おっさんの名前、カロットになる
さてさて、ギルドにいる冒険者に絡まれたおっさんだが門番のリザさんが助けてくれた
もう怖いものはねえな。彼女は護衛兼、お母さん役と判明したのでおっさんの精神安定剤となったのだ
さっきまでのオドオドした歩き方は打って変わり、ギルドカウンターまでの道のりをサクサクと進んでいく
「急に軽快な歩きになったわね」
お母さんだ(リザ)
急に様子の変わった私の態度を見て探りを入れてきやがった
「私は適応したのだよ、この過酷な環境に」
「はいはい、良かったわね」
「何だその態度は! このやろおおお!」
アゴを若干前に押し出しながら、アン〇トニオ猪〇張りの18文チョップを繰り出す
安全とわかったから先ほどまでオドついていた分の鬱憤エネルギーを発散したいのだ
「うっとおしい」
リザは掴んでいる私の腕に力を入れて、握力による痛みで私の攻撃を止めた
「いだだだ、ごめんって。ちょっと粋がりたかっただけだぁ」
「馬鹿なことやってないで。ほら、そこがギルドのカウンターよ。さっさと済ましてよね」
彼女に指さされた場所には、テーブルが2つと椅子が並べれられていた
各テーブルには、ギルドの職人と思われる人が1人ずつ配置されており、片方のテーブルは他の冒険者の対応中だった。
私は空いているテーブルの方に歩を進めることにする
それにしても窓口の職員が2人しかいないのか
ギルドの中も手狭だし、ずいぶん寂れているもんだな
田舎じゃこんなもんなのかな。私がギルド内の様子を窺っていると対面の職員さんが声をかけてくれた
「本日はどのようなご用件で」
声をかけてくれた人にはケモ耳が生えてるみたいな身体的特徴がない。人間か
「ゴブリンの死骸を持ってきたので報奨金を貰いに来ました」
「冒険者登録をされていますか? ギルドカードの提示をお願いします。無いのでしたら新規登録をした後に報奨金の支払い手続きとなります」
「登録をお願いします」
「では必要事項を代筆しますので答えてください」
「代筆? 自分で書けますよ」
「紙は貴重ですし、文字を書けない人もいらっしゃるので。見ての通りここは寂れていますので時間の余裕があるんですよ」
なるほどね、人が少なくてサービスの質が上がるならそっちの方が私は好きだな
まあそうなると、店の方が利益少なくて潰れちゃうんだけどね。要はバランスなんよなぁ
「口答えをしてすいません、代筆お願いします」
「いえ、ではまずお名前をお願いします」
おおっと、最初から難所だぞ!
現実の世界の本名を名乗るのは何か嫌だし、この世界での新しい名前もまったく考えていなかったのだ
ここで名前を決めてしまったら、ギルド登録する以上その名前とこの世界で心中することになるのだ
私が渋い表情をしながら必死に名前を模索していると、隣のテーブルの冒険者の声が耳に入った
「クレイジーキャロットの納品を頼む。数は5個だ。品質チェックを頼む」
「承ります、状態は5個とも良いですね。ランクAとさせて頂きます。これで宿屋の納品依頼完了となります。買い取りは大銅貨3枚です」
おめでとさん、盗み聞きしながら他人の祝福を脳内でするおっさん
クレイジーキャロットねぇ、見た感じまんまニンジンさんだな
ただ色が紫色ってのがちょっとね。色の濃い野菜は基本栄養が多いのでニンジンより優秀かもしれないな
「あの、お名前は?」
あ~、キャロット、キリっと、キリト、キロト、カロット!
これだカロットにしよう! 一番シックリ来たぞ
少し頑張ればサイ〇人になれそうな名前だ
「カロットと申します」
「はい、ではこちらの水晶に手をかざして下さい」
水晶に手をかざすと玉の色が青色に変わった
「過去の犯罪歴はありませんね。攻撃魔法もしくは回復魔法は使えますか?」
「使えませんね」
受付の職員はここでおっさんを見限った
魔法適性が無く、肉体を見る限り特に鍛え上げられた形跡もない。持ってきた魔物も最弱のゴブリンで今後ギルドの役に立つとは思えない人材なのだ
役に立たない人材の質問などするだけ時間の無駄なので、さっさと質問を切り上げてカードを渡す事にする
「すぐにカードを発行いたします。それとこちらの紙にカロットさんの血液を染みこませてください」
職員は私に細い針と小さな紙を私に渡す
痛いのは嫌なんだけどなぁ、血液とギルドカードを魔法的な何かで結びつけるんだろうな
致し方あるまい、小指に針をさして血を紙に染みこませ職員に渡す
「少々お待ちください、ギルドカードを発行します」
5分ほど待つと職員さんがギルドカードを渡してくれた
伝説のスーパー冒険者カロットさんと呼ばれる男の、誕生の瞬間であった・・・・・・




