ケンVS皇帝ブルータス
オレは再びサイロンに転移した。上空にいる100体のドラゴンが、次々と地上に向かって火炎を吐き出している。地上の建物は広範囲で燃えている。兵士達が下から銃で攻撃しているがドラゴン達は無傷だ。
「そのような小さな鉄の球など、竜化した我らには通用せぬ!」
「みんな、我に続け~!」
「オオ————!」
地上では、ミレイ、ミサキ、ローザが次々と兵士達を無力化している。魔法を付与した剣で片足や片手を切り落としているのだ。手や足を切り落とされた兵士達は泣きわめきながら地面を転がる。
「ギャー」
「あ、あ、足が————!」
「助けてくれ———!」
ミレイ、ローザ、ミサキの顔はまるで般若のようだ。どうやら怒りで我を忘れているみたいだ。領主の館では人質の竜人族の親子がいなくなったことが、皇帝ブルータスに報告され、ブルータスは顔を真っ赤にして怒鳴っている。
「人質の見張り役は誰だ! 前に出ろ!」
すると、数人の兵士達が前に出た。
「貴様らは何をしていたのだ!」
「バン! ボコ! ドテ!」
兵士達は皇帝に殴られ、顔から血を流しながら倒れた。
「量子破壊砲を用意せよ!」
「ハッ」
「兵士達を全員退避させろ!」
「ハッ」
「退避——————!」
「退避——————!」
兵士達がどんどん居なくなっていく。そして、街の中央広場にはミレイ、ローザ、ミサキがいた。
「ローザ。皇帝はどこにゃ?」
「恐らく、あの大きな建物よ。」
「ミサキ姉。建物の2階がなんか光ってるよ。」
「まずいわ。あれは、ケンを粒子に変えた武器よ。」
「ここじゃ逃げられないにゃ。」
皇帝の指が量子破壊砲の引き金を引いた。七色の巨大な光が広場にいるミレイ、ローザ、ミサキに襲い掛かった。
「キャー」
「ケン兄。ご免。仇とれなかった。」
「ケ————ン!」
彼女達は諦めて目を閉じた。だが、何も起こらない。
『グラトニー』
彼女達がゆっくりと目を開けると、そこにはケンの姿があった。ケンが右手を前に出している。七色の巨大な光線はケンの右手にどんどん吸い込まれていく。
「ケン?」
「本当に? ケンなの?」
「ケン兄—————!」
3人がオレに抱きついてきた。
「おいおい。まだ戦闘中なんだけど。」
「わかってるにゃ。」
「ケンどうするの? あの厄介な武器。」
「ケン兄。壊した方がいいよ!」
「ちょっとここで待っていてくれるか。皇帝のところに行ってくる。」
「行ってくるって! どうやって?」
「飛んでいくさ!」
「えっ?!」
オレは飛翔して一気にブルータス皇帝の前に出た。直属の精鋭部隊が一斉にオレに襲い掛かる。だが、オレが一睨みすると、彼らはその場から動かなくなった。いや、動けなくなったのだ。
「お前達どうしたんだ?」
皇帝が慌てて兵士達に声をかける。だが、誰も返事をしない。
「無駄だよ。オレが許可するまで、こいつらは口さえ動かせないさ。」
「貴様~! いったい何者なんだ?」
「お前に教える必要はないだろう!」
オレは剣を抜いた。剣からは神々しい光が放たれる。そして、オレの背後には黄金のドラゴンが幻影となって現れた。さすが皇帝だ。他のものと違って、神々しいオレの姿を見ても平然としている。
「お前に聞きたいことがある。」
「お前ごときに言う必要はない。」
「まあ、いいさ。お前、異世界人だろう? お前をこの世界に送ったのは誰だ?」
「なぜそのようなことを聞く! お前、何者なんだ?」
「オレはこの世界を平和にしたいだけさ。」
「私を倒しても平和にはならんぞ! 人間は欲深い生き物だ。やがて、第二の私が現れるだろうさ。それに、私には人族を統一する必要があるんだ。今のままバラバラな状態では、魔族には太刀打ちできまい。」
「魔族?!」
「そうだ! この世界最強の種族だ! あいつらが攻めてきたら、人族などひとたまりもない! まあ、いい。話は終わりだ! 決着を付けようじゃないか!」
皇帝ブルータスの体から、今まで見たこともないほどの巨大なオーラが現れた。さすが異世界人だ。どこかの神の加護を受けているのだろう。ブルータスが剣を抜いて斬りかかってきた。その動きは人の目には捉えられない速さだ。だが、オレはそれを軽く剣で受け止める。
「やはり、貴様。ただ者ではないな。お前はエリーヌの使いか?」
「違うけど!」
「とぼけるのか!」
とぼけるのかと言われても、オレはエリーヌ様には一度もあったことがない。オレが戸惑っていると、ブルータスが近距離から魔法を放った。指から光線を出したのだ。オレは転移で避けたが、オレのいた場所がドロドロに溶けている。
「危ないな~!」
「どうした? なぜ攻撃してこない? 」
「お前が根っからの悪人なら攻撃するさ。だが、お前からはそれを感じないのさ。」
「甘い奴だ。お前、もしかして、日本人か?」
「なぜだ?」
「俺も日本人だからだ。俺は訓練中に事故死したんだ。それを哀れんだ神が俺にもう一度チャンスをくれたんだ。俺は神に恩を返すのさ。」
「その神が邪悪な神でもか?」
「お前も日本人ならわかるだろう。受けた恩は一生忘れないのさ。」
「だが、その結果、世界の平和を乱すことになっていることも知っているだろう。」
「ああ、そうだな。だが、あの方の恩には報いねばならん。おしゃべりは終わりだ。行くぞ!」




