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第18話 山岳地帯⑤

 拘束した山賊たちが逃げないように、道路の端に集めて結界を張り、立て看板を設置した。


 ――只今山賊の拠点を捜索中につき、この山賊たちはここで一時待機中。くれぐれも食べ物や飲み物を与えないようにお願いします。近づかなければ見物はご自由にどうぞ。


「これで良し」

「オイ、俺たちに失礼なことが書かれている気がするんだが?」

「気のせいでしょ」


 立て看板は山賊たちには見えないよう、真ん前に立ててある。通行人が通れるスペースも十分に確保されているので、これで問題はないだろう。


「もう一度聞くけど、拠点は向こうで間違いないんだよね? もし違ってたら……ロクに酷い目にあわされるよ」

「……どんな脅しだよ、俺が優しかったらどうすんだ?」

「嘘は言ってねぇ」


 この中のリーダーであろう山賊が、ニヤリと笑みを浮かべながら言った。よほど、拠点が見つからない自信があるのだろう。


「行こう、ロク」

「あぁ」


 2人は拠点捜しへと出発した。






 ******






「こっちって言ってたけど」

「見たところ、それらしいものはないな」


 山賊に聞いた話だと、この森のどこかに拠点があるらしい。あの5人が捕まろうと大した問題ではないとも言っていた。ということは、拠点には大勢の山賊がいるのだろう。

 それにしても、拠点となるような洞窟も建物も見当たらない。いったい、どこに潜んでいるのだろうか?


「お昼ごはん食べたあとで良かったね」

「そうだな」

「山賊だから、食料たくさんあるんかも。少しわけてくれないかなぁ」

「他人から奪った食料だろ。俺はそんなもん食いたくないぞ」

「あ、そっか」


 そんな話をしながら歩いていると、突然ロクが立ち止まった。


「どうしたの?」

「さっきも通ったな、ここ」

「……私にはよくわからないけど」

「そりゃ、そうだろうよ」


 魔法使いの集落から最初の町までは1週間もあればつく距離だったが、ルルアが半月も森で彷徨ったため、町に着いたのは集落を出て3週間程経ってからだった。そんなルルアが、さっき通った道を覚えているはずがない。

 どこかに結界など張られていただろうか?

 もう一度、注意深く探りながら同じ道を進んでみることにした。しかし――


「またさっきの場所だ。どうなってる?」

「うーん……じゃあ、ロクは私から離れてつい来て。もしもどこかで戻されるんだったら、私が消えるんじゃないかな? ロクがその場所で待ってたら、私はロクの後ろからやって来るでしょ?」

「そうしてみるか」


 ルルアの提案通りに歩いてみると、予想通りルルアの姿が突然消えた。そしてしばらくすると、ロクの後ろからルルアがやって来た。


「あの辺りだ、ルルアが消えたのは」

「うーん……何にも見えない」


 ルルアが目を細めたりしながらその場所を見てみたが、よくわからなかった。

 すると、徐に杖を構えて魔法を放ったルルア。放たれた魔法はその場所で消えると、後ろからやって来た。


「面白い」

「面白がってんじゃねぇぞ。危ねぇだろうが!」


 ロクがルルアの頭をはたくと、ルルアは涙目になりながら頭をさすり、今度は杖を突き出してみた。すると杖の先端が消えた。


「ふぅん、なるほど」


 ルルアは、杖が消えた真下の地面に印しをつけながら、少しずつ場所を変えていった。そうしてわかったことが、おそらく拠点を囲むように、この消える壁みたいなものが設置されているということだ。


「この中に拠点があるよね、確実に」

「そうだな。問題は、この壁をどうするかだ」

「この壁って……どのくらいの高さまであるんだろ?」

「さぁな」


 ルルアとロクは空を見上げた。そして――ルルアが、杖の先端が消えた状態で上空へと浮かび上がると、途中で杖の先端が現れた。そこが、壁の頂上ということだ。上空から壁の内側に向けて杖を突き出してみたが、杖の先端は消えることがなかったので、この壁に天井がないことが判明。上空からなら壁の内側に入れることがわかった。


 ルルアが猫になったロクを魔法で引き上げて壁の中に侵入すると、先に拠点を制圧することにして捜索を始め、簡単に山賊の拠点は発見された。森の奥にある洞窟を拠点として使っているようだった。

 木の陰から様子をうかがう2人。

 絶対に見つからない自信があるのだろう。見張りを立てることもなく、昼間から酒を飲んで大騒ぎしている。


「ここからじゃあ、洞窟の中はわからないね」

「炙り出せば皆出てくんだろ」


 かなり物騒ではあるが、それが手っ取り早い方法だろう。洞窟から出てきた山賊たちが逃げられないように、洞窟前に結界を張って閉じ込めることにする。

 それでは、炙り出し作戦開始だ。


 ルルアが洞窟前の上空に向かって杖をかざし、魔法を放つと魔法陣が現れ、そこからひらひらと花びらが舞い降りた。洞窟前にいた全員がそれを見上げ――眠りに落ちたところを、ルルアが魔法で拘束する。

 その間にロクは洞窟前に結界を張った。


「そんじゃ、燃やしてみるか」


 ロクはニヤリと笑みを浮かべると、洞窟内に向かって魔法で火を放った。もくもくと煙が溢れてきてしばらくすると、中から次々と山賊たちが逃げ出してきた。外に出てきた山賊は、何が起きているのかもわからないまま、ルルアの魔法で拘束される。

 その数、およそ30名。


「案外あっという間だったね」

「ホントに山賊か? 弱すぎだろ」

「何なんだ! 貴様らは!」

「ただの魔法使い。じゃあ、ここで大人しくしていてね」


 全員を拘束してはいるが、念のため結界で囲って(もちろん、天井もある)、ルルアとロクは見えない壁を解除するため、魔法陣を探しに向かった。






 ******






「あれ、まだいたんだ?」

「ここから動くなって言ったのルルアさん達ですよね!?」


 山賊たちの結界を解除して休憩していた場所まで戻ると、片づけをして改めて麓に向かって出発した。当たり前のように青年も一緒について来たが……いったい、どこまで一緒に来るんだろうか? もしかして、まだ魔法を諦めていないんだろうか? 無理なものは無理なのだが。


 途中、拘束していた5人の山賊を連れていくか悩んだ末、麓の町にいる警備隊にお願いすることにしてその場を離れた。立て看板も設置してあるし、不用意に近づこうとする人もいないだろう。

 拠点で捕まえた山賊たちは、人数が多いので当然あのまま洞窟前に拘束中だ。全員まとめて警備隊にお願いするのが妥当だろう。


 ようやく、王都までの道中で最難関かと思われた山越えが終わる。

 これでかなり王都に近づいたと思うと、自然と足取りが軽くなるルルアだった。






 山岳地帯~Fin.~



 *

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

のんびりと進んでいく物語なので、ゆるりと楽しんでもらえてたら嬉しいです。

次回もお楽しみに!

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