お母さん
冒険者ギルドに着いたものの、強面の冒険者達に睨まれて怖くなったおっさんはお家に帰ることにしたのだ
扉をソッと閉じるとお家に向かって私の足は進む
「ちょっと、ちょっと! ゴブリンを換金するんでしょ! 何でギルドから離れてるのよ」
「んあ? 報酬が欲しいんだろ。払いますとも、それ」
から揚げを手から10個出して紙に包んでリザに手渡す
「それは後でいいから。ギルドに行くんでしょ」
彼女は私の右手を掴み強引にギルドへの道へ戻る
「・・・・・・ギルドは今度行く」
「どうせ人相悪い奴に睨まれて怖くなっちゃったんでしょ。だらしない、あんた男なんだからしっかりしなさいよ」
「うっせえわ! ギルドはまた今度行くから離したまえ!」
掴まれた手を半ば強引に振りほどき、スタスタと早歩きでその場からの離脱を試みる
「往生際が悪いのよ! ここまで連れて来たアタシの労力を無駄にする気? そうはさせないわ」
ギルドへ連行しようとする女と意地でもギルドへは行こうとしない私
互いに反対方向に進もうと力を掛け合い膠着状態となる
「堪忍してくれ、明日行くから。明日になったら行くから!」
「怖くて今日行けない奴が何で明日になったら行けるのよ! ほら!」
うおおおおお、行かせはせん! 行かせはせんぞ!(私の体を)
傍から見ると不登校の子供と、無理やり学校へ行かせる母親のような図だ
しかし、不登校の子供役が32才のおっさんなので何とも気味の悪いことだろうか
結局私は、獣人の彼女の力には抗えず無理やりギルドの中へ押し込められてしまった
「ひぇ、ひぇぇぇ」
「ほら、一緒に行ってあげるから」
10代の女性に手を引かれながらオドオドとギルドを歩くおっさん(32才)
不登校の子供が久しぶりに登校したけど、一人では不安なのでお母さんと登校して来たような気分だ。ちょっと恥ずかしいけど、お母さんが側にいる安心感ってすごい
こいつもしかして、私のお母さんなのかもしれない
さあギルドのカウンターまであと一歩という所で、椅子に座っていた冒険者の獣人が急に立ち上がり私の前に立ちはだかる
「な、なにか?」
「俺は人間がだいっきらいでよぉ。視界に入るだけで反吐が出るんだわ。とっととここから失せるか今俺に殺されてぇか選びな」
「帰ります! 今すぐ帰ります! ア〇ロ行きまああああす! (お家に)」
ドコッ・・・・・・
鈍く低い音が部屋に響いたかと思うと、私に絡んだ獣人が泡を吹きながら地面に倒れているのが視界に入った
「ったく、Eランク風情が調子に乗ってんじゃないよ。アタシがこのおっさんをここに連れて来るのにどんだけ苦労したと思ってんの。そんなことばっかしてるからアンタは万年Eランクなのよ」
彼女は気絶している獣人に捨て台詞を吐くと、ゲシゲシと倒れている男に追い打ちで蹴りを入れる
それはもう何度も何度も入念に。追い打ちをかけるその横顔は心から楽しそうにしていた
この女、結構まともな奴かと思ったけど大概にイカれていた
満足したのか女は私の手を引きギルドのカウンターに向かう
「あ、あり、ありがとうございます」
急に敬語になるおっさん。ここまで腕っぷしが強いとは思わなかったのだ。少なくともウエイトは絡んで来た奴の方が遥かに多いのにワンパンだよ? ワンパン
「これからああ言うのに絡まれたらアタシに言えばいいからね、この村ではCランクのアタシクラスが最上位だから」
「お、おお」
・・・・・・・お母さん
そうだこの人はこの世界での私のお母さんだったのだ




