第7話 引き継いだ想い③
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「この町だ」
「ここも、小さな町っぽいね」
「ま、話が聞けたらすぐに出発だろうな」
魔法使いが住んでいると教えてもらった町は、今まで訪れた町の中では最も小さな町だった。町というよりは、集落と言った方がいいかもしれない。そんなわけで、図書館も本屋もなさそうなこの町では、魔法使いに話を聞く以外にすることはないだろう。
さっそく、魔法使いについて町の人に話を聞いてみることにした。
「あぁ、魔女子さんね。町はずれに住んでいるよ。この道の突き当りが森の入り口になっているんだけどね。そこに、ちょいとわかりにくいけど小さなトンネルがあって、そいつをくぐってその先にある細~い道を進んで行くんだ。そうするとね、今にも崩れそうな家が見えてくるから、そこだよ」
魔女子さん――この町に住んでいる魔法使いは、そう呼ばれているらしい。
ルルアとロクは、教えてもらった通りに道の突き当りまで進んだ。確かに、森の入り口のようだ。だが、どんなに目を凝らしても、小さいトンネルが見つけられない。少しわかりにくいとは言っていたが、本当にトンネルなどここにあるのか? 全くもって見つけることができないのだが?
「ロク、魔女子さんぽいニオイとかわからないの?」
「あのな、どんなニオイだよそりゃ」
ロクは凄い猫だが、さすがに魔女子さんのニオイはわからないらしい。それはそうだろう、会ったこともない人物なのだから。
もう少し詳しく聞いて来ようと戻ろうとした時、突然強い風が吹き、木々の葉や草花が一斉にざわざわと音を立てた。次の瞬間、茂みの中からぬーっと人の顔が現れ、目の前にいたルルアは咄嗟にロクにしがみついて固まった。こういう場合、「キャーッ!」と悲鳴をあげそうなものだが、案外驚きすぎると声が出ないものである。
「ご、ごめんなさい……驚かせちゃいましたか?」
茂みの中から現れたのは、いかにも魔法使いというような、黒い服とローブをまとったとんがり帽子の女性だった。おそらく、この女性が魔女子さんだろう。
ちなみにルルアの格好は、膝丈の白いワンピースで、ラベンダー色のフード付きローブという、あまり魔法使いには見えないスタイルだ。ラベンダー色のローブは、ルルアのお気に入りである。
「あんたが魔女子さんか?」
「……ま、まぁ……そうですね……そう、呼ばれてます」
「ちょっと話が聞きたくて来たんだが」
「ななな、何の話ですか? わ、私は何も……ほ、本当ですよ、何も……し、知らない……ですよ?」
明らかに動揺している魔女子さんに、ロクは怪訝そうに眉をひそめた。ルルアは相変わらずロクにしがみついたまま固まっている。
「俺達は、魔女狩りや魔法使いのことを調べて旅をしている。ここに、魔法使いが住んでるって言われたから、何か話が聞けると思って来たんだが」
「魔女狩り……ですか」
「まぁ、知らないなら用はないから帰るが」
「わ、私が知っていることでよろしければ……」
「そんじゃ、聞かせてくれ。てか、いい加減離れろよルルア」
ロクは、いつまでもしがみついているルルアを引き剥がした。
とりあえず魔女子さんの家に向かうことになり、茂みの隙間をくぐり抜けて細い道に出た。この茂みの隙間が、町の人の言うトンネルらしい――わかりにくい原因は、きっとトンネルという説明だからだ。普通に「茂みの隙間」と説明した方がわかりやすいのでは?
細い道を進んで行くと、本当に崩れそうなボロ小屋――古い家が建っていた。魔女子さんがドアを開けると、ギィィィ……と唸るような音を立てたのだが、本当に入って大丈夫な家なのだろうか? 床が抜けたりしないか心配しながら、そっと足をつくように家の中へと入ったルルアとロクだった。
「の、飲み物を用意してくるので、す、少しお待ちいただけますか?」
「話し聞いたらすぐに帰るし、別に気ぃ遣わなくていいぞ」
「そそそ、そんな……お、お客様ですし」
ぎこちない笑みを浮かべながら、魔女子さんはキッチンへと向かった。実は極度の人見知りなのかもしれない。
魔女子さんの家は、崩れそうな古い家ではあるが、家の中はとてもキレイに掃除されていた。本棚に並んだたくさんの本も、きちんと整理されていて読みやすそうだった。きっと、キレイ好きで几帳面な性格なのだろう。
「ルルアはここで、掃除と整理整頓の修行でもしたらどうだ?」
「私に対して失礼だよ。それくらいは……できる……たぶん」
空間収納の中は、絶対にロクには見せられない――ルルアは悟られないようにスッと席を立つと、本棚に並べられた本を物色した。本棚にはいろんな魔導書が並べられていて、その中の1冊がルルアの目に留まり、手を伸ばそうとしたところで、紅茶を入れてきた魔女子さんに声をかけられて席へと戻った。
『竜を操る魔法の書』――ルルアが目を留めた魔導書である。
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