閑話 黒猫の気まぐれ日記②
✕月〇日 晴れ 気温は……まあまあ
俺は……まぁ、黒猫だ。
あちこちと放浪して流れ着いたのは、魔法使いたちが暮らす集落。今は、そこで黒猫として自由気ままに暮らしている。
慣れ合うつもりもないので、集落の皆には無愛想な猫だと思われているかもしれないが、俺には関係のないことだ。
今日も適度に日が当たる木陰で、毛づくろいをしたり、ごろんと寝転がってみたり、木に登って集落を眺めてみたり、森の中を散策したりと、いつもと変わらない1日をすごし、いくつかあるお気に入りの寝床で星空を眺めた。
何もない1日。まぁ、退屈ではあるが、苦痛ではない。
平穏な毎日、すばらしいことだ。
こうして、月明かりのない星空の下で眠りについてどれくらい経った頃だろうか。魔法使いでも魔族でもない不思議な魔力を感じて、俺は目を覚ました。
南西の森の奥か?
俺は魔力を感じる森の奥へと向かうことにした。
それにしても……集落の連中は誰ひとりとして外に出てこなかったが、まさか気がついていないってことはないだろうな?
もしも気がついていなかったのだとしたら……本当に魔法使いなのか? と疑いたくなるぞ。別にどうでもいいことだが。
集落を出て森の中を進んでいくが、特段いつもと変わった様子はない。森の生き物たちは、皆静かだ。
俺は森の奥へと足を進めた。この先には確か、草原が広がっていたはず――だったのだが。
花畑だと?
目の前に広がる光景は、見たこともない花畑だった。
ここには何度も来たことがあるのだ、場所を間違えるはずもない。数日前にも来ているが、ただの草原だった。
俺は、夢でも見ているのだろうか?
それにしても――なんて心地の良い花畑なのだろう。やわらかい風に揺れる花々からは、癒しの粒子が舞っているようだった。
ゆっくりと花畑の中を進んでいくと、不思議な魔力を放っている根源と遭遇した。
花の中に埋もれながら眠るガキ――じゃなくて、少女。
なんだってこんな場所で眠ってるんだ?
無防備すぎるだろ、魔物に襲ってくださいと言っているようなものじゃねーか。
どうしたものかと眺めていると、ゆっくりと目を開けるもんだから、俺はびっくりして思わず距離を取ってしまった。
こうして身を潜めてじっくりと様子をうかがうことにしたが……何やってんだ? 俺。
空がどんどん明るくなってきた頃、ようやく少女は花畑から出ることにしたらしい。俺は距離を置きながら後をつけた。
気づかれないようにできるだけ気配を消していたはずなのだが、突然少女が足を止めて杖を取り出して身構えたもんだから、焦って変な汗が噴き出してきた。思わず息も止めてしまい、本気で死ぬかと思ったぜ。
あの杖……そうとうな魔力の持ち主だろ、まだガキのくせに。
杖を手にしたまま歩き出した少女を、俺は気づかれないよう細心の注意を払いながら追いかけた。
何やってんだ? 俺は……
この森の道は1本道なので、30分も歩けば集落の入り口――のはずなのだが。
この少女、集落に向かっていたのではないのか?
すっかり日が暮れてしまったぞ?
そもそも、なんで同じ道をぐるぐると回っているんだ?
俺にはさっぱり理解できないが……まぁ、もう少し様子を見ることにした。
そして、翌日――
あいつ、何食べてんだ?
木の枝を折って葉っぱを口に入れたと思ったら、吐き出して木の枝を投げ捨てた。その後、魔法で作り出した花を口に入れると、涙を流しながら口から出した。
バカなのか?
その日も日が暮れようとしていた頃、少女はようやく集落の入り口である小道に入っていった。
やはり集落を目指していたようだが……同じ道をグルグルと回っていたのには、何か意味があったのか?
こうして、少女は集落に向かって歩いていき――倒れた。
面白い。
目が覚める頃、見舞いにでも行ってやるとしよう。
何もない、平穏な毎日もいいが、たまにはこんな出来事があってもいい。
*
ルルアが魔法使いの集落にやってきた時のロクの日記ฅ•ω•ฅ




