ケンの正体判明?
ミレイ、ミサキ、ローザの目の前でケンが量子破壊砲によって殺されてしまった。3人は何も手がつかず、悲しみのどん底にいた。すると、空中に巨大な光の球が現れ、神々しい光を放ち始め、徐々に人型に変化していく。大天使ナルーシャが現れたのだ。竜人族達はナルーシャに向かい全員が平伏した。大天使ナルーシャが言葉を発した。
「ミレイ。ローザ。ミサキ。このままでいいんですか? マスターはこの世界の平和を望んで戦っていたんですよ。あなた方はこのままでいいんですか? 今のあなた方の姿を見ればマスターも悲しむと思いますよ。」
「ナルーシャ様。僕達はどうすればいいにゃ?」
「まだ、人質が解放されていません。それに、皇帝がいる限り、再び大量殺人兵器を作るでしょう。」
「ミレイ。ローザ。ケンの弔い合戦よ。私達が戦いましょ。」
「うん。ミサキ姉の言う通り! ケン兄の仇を取ろう!」
「わかったにゃ!」
3人の目はギラギラとした輝きを取り戻した。
☆☆☆☆☆
その頃、ブルータス皇帝はサイロンの屋敷でゲイリー公爵と話をしていた。
「皇帝陛下。この度はまことに申し訳ございませんでした。」
「もうよい。憎き魔法使いをこの手で葬ることができたのだ。それよりも、すぐに兵器工場を復活させ、戦車部隊、高射砲部隊を再編成するぞ。飛行艇は何機残った?」
「はい。5機残っております。」
「その5機には量子破壊砲を搭載せよ。」
「ハッ。畏まりました。」
「戦車も飛行艇も軍艦も大量の魔石が必要だ。最下層の人間を使って、鉱山の採掘作業を急がせよ。」
「ハッ」
ゲイリー公爵は指令を伝えるために、部屋を出て行った。一人になったブルータス皇帝は瞑想を始めた。
『ブルータスか? 今日は何のようだ。』
『はい。よい報告があります。転生者と思われる魔法使いをこの手で始末しました。』
『そうか。ならば、もう邪魔するものはいない。早くこの人間世界を統一するのだ。』
『人間世界を統一した後はどうなされるのですか?』
『この世界には最強の種族、魔族がいる。魔族と全面戦争をするのだ。』
『魔族は恐ろしく強い種族と聞いておりますが。』
『お主の科学力があれば敵ではないさ。』
『期待に応えられますよう精進いたします。』
『期待しておるぞ!』
『はい。』
☆☆☆☆☆
その頃、ケンは再び最高神界から地上に落とされ、港町ボサセの海岸にいた。
“リン。この後どうしようか? 神様にああ言われたけど、またあの量子破壊砲を食らったらまずいよな~?”
“大丈夫ですよ。マスターの封印はすべて解除されましたから。”
“封印がどの程度のものだったか、自分では自覚がないんだよ。”
“そうですね。例えるなら、今のマスターはこの世界の管理神様のエリーヌ様と同等かそれ以上ですよ。”
“え—————!!! それって神じゃん!”
“大天使の私がマスターとお呼びするのですから、当然じゃないですか。ですが、現在のマスターは人族に転生していますから、神人だと思われます。”
“神人?”
“神が地上に降りるときは人の体を必要とします。ですので、マスターのように転生という手段をとるのです。その分、人族の肉体に影響されますので、神界にいるときのような神の本来の力を出せないのです。”
“なら、この肉体をなくせばオレは神になるのか?”
“これ以上は話すことを許されておりません。マスターの記憶が戻ればわかりますよ。”
“オレの記憶?”
“しゃべりすぎましたね。それでこれからなんですが。”
“相手を油断させるためには、ダンテさんやミレイ、ローザ、ミサキにもオレが生きていることは内緒にした方がよさそうだね。”
“はい。皇帝にもマスターが死んだと思わせておく方が良いかと思います。”
“心配だから、ミレイ達の行動を監視しておいてくれるか?”
“了解しました。”
オレはサイロンの街に転移した。怪しまれないように兵士の姿に変装している。
“ドラクさんやドリエさんはどこにいる?”
“はい。領主の館の地下牢に閉じ込められています。そこには皇帝もいて、警備が厳重です。”
“そうか。地下牢のドラクさんやドリエさんのいる場所まで、直接転移できれば救出も簡単なんだけどな~。”
“マスターの頭にマップがありますよね。そこにドラクやドリエの場所が表示されます。今のマスターなら表示される場所には転移できますよ。”
“転移って一度行った場所でなければだめなんじゃないの?”
“今まではそうでしたが。”
“なるほどね。封印の解除のおかげね。”
“はい。”
オレはドラクさんとドリエさんが閉じ込められている地下牢まで一気に転移した。突然オレが現れたので、2人は大声をあげそうになっている。まずいと思い、すかさずドリエさんの口に手を押し当てた。
「オレはダンテさんの味方だから。安心して。それより、足の怪我は大丈夫?」
「あなたはあの時の、でも、あの時私達をかばって、え?!」
「大丈夫だよ。この通り生きてるから。それより足の怪我は?」
血は止まっているが、弾が体内に残って化膿し始めていた。
「ちょっとそのままにしててね。」
オレは彼女の足を延ばして、『ヒール』をかける。すると、弾が傷口から飛び出し、傷がどんどん塞がっていく。
「もう大丈夫だよ。」
「ありがとうございます。」
「オレの近くに来てくれるかな。」
「はい。」
彼女達がオレに近づいた瞬間、オレは彼女達を連れて竜人の里まで転移した。地下牢の暗闇から突然故郷の竜人の里まで来たことに、2人は開いた口が塞がらない。
「こ、こ、ここは?」
「竜人の里だよ。」
すると、ルミエルさんが近づいてきた。
「ケンさん。どうしたんですか?」
「ああ、ダンテさんのお父さんと妹さんを保護したのさ。」
「ダンテ殿はまだ帰ってきていませんよ。」
「知ってるよ。それより、この2人をゆっくり休ませてあげて欲しいんだ。」
「わかりました。」
久しぶりに竜人の里に戻ってきた2人は、里の状況があまりにも違うことに驚いていた。まず、破壊されたはずの家が立ち並んでいる。それに、竜人族と人族が仲良く生活しているのだ。
「ケン様。これは?」
「ああ、旧帝国兵の人達だよ。彼らも好き好んで兵隊になったわけじゃないからね。今じゃみんな仲間さ。」
ドリエさんがオレの顔をまじまじと見て赤くなっている。
「どうしたの?」
「いいえ。別に。ケン様はお付き合いしている女性はいるんですか?」
「付き合ってるわけじゃないけど、パーティーメンバーが3人ね。みんな大切な仲間さ。」
「3人もいるんですか! その人達が羨ましいです。」
なんか、ドリエさんががっかりしているようだった。
“マスター。ミレイ、ローザ、ミサキが動きました。どうやら、竜人族達とサイロンに攻め込むようです。”
“わかった。すぐに行こう。”