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第17話 山岳地帯④

 朝食のパンケーキを食べて野営の片付けをすると、早々にルルアたちは出発した。約1名増えたことにより、ルルアたちの食料の在庫は危機に瀕しているため、少しでも早く山岳地帯から抜け出したいのだ。現地調達だけでは十分な食料が手に入らない――増えた約1名が本当に厄介すぎる。


「ルルアさん、そろそろ僕もテントで寝せてくださいよ」

「何で?」

「僕もルルアさんと一緒に寝たいです」

「ムリ」

「ななな、何でですかぁ!? 僕は怪しくないってわかってますよね?」

「……十分怪しい」


 なぜ、この青年は自分が信用されてると思っているのだろうか? 素性もわからず、断っても勝手について来ている人物が、そう簡単に信用されるわけがないだろう。全くもって迷惑極まりない。しかも、遠慮というものも知らないのだから、本当に最悪の同行者だ。

 そんな人物と一緒に、テントなどという狭い空間で過ごせるはずがないだろうが。広い部屋だとしてもお断りだ。


「雪原だよ、ロク」

「迷ったら終わりだな」


 山頂から少し下ったところに、広大な雪原が広がっていた。目印になりそうな大きな木も見当たらないため、迷ったら生死をさまようことになりかねない。あの老婆は、こんな場所を通って来たんだ――よく来ているようだし、迷うこともないのだろうか?


「……何か、近づいて来るよ」

「魔獣だな」

「ひぃ~! ままま、魔獣!?」

「煩い、黙れ」


 ルルアとロクが警戒して様子をうかがっていると、白銀色の大きな狼のような魔獣が姿を現した。殺意は感じられないが、油断はできない。

 2人が戦闘態勢を整えながら魔獣と対峙していると――魔獣はロクの前に座り、しっぽをぶんぶんと振った。


「あ?」

「……ロクのこと、好きなんじゃない?」

「…………」


 ロクが複雑そうな顔をしながら、目の前の魔獣をジーッと見ていると、ベロンと大きな舌で顔を舐められ、心の底から嫌そうな顔をした。


「オイ、舐めるんじゃねぇ」

「良かったねロク。懐いてもらえて」


 きっとこの魔獣は、人間を襲ったりはしていないだろう。そう思った矢先、青年には唸り声を上げていた。おそらく、襲いはしないが気に入らない奴には容赦なく威嚇はするのだろう。

 魔獣は、ロクの隣に立つルルアに目を向けると、徐に近づいてきた。舐めるんじゃないぞと心の底から願いながら、若干後ずさりしていると、ルルアの上半身が魔獣の口の中に収められ、さすがにロクが慌てて魔獣をルルアから引き離した。


「甘噛みするならアイツにしろ」

「ぼぼぼ、僕を指差すのやめてもらえます!?」

「……今すぐお風呂入りたい」






 ******






 魔獣は、この雪原に4~5体くらいの群れで棲みついているらしく、目の前の大きいのがリーダーのようだった。彼らは、この雪原を通る人が迷わないように、道案内をしているらしい。

 それにしても、誰もがこの洗礼を受けているのだろうか?

 だとしたら、この雪原に是非ともお風呂を設置してもらいたい。毎回ここを通るたびにこれじゃあ、さすがに困る。


「猫だったら食べられてたね」

「安心しろ、腹破って出てくる」

「……さすがに可哀想だよ」

「ぼ、僕が食べられたらすぐに助けてくださいね!」

「食べないでしょ」

「食べないな」

「何でですか!?」


 青年を威嚇はしても、じゃれることはないだろう。

 こうして、魔獣のリーダーに案内されて迷うことなく雪原を抜けたルルアたちは、お礼を言って麓を目指す。去り際に、ロクが魔物に人間を襲わないよう釘を刺していた。ただし、悪い奴らは別だと付け加えて。


 雪原から先の道は、比較的に緩やかな斜面で道も歩きやすく、反対側と比べるととても安全そうに思えた。相変わらず気候が入り乱れていて、いろんな景色を見ることにはなったが。

 だいぶ山を下って来たところで、水がとてもキレイな小川を見つけて休憩をしていると、近くから悲鳴が聞こえてきて、ルルアとロクは慌てて倒木の橋を渡ってかけつけた。もちろん、青年は邪魔になるので置いてきた。何か文句を言っていたようだが、聞こえなかったことにする。


「た、助けてくれ!」

「煩い! 騒ぐんじゃねぇ! 食料と金を出しな!」


 山賊だ。

 反対側は歩きにくいぶん、山賊も潜みにくかったのだろう。こちら側は、歩きやすく山賊も潜みやすいようで、襲われる人は一定数いるらしい。麓の町の警備隊や、町に雇われた傭兵などが山賊狩りをしているようだが、拠点を壊滅させない限り山賊はいなくならないだろう。拠点の発見は、そんなに難しいことなのだろうか?


「アイツら締め上げて、拠点探すか」

「うん、そうだね」


 見たところ、山賊は5人。ロクだけで十分に倒せる人数だ。ルルアの仕事は、ロクがボコった相手を逃げられないように拘束するだけで良さそうだ。

 こうして、あっという間に全員がボロボロの状態で拘束された。


「ホントに山賊か? 弱すぎだろ」

「新人なんじゃない?」


 山賊に襲われていた人達に大きなケガ人はいなかったので、すぐにその場から出発するようだった。ルルアは彼らに青年に対しての伝言をお願いして、ロクと一緒に山賊の拠点捜しを始めた。






 ******






「少し用事が出来たので、戻るまでそこを絶対に動くな……だそうです」

「え、どういうことですか!?」

「それでは、お伝えしましたので我々はこれで」

「あ、ちょっと! 用事って!? どれくらいで戻って来るんですか!?」


 ルルアからの伝言を受け取った青年は、しばらくの間ここで1人お留守番だ。



 *

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

暇つぶしとして楽しんでもらえてたら嬉しいです。次回もお楽しみに!

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