ベロンの街を散策
オレ達は、オリント共和国の議員のスチュワートと一緒に首都ベロンに向かった。途中で武装集団に襲われたが、無事にベロンの近郊までやって来た。
「ケン殿。そろそろ首都ベロンです。」
「ベロンはどんな町なんですか?」
「もともと国王が治めていた時代には、税金が高くて、しかも貴族達が大きな顔をしていましたから街に活気がなかったのですが、今はだいぶ変わりました。」
ベロンの街の入り口が見えてきた。城門付近の検問には長い列ができている。オレ達の乗る馬車もその列に並んだ。
「ケン様。凄い人の数です。どのくらい待つのでしょう?」
「ドリエ殿。大丈夫ですよ。検問には係員が大勢いますから。」
スチュワートの言った通り、30分もしないうちに順番が回って来た。オレ達は全員がギルドカードを見せた。検問の係員はオレ達のギルドカードを見て驚いているようだったが、何も言わずにそのまま検問を通してくれた。
「さすがですね。スチュワートさん。」
「何がですか?」
「オレ達のカードを見せても、係の人間達が周りに配慮して声を出さずにいたじゃないですか?」
「当然です。個人情報ですからね。」
ベロンの街に入ると活気に満ち溢れていた。大勢の人々が往来を行き来し、通り沿いにはたくさんの店が並んでいる。オレ達はそのままスチュワートの別宅まで行き、少し休憩した後で街を散策することにした。
「ケン殿。ありがとうございました。無事にベロンに到着できました。少ないですが、お礼です。受け取ってください。」
「スチュワートさん。これはまだ受け取れません。オレ達の仕事はまだ終わっていませんから。」
「えっ?!」
「これから国民議会の議長選があるんでしょ? 選挙が終わるまでは護衛しますよ。」
「ケン殿~! 感謝します!」
「オレ達は街の様子を見に行きたいんですが。」
「わかりました。私がご案内したいのですが、これから打ち合わせがありますので。」
「いいですよ。勝手に見て回ってきますから。」
オレ達は街に繰り出した。
「ケン。ここに来る途中にお洒落な服屋さんがあったの。行ってみたいんだけど。」
「じゃあ、行ってみようか。」
「さすがケン兄!」
「僕は服よりもレストランの方がいいにゃ。」
「ミレイ。服屋に行ったらレストランに行こうか?」
「さすがケン様です。実は私もお腹が空いてました。」
オレ達は街に向かった。右手はドリエ、左手はミサキが繋いでいる。最近ドリエの背が伸びた気がする。
「ここよ! この店!」
服屋は建物自体がお洒落に飾り付けしてあった。この世界に来て初めてショーウインドウを見た気がする。ショーウインドウに飾られている服は、この国の流行の服なのだろう。
「ミサキ姉! 早く入ろうよ!」
「ケン兄! また、1人5着まで?」
「そうだね。でも、欲しいものがあったら買ってもいいよ。」
「ヤッタ—!」
女子4人組が店に入った後、オレはいつもの通り暇になった。店の前のベンチにリンを膝に乗せて休むことにした。
“リン。この国の情報、なにかつかめたか?”
“はい。今回の議長選には、スチュワートさんを含め5人の候補者がいるようです。”
“その中に問題のある人がいるの?”
“はい。ギブソンという人物ですが、議長になった後に自らが皇帝となって、再びこの国を帝政に変えようとしています。”
“もしかして、それに旧貴族か旧王族が関係しているの?”
“旧王族の人々はすでにこの国にはいません。王妃の出身国であるカナリカ王国に逃げ延びたようです。”
“なら、旧貴族の誰かが関係してるんだね。”
“はい。元侯爵のリプトンが旧貴族や軍閥をまとめて、ギブソンと手を組んでいます。”
“あの武装集団もリプトンの差し金だったんだよね?”
“はい。彼らはギブソンが雇った傭兵達です。”
“ありがとう。また、何かわかったら教えてくれ。”
“マスターのお役に立てて光栄です。ところでお願いですが、もっと頭を撫でてください。”
“はいはい!”
普段、リンは女子4人の誰かに抱えられていることが多い。それが不満なのだろう。なるべくオレの近くに居させようと反省して待っていると、親子がやって来た。
「お母さん。見て! この犬、可愛い!」
「ありがとう。噛まないから、撫でてもいいよ!」
「本当?」
「すみません。娘は動物が大好きなんですよ。」
しばらくリンは女の子のおもちゃになっていた。ひとしきり遊んだ後、親子はその場を立ち去った。
“人間の子どもは可愛いですね。”
“ああ。心が清らかで何の穢れもないからね。”
“マスターもですよ。”
“そうかな~?”
しばらくして、服屋から大きな手提げ袋を持って女子4人組が出てきた。オレはローザを見て驚いた。アニメでよく見る魔女っ娘なのだ。それもよく似合っている。
「ケン兄。この帽子どう?」
「すごくよく似合ってるよ。」
「本当?」
ローザがオレの膝に乗って来た。
「ローザちゃん! 抜け駆けはダメよ!」
後ろの方でドリエがもじもじしている。やはりドリエが成長している。
「ケン! もしかして気付いた?」
「なにが?」
「ドリエちゃん、また成長したんだよ!」
「そうだよね~! なんか大きくなってるよね?」
「ケンはエッチにゃ! そうやっていつも僕たちの胸を見てるにゃ!」
「えっ?! なんのこと? 背が伸びたんじゃないの?」
「とぼけてもダメよ!」
なんか恥ずかしそうにドリエが胸を手で隠すしぐさをした。なんか誤解されたようだ。オレは背が伸びたと思っただけなのに。
「ケン! レストランに行くにゃ!」
「ああ。そうしようか。」
全員の荷物をオレの亜空間にしまって、オレ達はレストランに向かった。レストランに入ってメニューを見ると、見たことのない料理のオンパレードだ。食文化もかなり発展しているようだ。いつものようにそれぞれが別々のものを頼んだ。当然、ミレイとドリエは肉料理だ。ミサキとローザは野菜中心の料理。オレは魚料理だ。
「ケンの魚、大きいにゃ! 少し食べたいにゃ!」
「私も! ケン兄! ちょっと頂戴!」
なんかいつもの光景だ。結局オレは煮魚を2口食べただけだ。他は全部女子4人に食べられてしまった。リンはというと、しっかりと肉料理を食べていた。
「さて、じゃあ、スチュワートさんの屋敷に戻るよ。」
「わかったにゃ。」




