第6話 引き継いだ想い②
ブックマーク&応援、ありがとうございます!
とっても励みになります…˖* ꕤ
翌朝、ルルアがいつものようにパンケーキを焼いているのを、ロクがジーッと見つめていた。
何で、パンケーキは真っ黒こげにならないんだ?
おそらく、最大級の謎だな。
******
朝食を食べ終えた2人と1匹は、道の端に立って向こう岸を眺めていた。すると、向こうの町からやって来たであろう1台の馬車が止まって、降りてきた御者が立ち尽くしている様子がうかがえた。渡ることは諦めたようで、町へと戻っていくのが見えた。
さて、どうしたものか――
「私が向こう側に渡って、おじさんの荷物を1個ずつ運んでみようか」
「いくらお嬢さんが魔法使いでも……それは大変じゃないかい?」
「……時間はかかりそうだが、迂回して1週間かかるよりは早いだろうな」
「ただね、問題があるんだよ」
ルルアが言う問題――それは、馬と馬車が運べるかがわからないということ。重さもだし、馬は暴れるかも知れないから。まぁ、ロクがフォローしてくれるって言ってるので、何とかなるだろう。
ルルアは荷馬車の荷物の重さを確認すると、おじさんにひと箱ずつ掲げてもらうようお願いして、杖を取り出して道の端に立った。
「じゃあ、行くね」
「無理しなくていいからね、お嬢さん」
「無理だったらちゃんと言うよ」
ロクを肩に乗せて宙に浮かび上がると、ゆっくりと向こう岸を目指して移動し始めた。これくらいは、魔法使いなので難なくできる。いかだを作って川を渡る方法も考えてはみたが、ロクが言うには見た目よりも流れが急らしく、安全に渡れるかはわからないらしい。きっと、こうするのが最善策だろう。
こうして、向こう岸に渡ったルルアは、おじさんに向かって手を振った。
「さ、頑張って荷物を運ぼうか」
ルルアは杖を構えると、箱がひっくり返らないように慎重に荷物を運び始めた。山積みになっている箱は中身を減らしてもらい、こっちで一旦空にした箱を送り返して残りを入れてもらった。時折強い風が吹いたりすると、箱が揺れてヒヤッとしたが、なかなかに順調に運べている。
途中で昼食の時間となり、おじさんに昼食を届けると、ルルアは運んだ荷物のそばでロクと一緒に昼食を食べた。盗まれることがないとは言えないので、荷物番は必要なのだ。
こうして、すべての荷物を運び終えたのは、日が傾き始めた頃。いよいよ、最難関の馬と馬車だ。馬車は重いだけで動かないので、先に馬車を運ぶことにしたのだが――想像以上に重さがあり、荷物を運び終えたあとでは魔力も体力も厳しかった。ロクが人化して手伝いに来てくれなかったら、きっと運べなかっただろう。
こうして、馬もロクと一緒に運び、おじさんを運ぶ頃にはロクは猫の姿に戻り、見知らぬ人が助けてくれたと説明して、この場を上手く収めたのだった。
******
「うぅ……疲れた」
宿のベッドにダイブしたルルア。さすがに今日は働いた気がする。
川を渡ったら、本当に町まではすぐだったので、荷馬車に荷物を積むとおじさんはすぐに出発してくれた。川を渡してくれたお礼にと、おじさんは銀貨を払ってくれようとしたが、ルルアたちは乗せてもらったのだからと受け取らなかった。すると、おじさんがこの宿を紹介してくれたのである。逆に申し訳ない気持ちもあったが、疲れ果てていたので、素直に泊まることにした。
一刻も早く橋が修復されて、おじさんが無事に帰れることを願うばかりだ。
「この先に、魔法使いが住んでる町があるって言ってたな」
「うん」
「地図だと……それっぽい町が3つあるが」
「明日、町の人に聞いてみる?」
「そうだな……ま、夜飯買ってくるついでに聞いてみるか。お前は寝てろ」
「ロクがとっても優しい人に見えるよ」
「俺はいつでも優しいんだよ」
ロクはしっぽでルルアの頭を叩くと、人間の姿になって部屋から出ていった。
こうしてロクが集めた情報によって向かう町が決定したので、翌朝、宿を出て朝市で朝食を調達すると、そのまま出発することにした。朝市で昨日のおじさんと、ばったり顔を合わせた時にはロクが人化していたので焦ったが、昨日手伝ってくれた人が、偶然同じ宿だったと説明してなんとかごまかした。そのまま町を出たので、バレることもないだろう。
魔法使いが住んでいるという町は、王都に向かう道からは少し外れてしまうが、急ぐ旅でもないので、ちょっと寄り道するくらい何も問題はない。いったい、どんな魔法使いが住んでいるのか? 年配者ならいろいろ話が聞けそうだなと、ルルアとロクの足取りが、ほんの少し軽くなるのだった。
*
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
ゆるりと楽しんでもらえてたら嬉しいです。次回もお楽しみに!




