第18話 山岳地帯⑤
拘束した山賊たちが逃げないように、道路の端に集めて結界を張り、立て看板を設置した。
――只今山賊の拠点を捜索中につき、この山賊たちはここで一時待機中。くれぐれも食べ物や飲み物を与えないようにお願いします。近づかなければ見物はご自由にどうぞ。
「これで良し」
「オイ、俺たちに失礼なことが書かれている気がするんだが?」
「気のせいでしょ」
立て看板は山賊たちには見えないよう、真ん前に立ててある。通行人が通れるスペースも十分に確保されているので、これで問題はないだろう。
「もう一度聞くけど、拠点は向こうで間違いないんだよね? もし違ってたら……ロクに酷い目にあわされるよ」
「……どんな脅しだよ、俺が優しかったらどうすんだ?」
「嘘は言ってねぇ」
この中のリーダーであろう山賊が、ニヤリと笑みを浮かべながら言った。よほど、拠点が見つからない自信があるのだろう。
「行こう、ロク」
「あぁ」
2人は拠点捜しへと出発した。
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「こっちって言ってたけど」
「見たところ、それらしいものはないな」
山賊に聞いた話だと、この森のどこかに拠点があるらしい。あの5人が捕まろうと大した問題ではないとも言っていた。ということは、拠点には大勢の山賊がいるのだろう。
それにしても、拠点となるような洞窟も建物も見当たらない。いったい、どこに潜んでいるのだろうか?
「お昼ごはん食べたあとで良かったね」
「そうだな」
「山賊だから、食料たくさんあるんかも。少しわけてくれないかなぁ」
「他人から奪った食料だろ。俺はそんなもん食いたくないぞ」
「あ、そっか」
そんな話をしながら歩いていると、突然ロクが立ち止まった。
「どうしたの?」
「さっきも通ったな、ここ」
「……私にはよくわからないけど」
「そりゃ、そうだろうよ」
魔法使いの集落から最初の町までは1週間もあればつく距離だったが、ルルアが半月も森で彷徨ったため、町に着いたのは集落を出て3週間程経ってからだった。そんなルルアが、さっき通った道を覚えているはずがない。
どこかに結界など張られていただろうか?
もう一度、注意深く探りながら同じ道を進んでみることにした。しかし――
「またさっきの場所だ。どうなってる?」
「うーん……じゃあ、ロクは私から離れてつい来て。もしもどこかで戻されるんだったら、私が消えるんじゃないかな? ロクがその場所で待ってたら、私はロクの後ろからやって来るでしょ?」
「そうしてみるか」
ルルアの提案通りに歩いてみると、予想通りルルアの姿が突然消えた。そしてしばらくすると、ロクの後ろからルルアがやって来た。
「あの辺りだ、ルルアが消えたのは」
「うーん……何にも見えない」
ルルアが目を細めたりしながらその場所を見てみたが、よくわからなかった。
すると、徐に杖を構えて魔法を放ったルルア。放たれた魔法はその場所で消えると、後ろからやって来た。
「面白い」
「面白がってんじゃねぇぞ。危ねぇだろうが!」
ロクがルルアの頭をはたくと、ルルアは涙目になりながら頭をさすり、今度は杖を突き出してみた。すると杖の先端が消えた。
「ふぅん、なるほど」
ルルアは、杖が消えた真下の地面に印しをつけながら、少しずつ場所を変えていった。そうしてわかったことが、おそらく拠点を囲むように、この消える壁みたいなものが設置されているということだ。
「この中に拠点があるよね、確実に」
「そうだな。問題は、この壁をどうするかだ」
「この壁って……どのくらいの高さまであるんだろ?」
「さぁな」
ルルアとロクは空を見上げた。そして――ルルアが、杖の先端が消えた状態で上空へと浮かび上がると、途中で杖の先端が現れた。そこが、壁の頂上ということだ。上空から壁の内側に向けて杖を突き出してみたが、杖の先端は消えることがなかったので、この壁に天井がないことが判明。上空からなら壁の内側に入れることがわかった。
ルルアが猫になったロクを魔法で引き上げて壁の中に侵入すると、先に拠点を制圧することにして捜索を始め、簡単に山賊の拠点は発見された。森の奥にある洞窟を拠点として使っているようだった。
木の陰から様子をうかがう2人。
絶対に見つからない自信があるのだろう。見張りを立てることもなく、昼間から酒を飲んで大騒ぎしている。
「ここからじゃあ、洞窟の中はわからないね」
「炙り出せば皆出てくんだろ」
かなり物騒ではあるが、それが手っ取り早い方法だろう。洞窟から出てきた山賊たちが逃げられないように、洞窟前に結界を張って閉じ込めることにする。
それでは、炙り出し作戦開始だ。
ルルアが洞窟前の上空に向かって杖をかざし、魔法を放つと魔法陣が現れ、そこからひらひらと花びらが舞い降りた。洞窟前にいた全員がそれを見上げ――眠りに落ちたところを、ルルアが魔法で拘束する。
その間にロクは洞窟前に結界を張った。
「そんじゃ、燃やしてみるか」
ロクはニヤリと笑みを浮かべると、洞窟内に向かって魔法で火を放った。もくもくと煙が溢れてきてしばらくすると、中から次々と山賊たちが逃げ出してきた。外に出てきた山賊は、何が起きているのかもわからないまま、ルルアの魔法で拘束される。
その数、およそ30名。
「案外あっという間だったね」
「ホントに山賊か? 弱すぎだろ」
「何なんだ! 貴様らは!」
「ただの魔法使い。じゃあ、ここで大人しくしていてね」
全員を拘束してはいるが、念のため結界で囲って(もちろん、天井もある)、ルルアとロクは見えない壁を解除するため、魔法陣を探しに向かった。
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「あれ、まだいたんだ?」
「ここから動くなって言ったのルルアさん達ですよね!?」
山賊たちの結界を解除して休憩していた場所まで戻ると、片づけをして改めて麓に向かって出発した。当たり前のように青年も一緒について来たが……いったい、どこまで一緒に来るんだろうか? もしかして、まだ魔法を諦めていないんだろうか? 無理なものは無理なのだが。
途中、拘束していた5人の山賊を連れていくか悩んだ末、麓の町にいる警備隊にお願いすることにしてその場を離れた。立て看板も設置してあるし、不用意に近づこうとする人もいないだろう。
拠点で捕まえた山賊たちは、人数が多いので当然あのまま洞窟前に拘束中だ。全員まとめて警備隊にお願いするのが妥当だろう。
ようやく、王都までの道中で最難関かと思われた山越えが終わる。
これでかなり王都に近づいたと思うと、自然と足取りが軽くなるルルアだった。
山岳地帯~Fin.~
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最後までお読みいただき、ありがとうございました!
のんびりと進んでいく物語なので、ゆるりと楽しんでもらえてたら嬉しいです。
次回もお楽しみに!




