はぐれ狼
から揚げ捕食ボーナスポイント15P ステータスに割り振ってください
「うおおおお!」
ステータス画面を開くとこのようなメッセージが出ていた。つまりはこのポイントをステータスに割り振れるということなのだろう。から揚げ食うだけで強くなれるってやばない?
いや、よく考えて見ろ。確かに私はから揚げが好きだが一日三食から揚げを食うのは流石にごめんだ。カレーも食いたいしラーメンも食いたい、まあどっちもこの世界にはないだろうがな
「一日一食が正直限界だなぁ」
いくら好きな物でも毎日食べると嫌いになっちゃいそうで怖いよな。しかし、この15Pという数字が解せぬ
この世界に来てから食べたから揚げは20~30個くらいだと思う。一個食べて1P上がるというわけではなさそうだ。から揚げ捕食ボーナスポイントと記されている所をクリックすると色のついた線グラフが表示された
「なるほどね、から揚げを食うごとにグラフが伸びていって限界値を超えるとポイントが入るってとこか」
試しにから揚げを食べてグラフを確認するとわずかにグラフが伸びた。そうよね。伸びたグラフはほんのわずかな物で30個から揚げを食べたところで15Pも溜まるとは思えないな。自分で食べる以外にもポイントを伸ばす条件があると見て間違いないだろう
「とりあえずポイントをステータスに振るか。今の筋力じゃあ井戸汲みもままならないからな」
名前 未設定
体力 100
魔力 100
筋力 8+15
頑丈 13
敏捷 6
知力 6
幸運 5
SKILL 共通言語 精神防御 から揚げ作成 電子パネル アイテムBOX
筋力が23に上がりました
「よっしゃ、とりあえずこれが今の私にできる最善だな」
試しに筋力がどのくらい上がったか試してみたいな。よし! 腕立てをやろう。以前の私なら10回程度で根を上げていたがどのくらい続くだろうか
「フン、フン フシューフシュー、 あああキタコレ、腕に負担キタコレ!」
記録はなんと30回! 30回ですよ! 30回! 3回じゃありません! もう一度言います、30回!
「うおおおおお! オレすげええええ! 30回も連続でできるなんてマッチョかよオレ!」
から揚げを食べただけで強くなった私の脳からはアドレナリン、エンドルフィンがドバドバと噴き出し興奮状態へと私を誘う
「オレは強い! オレは最強だああああ! うおおお! シュッ! シュッ!」
何もないところにおっさんのシャドー正拳突きが炸裂する。続いておっさんの究極奥義、内臓殺し16連発マシンガンブロ-(新品未使用) が空気相手にクリーンヒットする
「ふははははは、ぜぇぜぇ、ゲッホゲホ、ハハハハハ、オエェェ」
どうやら興奮しすぎてしまったようだ。激しい運動による酸素不足になったおっさんの頭は、ものの見事にクールダウンされた
筋力もだいぶ上がったし、明日の水汲みの仕事も何とかなりそうだ。後顧の憂いは断っておけたし暗くなる前に帰ることにしよう。森を歩いていると近くの茂みからガサガサと物音が聞こえ始めた
「ん~、ウサギさんかな? いやそれにしては音がでかいような」
おっさんは完全に油断していた。ただでさえ森を歩きなれていないので危険察知能力が低いのに、ステータスが上がって気分が有頂天になっていたのだ。茂みの音もちょっと大きいなぁ程度にしか感じていなかった
茂みから姿を現したのは全身傷だらけの歴戦の狼さんだったのだ
「......!? くぁせdrftgyふじこ!?」
狼だ! 腕立てが30回できるようになったところでどうにかなる相手じゃあない。こりゃあ終わったな、辞世の句でも考えることにしよう
私はスカスカの脳みそで必死に死に際の言葉を考えているが一向に狼は私を襲ってこない。それどころか、その場に力なくコロンと倒れてしまったのだ
「どうなってるんだ?」
狼を注意深く見ると、体には無数の引っ掻き傷や噛み傷が刻まれていた。中腹辺りには矢のような物が刺さった後があり、あれなんか見覚えがあるような?
「あっ! こいつ私とマルスたちを襲ってきた狼のボスか! 腹の傷はマルスの放った矢だ!」
しかし群れで行動してたはずなのに他の狼の気配がない、なぜだろう
そうか......そうだったのか......
「群れのリーダー争いに負けて、群れから追い出されちゃったんだなお前」
体の噛み傷や引っ搔き傷は元仲間にリーダー争いの際につけられた傷なんだな。腹に矢も刺さってたしそりゃあ勝てないよな
この狼は正直もうおしまいだ。リーダー争いに負けた狼は群れから追い出されるだけでなく、他の群れにも入れなくなってしまうのだ。群れから追い出された狼はチームでの狩りが出来ずすぐに飢えて死んでしまう。しかし極まれに、一匹だけでもしぶとく生き残る個体がいるらしい。こういった狼が居たことから一匹狼という言葉が生まれたと聞いたことがある
「可哀そうだけど自然の摂理だしな、そもそも人間を襲おうとしたお前の落ち度だと私は思うよ。人間は襲っちゃいけない。遅かれ早かれお前はこうなる運命だったのさ」
言葉などわからない獣に対して偉そうに講釈を垂れた私は、哀れな狼の姿の最後を目に焼き付ける。地面に伏せている狼は、力なく体を土に密着させ希望の無い目で私を見つめる。こいつは死に際に何を考えているんだろうか
「......ほんと私も生ぬるい奴だな」
手からから揚げを出して狼の近くにばら撒いてやる。コンビニアプリででペットボトルの水を買って手持ちの皿によそって地面に置く
「私からの選別だ。死ぬ前くらいは腹いっぱいメシを食いたいよな? 願わくば一匹狼として大成できるように神様に祈ってやるよ。またな」
キザったらしいことを言ってその場を後にする
本当に私も丸くなったものね




