帝国との決戦(1)
その頃、オレ達は何も知らずにペロンからサイロンに向かって歩いていた。ペロンでオレ達を見張っていた者達の魔力は感じない。
“マスター!”
“どうした? リン。”
“ブルータス皇帝が全軍を率いてサイロンに向かっています。飛行船も10隻すべてが出陣しています。”
“オレ達たった4人に大した歓迎だな。”
“竜人族達に協力してもらってはいかがでしょうか?”
“確かに飛行船は厄介だよな。”
「ミレイ、ローザ、ミサキ。いよいよ決戦だ。」
「どういうこと?」
「ブルータス皇帝が全軍を率いてサイロンに向かっている。」
「えっ?!」
「なんでわかるの?」
「今、そのことを説明している暇はない。一旦、竜人の里に戻ってダンテさん達に話をしよう。」
「わかったにゃ。」
「了解。」
オレ達は竜人の里に転移で戻った。もう、オレ達が突然現れることに竜人族も旧帝国人も慣れてきている。
「ダンテさん。ルミエルさん。全員を集めて欲しいんだ。」
「わかりました。」
2人はそれぞれ走っていった。そして、広場に大勢の人が集まり始めた。その数、およそ5000人だ。広場に入りきらない。オレの姿を見て平伏しようとする者もいた。オレは風魔法に載せて全員に話をした。
「最初に、オレの名前はケンだ。オレは人族だ。神ではないからそのまま聞いてくれ。いよいよ、帝国と最終決戦の時が来た。相手の数は10万人いる。そして、飛行船が10隻だ。そこで、竜人族の精鋭には今回の戦いに参加してもらおうと思っている。」
すると、旧帝国兵の中から声が上がった。
「オレ達も戦うぞ———!」
「皇帝の軍事政治を打倒するんだ———!」
「平和な国を取り戻すんだ——!」
そこで、オレは旧帝国兵に声をかけた。
「みんなには人殺しはさせたくない。それに、知り合いや旧友もいるだろう。それよりもやって欲しいことがあるんだ。」
ここで代表してルミエルが聞いてきた。
「ケン殿。やって欲しいこととは何でしょう?」
「戦争が終わった後の帝国を平和な国にしてほしいんだ。むしろ、その方が大変なのかもしれない。貴族政治・金権政治を打破して、平等な社会を作ってほしい。貧しい人々が食べ物の心配をせずに暮らせる社会を築いて欲しいんだ。」
「ケン殿。あなたって人は・・・。わかりました。われわれが責任をもって政治改革を断行します。いいな! みんな!」
「おお————————!!!」
そして、解散となり、ルミエルとダンテがオレのところに来た。
「竜人族の皆さんの力を借りたいんだけど。」
「どうすればいいですか?」
「飛行艇が10機いるので、落としてもらえませんか?」
「お安い御用です。」
「だけど、その前に地上にいる高射砲を何とかしないといけないんだ。」
「ケン様。私からもいいですか?」
「何?」
「以前にも話しましたが、父ドラクと妹のドリエが捕虜になっています。何とか救い出したいんですが。」
「わかってるよ。オレが何とかするよ。」
こうして、オレ達とダンテ達はサイロンに向けて出発した。
「ケン。高射砲はどうするにゃ?」
「それに、ドラクさんやドリエさんを救い出すんでしょ?」
「ケン兄。このままだと犠牲者が出るよ。」
3人の心配はもっともだ。一人の死者も出さずに、これだけの戦争を終結させるのは土台無理な話なのだ。だが、オレは踏ん切りがつかない。悩んでいるうちに、サイロンの近くまで来てしまった。
“リン。皇帝ブルータスの正確な位置は分かるか?”
“はい。サイロンの領主の屋敷にいます。”
“人質のドラクさんとドリエさんは?”
“皇帝ブルータスと同じ屋敷内にいます。恐らく、いざという時のために近くに置いているのでしょう。”
“卑怯な奴だ。”
オレ達は作戦会議を開くことにした。
「ダンテさん達はオレが高射砲を無力化してから飛行艇を落としてください。」
「ケン様達はどうするのですか?」
「ミレイとミサキとローザは無力化した高射砲を、空間魔法を付与したこの鞄で回収してくれ。」
「了解にゃ。」
「オレは人質の救出と、皇帝ブルータスを拘束するよ。」
「わかりました。」
“リン。高射砲を無力化する方法はないか?”
“恐らく高射砲には戦車と同様に特殊な樹脂が施されていると思われます。”
“なら、『メタルメルトレイン』はだめだな?”
“いいえ。マスター。高射砲の本体には樹脂が塗られていますが、砲弾の方には塗られていません。”
“そうか? なら、砲弾を溶かしてしまえばいいな。”
“その通りです。マスター。”
そして、翌日早朝、いよいよ戦いが始まった。




