パスタを茹でます
メインディッシュのパスタ作りにとりかかるおっさん
作るといっても鍋で乾麺を茹でるだけだ
「パスタを茹でるので、できるだけ大きな鍋を二つ持ってきて貰えませんか」
宿屋の店主ノイマンさんに指示を出す
「パスタ? よくわからないけど大きな鍋だね。ちょっと待ってろ」
井戸汲みの新入りバイトが宿の経営者をアゴで使って鍋を持ってこさせる
まあ仕方ないよね。鍋の場所なんてわかんないし
「あのカロットさん。パスタというのは?」
「パスタって言うのは、うーんと要は細長いパンみたいなもんですね。小麦を細長くして乾燥させた物でそこにソースをかけて食べるんですよ」
「先ほど作ったガーリックトーストもパンですから小麦ですよね? メインディッシュも小麦で付け合わせも小麦なんですか?」
奥さんのコレットさんから突っ込みが入る
自分の宿屋で下手な物を出されても困るのだろうから当然だな
「パスタとパンでは食感が違うので問題ないですよ。私の祖国でもよくある組み合わせですので」
「そうなんですね、お願いしてる立場にも関わらずすいません」
「いえいえ」
「鍋を持ってきたぞ! これでいいかな」
店主の持ってきた大きな鍋を受け取りお湯をわかす
手順は簡単なので説明も容易で助かる
「この固くて長細い物がパスタといいます。こいつを沸騰したお湯に入れて五分すればほぼ調理完了です。お好みで茹で水に塩を入れると一層美味しくなります」
日本では誰でも知ってるいるような事を語るおっさん
イタリアンの三ツ星シェフの気分だ
「小麦をお湯で煮るのかい? パンを煮るみたいにパン粥みたいなもんなのかな」
「あなたパスタを触ってみて凄い固い。多分干し肉をお湯で戻す感覚に近いと思うわ」
どっちとも食感が全然違うんだなこれが
パスタを茹でている間にソースを作ろう。塩パスタなるものもあるが素材の味を堪能するのは年配者になってからだと思う
今日のお客さんは傭兵を生業としているヤングマンなのだ
今日作るパスタは大人の味覚、アラビアータだ
コンビニ通販で買ったトマト缶とチューブ入りのニンニクを取り出す
今日一日で使う分のソースを一気に作りたいのでガンガントマト缶の中身を大きな鍋にぶちまけていく
「凄い色だね。でも香りはとてもフルーティだ。辛い食材というわけじゃないんだね」
「そうですね。酸味と甘み。ほのかな苦みも持ち合わせておりますね。味もいいですし何より栄養価が高いです」
鍋の7割程までソースを出しおえたので弱火でじっくりコトコトと煮ていく
チューブニンニクを少しづつ加えて味を微調整していく
いい感じに仕上がってきた
「カロットさんパスタを茹でてから五分経ちましたよ」
「ではお湯を捨ててパスタを適量お皿に盛り付けてください。ソースも頃合いですので試食タイムといきましょうか」
「メインディッシュの完成か! 実は朝から走り回って腹ペコだったんだよ」
ノイマンさんは気恥ずかしそうに頭を掻きながらいそいそとお皿に麺をよそう
試食の筈が、彼のお皿に軽く五人前ほど麺が盛られてるのは気のせいだろうか
「ソースをお願いできるかい! 大盛りでな!」
麺にたっぷりとソースをかけてやれば完成だ
トマト缶とチューブにんにくで作ったアラビアータだ
「旨い! 食べた事ない味だが旨い! 食感が美味い! ソースが美味い!」
彼はフォークで麺を突き刺して勢いよくアラビアータを平らげていく
途中からめんどくさくなったのか皿を手に持ち犬食い上等でズゾズゾと麺を腹にかっ込んでいく
流石にコレットさんにまで犬食いをさせるのは忍びない
「ご婦人、麺をこのようにフォークで突き刺してクルクル巻くと食べやすいですよ(ドヤァ)」
レストランのウエイターが如くクールに食べ方を伝授する
「あら素敵、ガーリックトーストとワインも頂こうかしら」
コレットさんはニコリと微笑んでおっさんの芝居に乗ってくれるのであった




