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餌付け


緑の小人を見事に殺し終えたおっさんは、生命の危機から脱した達成感と初めて生物を殺めてしまった虚無感を同時に感じていた


「ハッハッハッ」


「呼吸が荒いな、キミは」


狼は小人の喉を噛み砕いた後は獲物に興味が無くなったのか、私の方をハァハァと荒い息をしながらずーっと見ている


こいつとは、一緒に協力して敵を殺したからか変な連帯感というかチーム意識、絆のようなものが芽生えた気がする


そもそもこいつが居なかったら死んでたかもな、仕方ない。こちらから歩みよる努力をするとしよう


私は少し狼の方に近づくと右手をグーの形にして、ゆっくりと狼の顔の近くに突き出す

犬に体の匂いを嗅がせて仲良くなるのが正攻法なのだ


「スンスン」


「噛まんでくれよ、まじでさ」


狼は手の近くに鼻先を少し近づけるとスンスンと匂いを嗅ぎだした。動物にとって相手の匂いを嗅ぐってかなり重要なことらしいね


ひとしきり匂いを嗅ぎ終えると私の後ろに回り込み更にスンスンと匂いを嗅いでいる

嗅ぎ終えると満足したのか、またハァハァいいながら私の方を凝視する作業に勤しむ


狼と見つめ合っても仕方がないので、私は小人の亡骸から死体漁りをすることにする


「ちっちゃくて人型、肌が緑で牙と爪が少しはえてるな。ゴブリンって奴か」


死体漁りをしようにも手に持っていた錆びついたナイフと、汚いボロ布くらいしか身に着けていない。これが金になるとは思えないなぁ


よし、出血大サービスだ。この死体は狼に食わせるとしよう


狼に手招きをしてこちらに来させると、小人の死体を狼の顔近くに足で蹴り押す


「食っていいぞ」


「くぅーん、ックシュ」


狼は一瞬嫌そうな顔をすると、亡骸から距離をとる。どうやら食用ではないらしい


「そうだよな、ガード下に長期間住んでる人たちと同じ臭いがしたもの。仕方がないアイテムボックスに入れて商人のオヤジに売りつけよう」


死体を収納した私は再び村へと足を進める。狼も追いてくるけどもう先ほどのようないきなり襲われるかもしれない恐怖はもう感じない


「ウォン!」


村の近くまで行くと、狼は急に一鳴きしてそこで歩くのをやめてしまった。お座り状態だ


「人里に近づきすぎたからか? ここから先はキミの縄張りの外なんだね」


私は右手からから揚げをジャラジャラと出してやると狼の前の地面に置いてやる


「じゅるり、ハッハッ」


狼は大きな口からダラダラとよだれを垂れ流しながら地面に置かれたから揚げを見つめる。しかし、決して食べようとしない


「私が許可を出さないと食わないのかな、もう序列みたいなのがキミの中ではできてるのか?」


から揚げの一つを手に取り狼の口元に持っていってやって無理やり食わせる。残りのから揚げも狼の近くに手で押しやり食べてもいい意思表示をしてやると、狼は勢いよく出してやったから揚げを食い始めた


「あとは水だな、水は井戸汲みのバイトで汲んだ奴をアイテムボックスに収納しておいたのだ」


皿に水を入れてやると狼に飲ませてやる、至れり尽くせりだな


から揚げみたいな塩分の高い物を動物に食べさせるのはもっての他だが、このから揚げは何となく食わせても大丈夫ってわかるんだよな。なんでだろ、魔力が元だからか?


いっそ、このから揚げだけ食ってれば他の栄養素を摂らなくても生きていけるんじゃね


「結構なチート能力ですわ、震災の時は最強だな」


から揚げを食い終わったみたいなので皿をアイテムボックスにしまうと、狼は飄々とした足取りで村とは反対の方向へ歩き始める。どうやら自分の寝ぐらに戻るようだ


私と一定の距離を保つと、飯のお礼か「ウォン!」と一鳴きして彼は森の奥へ猛ダッシュで消えていった


「お粗末様でした」


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