようで、マルクが食って掛かってくる。

 それをガン無視して、殿下の目を真っ直ぐに見つめ続ける。少しだけ圧を込め、眼力を強めて。

 その効果もあってか、再びアルベルト殿下が身体をビクリと震わせた。


「イザベラ嬢。この国の王子として、魔法学院の生徒会長としても、彼女の悪行を見逃すわけにはいかない」

「では、マルグリット様が犯人だという確実な証拠を提示してくださる?」

「証拠だと?」

「ええ、ローラさんも殿下も他の方々も、最初からマルグリット様が犯人だと決めつけているご様子。ですから、その事を裏付ける証拠を見せてくださいと言っております」


 私の強気な発言に対して、アルベルト殿下とその側近たち、さらにはローラもだんまりを決め込んだ。

 その沈黙は、私に対する実質的な敗北宣言であり、マルグリット様が犯人であるという証拠がないという事の証明でもあった。

 そして、今はお昼時。周囲には沢山の生徒たちが昼食をとっていて、私たちの会話をしっかりと聞いている。

 さあ、ここからどう反論しますか?

 そう思っていると、ローラが少し怯みながらも声を張り上げる。


「で、ですけど、実際にナタリーさんが被害に遭っているのは事実ですわ‼その犯人として最も疑わしいのは、お姉さまだけです‼」

「ナタリーさんが被害に遭っている事は、私も自分の目で実際に見ています。ですが、ナタリーさんに嫌がらせをしている犯人候補が、マルグリット様一択というのはどうにも短絡的ではありませんか?……それに、あれ程犯人はマルグリット様だと断定していたのに、今さら疑わしいと意見を変えるのはどうかと思いますが?」

「でも……」


 ローラは私の指摘に動揺したのか、すぐに答えを返す事が出来ない。

 しかし、そんなローラへアルベルト殿下が助け舟を出す。


「では、イザベラ嬢はナタリーがこのまま黙って嫌がらせを受け続けろというのか?」


 アルベルト殿下の言葉に、セドリック、フレデリック、マルクがそうだそうだと続く。


「それではナタリーがあまりにも可哀想じゃないか‼」

「ええ、その通りです」

「そうだよね~。私も殿下の言う通りだと思うけど。そこの所、イザベラ嬢はどう思うのかな?」


 アルベルト殿下たちが、声高々にそう言い放ってくる。

 マルクにいたっては先程の仕返しのつもりなのか、口元に弧を描きながら私に問いかけてくる。


(そっちがその気なら、こちらも切り札(ジョーカー)を切りましょうか)


 このアホな男共に、残酷な現実を突きつけてやるとしよう。

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