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萌え絵師への小道  作者: むかしむかしあるところでね
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とある(特殊な)服飾店アルバイト、Aさん(20代 女性 特記事項:腐女子)と、ある日の珍客

 



 そのお客さんは、店に入る前から目立っていた。


 可愛らしい格好の彼女サンを連れてこんな所に来ちゃうって、どんなツワモノかと興味津々に眺めていると、彼女サンを外に待たせたまま店内に入ってきて、これまたびっくりした。


 超美形。


 ヤバイヤバイ、私の最愛のルシフェル様(←『星の数ほど抱きしめて(SFアクションボブゲ)』の悪役キャラ)の地位が揺らぐ。


 3次元なんかに乙女のハートを持っていかれるわけには行かない。


『運命? これが運命だというのか!』『神などに縋っても無駄だ!』


 ルシフェル様の決め台詞を脳内で反芻して気を静めた。大丈夫、大丈夫、正気に戻れ自分。腐女子人生をルシフェル様に捧げると誓ったんだから!


 深呼吸して、改めてお客様を見る。


 うん、よくよく見ればスレンダーな体つきは、ルシフェル様のような鴉の濡れ羽色の翼なんてどこにもない。彫りの深い顔立ちも薄い唇も、ルシフェル様の見るものを陶然とさせるパーフェクトフェイスには及ばない。


 あのお客はただの三次元。どんな美形だろうとトイレに行く存在だ。


「よーし、今後は決して惑わされないぞ!」


 握りこぶしで自分に言い聞かせていると、件の美形がカウンターに近づいてきた。


「いらっしゃいませー。何かお探しでしょうか?」


 うーん。近くで見ると着ている物も一流だし、ツクヅクこの店に不似合いな客だ。冷やかしだろうか。


「一般的なコスプレとは、どんなものでしょうか」


 ……うおっと。柔らかいテノール。これはエリック君(『星の数…』主人公の仲間その1、序盤で主人公の身代わりでルシフェル様の奴隷に!)の美声とちょっと似ている。


「………し、失礼しました! あの、服をお探しですか?」


 一瞬美声に気を取られ、なんとも間抜けな受け答えをしてしまった。服屋で服以外の何を探す。


「はい。できれば、一般的なものから徐々に深いものまで、段階的に揃えたいのですが」


 おおっと。この美形サン、初心者か。揃えるって、先ずは試しに一着でいいんじゃないの?


「そうですねぇ…。お好きなキャラとか、ジャンルはございますか? 制服系なんかが最初はお勧めですけど」


 そう言いながら、男子は皆大好き、SFロボットアニメ金字塔の軍服コーナーに向かおうとすると。


「あ、いえ。私ではなく。女性用のものを」


 美形サンが手を振った。


 ……え?


 …………彼女サンか!! 外で待ってる彼女サンに着せるのか!?!


 表のディスプレイに見入っている彼女サンに目を向ける。顔は良く見えないけど、可愛らしいシフォンのワンピースだ。きっと顔も可愛いに違いない。


 ディスプレイのプレートアーマーは2m近くあるから、比較して、彼女サンの身長は160cm弱だ。スタイルもよさそうで、コレはお勧めし甲斐があるというものだ。


「プレゼントですか? イベント用でしょうか。それとも……?」


 お二人でお楽しみ用? とは、あんまりあからさまには聞けないけどさ。


「ああ。まあ、そのような物です」


 うひゃあ肯定したよ臆面も無く頷いたよ彼氏がこんだけ惚気てたら彼女サンだって恥ずかしいじゃん閨のことは秘事だって!!


 つい、頬が緩みそうになるのを頑張って引き締めてるけど、成功してるだろうか。ニヨニヨしちゃってる気がする。


「そうですねー。では、こちらの制服はいかがでしょう。一昔前にはやったアニメの制服ですが、根強い人気がございます」


 襟のリボンはいろんな用途に使えるしね!


 ふむ、と美形サンは頷いた。


「他にも、……こちらは今一押しの深夜アニメで、こちらは個人的に最高峰!の美少女アニメのヒロインの制服デザインで、……あとコレも、ゲームの人気はさほどではありませんでしたが制服が可愛いので、実際に着てみると楽しいかもしれません」


 18禁エロゲだけあって着崩れやすいデザインもお勧めポイントだ。


 ふむふむ、と美形サンが感心している。


「後は、ですねー。こちらのコーナーは和装っぽいデザインのものがございます。やっぱり巫女さんは定番!ですし、くノ一コスもございます。コレは忍者アニメの定番で夏向きですね、鉢巻はあちらに各種ございます。それに、今店頭には置いていませんがお姫様系もカタログでご注文いただけますよ。あ、メイド服はあちらです。…あとはー、ファンタジーのアニメやゲームのキャラは、キャラも種類も雑多で自作する人が多いので、アクセサリー系は取り扱っておりますが、完成の服は、多くはありません」


 残念だ。この美形サンが邪神の神官コスで彼女サンが生贄の村娘役なら、そりゃー盛り上がっちゃうだろうに。


「ナースはピンクが一押しです!」


「婦警さんセットはおもちゃの手錠つきです!!」


「あ、コレを忘れちゃいけない、スクール水着! ちゃんと名札も別売りで」


「猫耳! しっぽ!!」


「コレがあれば猛獣使いも女王様も!」


 ……ちょっと、いや、かなり暴走した、と自分でも思う。けど、お勧めしたほとんどをお買い上げになった美形サンは、滅茶苦茶オットコマエだった! 清清しい漢だ!! 


 これで向こう一年は飽きることが無いんじゃないだろうか。


 やっべー、コレ、彼女サンも初心者だろうに。


 まさかチョーキョーされちゃうのかな。逃げてー!彼女サン超逃げてーー!!(笑)




 しかし、本日の売り上げ計算が楽しみだ。いい仕事したな自分!




 あ、でも宣伝のためにコレだけは言っておきたい。


 当店は、アダルトグッズ販売店ではございませんですよ。あくまでコスチュームプレイに特化した服飾店でございますよ。



 ……ええと、誰に向かって言い訳してるんだ自分?



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