国境の街チクマ
国境の警備兵にギルドカードを見せると全員が直立不動になった。そして、いよいよオリント共和国に足を踏み入れた。
「国境を越えてすぐに森なんてついてないにゃ。」
「ミレイ姉はすぐに街があるほうがいいんだよね?」
「ローザちゃん、どうして?」
「だって、街があれば屋台や美味しい食堂があるもん!」
「そっかー!」
「ドリエにゃん。ローザの言うことは真に受けない方がいいにゃ。」
「だって本当だもん。ねっ、ミサキ姉。」
ミサキは話を聞いていない。腕の中のリンことフェンリルに夢中なのだ。
「ねえ、ケン。このフェンリルに名前を付けましょうよ。」
すると、ローザが言った。
「フェンリルだからフェンでどう?」
リンは嫌そうにそっぽを向いた。
「ローザにゃん。なんか嫌がってる見たいにゃ。」
そこで、オレが言った。
「このフェンリルの名前はもう決めてるんだ。」
「ケン様。何て名前なんですか?」
「『リン』だよ。」
すると全員が口を開けて驚いている。
「ケン。『リン』って大天使のナルーシャ様と同じじゃない! ナルーシャ様が嫌がるわよ!」
「いいんだ。もう、本人に了解はとっているから。」
すると、フェンリルが嬉しそうに尻尾を振って吠えた。
『ワォ————ン』
「なんかフェンリルがすごく嬉しそうですね。ケン様。」
「なら、決定にゃ。このフェンリル様は『リン様』にゃ。」
「ミレイ! 『様』入らないから。」
「そうだよ。ミレイ姉。『様』は変だよ。『リンちゃん』の方が可愛いよ。」
「何でもいいよ。気持ちが伝われば。」
「そうね。ケンが言う通りだわね。気持ちが大事よね。」
森の中を歩いていると、魔物の気配がする。
「カサカサ カサカサ」
巨大な蛇が草むらから頭を出した。口からは真っ黒な舌を出している。
「コブラスネイクよ!」
リンの目が赤く光ったと思ったら、コブラスネイクはカチカチに凍ってしまった。ローザが近づいて指で突っつくと『ガラガラ』と音を立てて崩れてしまった。
「もしかして今のはリンちゃんがやったの?」
抱きかかえているミサキが聞くと、リンが返事をするかのようにミサキの顔をなめ始めた。
「凄いわね。リンちゃん。」
リンはジャンプしてミサキの腕の中からオレの肩に乗って来た。きっと褒めて欲しいのだろう。オレはリンの頭を撫でた。すると、リンがオレの顔にすりすりしてきた。なんかすごくかわいい。
「ケン。あの草原の向こうに見えるの、街じゃない!」
「街にゃ! 街が見えるにゃ!」
オレ達は草原を抜けて街まで急いだ。街の入り口には『ようこそチクマの街へ』と看板があった。検問もなかったので、そのまま街に入った。どうやら農家の人が多いようだ。農具を持った人達が大勢往来を行き来している。
「ケン。この街は平和そうだにゃ。」
「そうね。ミレイの言うとおりね。なんかみんなの顔が生き生きしてるわね。」
「ギルドに行こうか?」
「ケン兄。また情報収集?」
「まあね。」
オレ達は冒険者ギルドに向かった。冒険者ギルドに向かう途中も街並みを眺めてみたが、店もそれなりにある。だが、武器屋がない。普通ならどの町にも魔物の対策のために冒険者がいる。そのために武器屋は必ずあるのだ。
「ケン様。この近くには魔物が出ないんですかね?」
「ドリエも気づいたか? そうなんだよ。武器屋が見当たらないんだ。」
「どっかにあると思うにゃ。この通りにないだけにゃ。」




