八つ当たり
狼と別れて村に帰るおっさん、村の門に近づくと門番のダグラスの姿が目に入った
ダグラスは槍を片手に、わけも無く空を見上げボーっとしている
おいおい、門番なのにあれでいいのか? いざって時に村を守れるのか? ダグラスさんよ
たるんでいるダグラスに私が天誅を下してやることにする
私はドタドタと慌てて何かから逃げるようにダグラスの元に向かう
「た、大変だぁ! やべえよ、やべえって! ひぃぃ~」
「何だ! 何があった! 魔物か! どうしたんだ!」
「い、今そこで、お、おれが何を見たと思う?」
「なにを見たんだ! 早く言え対策ができないだろう!」
ダグラスの耳に手を当てて、ことさら神妙な顔をして言ってやる
「きれいな、お♡は♡な(⋈◍>◡<◍)。✧♡」
「・・・・・・」
「っぷははははははは! 凄い顔してたねおまえ! そもそもたるんどるんじゃ、しっかりせえや!」
私は特大のゲンコツを貰った
「なんだよ、から揚げの差し入れしてやったのに。グーで殴る事ないじゃないか」
愚痴を吐きながら村の中を歩く
よし、この殴られたイライラを商人のオヤジにぶつけることにしよう。ゴブリンの死骸を売りたかったしな
こうやって、他人から貰ったイライラを別の誰かに押し付けることで世界は回っていくのです
上司に叱られて溜まったストレスを、家族にあたって発散する人って多いよね。晩飯のおかずにケチつけたりさ。まあ、商人のオヤジに関して言えば狼の死体を足元を見たボッタクリ価格で買い取った前科があるからな
差額分のカムチャッカファイヤーをお見舞いしてやることにする
「おうおう来たぜ!」
「なんじゃ、お前か」
店主のオヤジは面倒くさそうな顔をして接客する
「何なんですかその態度は! 店長呼んでください! 店長を!」
「儂が店主だ、アホぅが」
「これ買ってくれや!」
アイテムボックスからゴブリンのくっせぇ死体を出すと乱暴にカウンターの上にドカリと投げつけてやる
「うわ! くっさ! なんて物を出しやがるんだこいつは! くっさ!」
「ふへへへ」
どうだ、客を舐め腐った商売をした報いを受けるのです
「早くアイテムボックスにしまえ、ゴブリンの死体なぞうちでは買い取りしてないぞ。さっさと冒険者ギルドに持って行って報奨金を貰ってこい」
「やっぱこの素材には価値がないの?」
「当たり前じゃろ、こんな臭くて気色悪いもん家畜の餌にもならんし、爪や牙も素材としての強度は最弱クラスじゃぞ。利用価値のないゴミじゃ」
まあ妥当だよな、ギルドに持って行けば報奨金が貰えるだけマシか
「ちなみにギルドでいくら貰えるの?」
ゴブリンの死体をしまいながら聞く
「ゴブリン一匹で大銅貨一枚だろ? おまえそんな事も知らんのか? 子供でも知ってることだぞ」
「あいにく世情には疎くてね、もう貴様に用はない消えろ」
「ここは儂の店だ! お前が消えろ!」
「あんだと! また来るからな! 首洗って待っとけよ!」
「なんておぞましい客なんだ・・・・・・」
少しスッキリしたぞ、気を取り直して冒険者ギルドに報奨金を貰いに行くことにしよう
っつっても場所がわからないんだよな、誰かに聞かないと
誰に聞こうかと思案していると、突如背中に鋭い痛みが走る。誰かが平手で私の背中を叩いたようだ
「バチン!」
「いでぇ! な、なんなんだ」
「前はよくもやってくれたわね」
門番のチーター女じゃねえか、丁度良かったこいつに道案内を頼もう
「今から冒険者ギルドに行きたいんだ。案内してくれよ」
「何でアタシがそんなことしなきゃなんないのよ、だいたいアンタねえ」
「前の肉を10個くれてやる。頼むわ」
「付いといで」
彼女は先ほどまでの勢いが嘘のように消えて、私のお願いに従順に応えてくれる
現金なものだ、やはり札束で頬を殴るのが一番手っ取り早いトラブルの解決策なのさ




