オリント共和国の議員スチュワート
話しながら歩いといると、いつの間にか冒険者ギルドの前にいた。オレ達がギルドに入ると、中にはほとんど人がいなくて静かだった。オレ達は受付に行った。
「聞きたいことがあるんですが。」
「なんでしょうか?」
「この街には武器屋はないんですか?」
「ええ、数年前になくなったわ。」
「どうしてですか?」
「あなた方はこの国の方ではないんですね?」
「はい。隣国のアルメデス王国から来ました。」
「そうですか。なら、知らないですよね。この国は数年前に共和国になったんですよ。その時に、ギルド内以外での武器の販売が禁止されたんです。」
「どうしてですか? 魔物とかは大丈夫なんですか?」
「魔物は冒険者が対応しますから。それより、旧国王派の人々の手に武器が渡らないようにしているんですよ。」
「旧国王派ですか?」
「そうですよ。彼らがこの国の議員を狙ってますからね。」
「そうなんですね。わかりました。この街で魔物とかで困ってることはないですか?」
「ありがとうございます。でも、今のところないですよ。仕事探してるんですか?」
「はい。何かあれば受けようと思ったんですが。」
「それなら、この街の議員のスチュワートさんが首都ベロンに行く時期だから、護衛を雇うと思いますよ。」
「ありがとうございます。そのスチュワートさんの屋敷を教えてくれますか? ついでに宿屋も教えてください。」
オレ達は受付の女性に教えてもらった通り、スチュワートさんの屋敷に向かった。道の様子を見ながら歩いたが、特に怪しい人影はなかった。そして、スチュワートさんの屋敷の前まで来ると、完全武装した警備員がいた。
「すみません。オレ達、冒険者ギルドの紹介で来たんですが。」
「ちょっと待っててくれ。」
警備員の男性は門の中に入って行った。
「ケン。スチュワートさんてどんな人かしらね?」
「会ってみればわかるさ。ただ、街の人達を見ると悪い人じゃなさそうだけどね。」
「でも、ケン兄。警備の人、凄い装備だったよ。」
「ローザちゃん。多分、ギルドの人が言ったように命を狙われてるんじゃないかな。」
「ドリエの言う通りかもしれないな。」
しばらくして警備員の男性が出てきて、オレ達を中に案内してくれた。中に入ると、冒険者はおらずに数名の兵士がいるだけだった。玄関先で執事のような男性がオレ達を待ち構えていた。
「我が主人のスチュワートに何か御用でしょうか?」
「ええ。ギルドで仕事を探していたら、スチュワートさんが都に行く護衛を募集していると聞きまして。」
「護衛希望の方ですか。ようこそお越しくださいました。」
「オレ達以外にはいないんですか?」
「はい。そうなんです。」
何やら執事の男性は言い辛そうにしている。すると、奥から紳士風の男性がやって来た。
「よく来てくれた。私がスチュワートだ。」
紳士風の男性はオレ達に気さくに挨拶してきた。そこで、オレ達も自己紹介をした。
「オレは冒険者のケンです。」
「私はミサキ。」
「僕はミレイだにゃ。」
「私はローザよ。」
「私はドリエです。」
最後にフェンリルのリンが尻尾を振って挨拶している。
「これはありがたい。一気に5人も護衛ができた。なあ、ヨハネ。」
「はい。スチュワート様。」
「他に護衛はいないんですか?」
オレの質問にスチュワートが真剣な顔で答えた。
「そうなんだよ。私の護衛は命懸けだからね。誰も引き受け手がいないのさ。」
「相手は元国王派の連中ですよね?」
「実はそれだけじゃないんだ。現在の議員の中にも私の命を狙っている者がいてね。」
「どうしてにゃ?」
「1か月後に都で国民議会の議長選があるんだよ。私が立候補するから、それを阻止しようとしてるのさ。」
「ケン。何か大変そうね。」
「そうだな。」
オレ達の話を聞いてスチュワートが言った。
「君達も命が大事だろう。無理にはお願いしないさ。」
「ケン兄。どうするの?」
ローザとドリエがオレの左右の手を握って見つめてきた。
「この仕事は受けるさ。それがこの国のためになるんならね。」
するとスチュワートがオレの手を握って来た。
「感謝する。ケン殿。是非お願いしたい。」
オレはスチュワートさんから悪意は感じられない。むしろ正義感のようなものを感じた。その後、オレ達は一旦屋敷を後にして街を散策することにした。出発は翌日の早朝だ。
「ケン様。街の方々にスチュワートさんのことを聞いてみませんか?」
「なら、食堂がいいにゃ。お腹も空いたにゃ。」
「そうね。ケン。私も賛成よ。」
オレ達は街の食堂に行った。時間も夕方ということもあり、食堂の中には大勢の人がいた。オレ達はそれぞれ食べたいものを注文した後、他の客が話すのを聞いていた。
「そろそろスチュワートさんがベロンに行くんだろ?」
「そうだな。あの人がこの国の議長になってくれればいいんだけどな。」
「それはどうかな。他にも立候補予定者がいるらしいぜ。」
「なんか噂だと、旧王族派と組んでスチュワートさんを狙ってるやつがいるらしいじゃねえか。」
「おい。オレは本当か? なら、スチュワートさんに知らせた方がいいじゃねえか。」
「行ったさ。知らせに行ったんだけどな。」
「それでどうしたんだ?」
「人は死ぬ運命なら死ぬし、そうでないなら神様が助けてくれるだろうってさ!」
「その話、本当かよ~。あの人は欲がないと思っていたが、生きる欲もないのかね~。」
「王族との大戦の時のことが尾を引いてるんじゃないか。」
「そうだよな~。あの大戦で妻や子どもを殺されたんだもんな~。俺なら、もう生きてられねえな。」
「それがあの人の凄いとこさ。あんな目にあったのに、王妃やその子ども達の命を助けたんだろ? 妻や子どもには罪はねぇとか言ってさ。」
「ああ。あの人は大した人だぜ。」
オレ達は運ばれてきた料理を食べながら聞いていた。みんなを見渡すと、みんなの目も輝いていた。恐らく同じことを考えているのだろう。なんとしてもスチュワートさんを守るさ。
“リン。眷属にこの国の内情を調べさせてくれるか?”
“わかりました。”




