第12話 恋愛を成就させる魔法の花③
花かごに1滴の雫が落とされると、怪しく光りを放ち始めた。それを見て笑みを浮かべる男性。
翌日、その花かごを受け取った女性は、男性に好意を寄せるようになった。
そんな2人を近くで見ていたのは、色欲の悪魔。ニヤリと笑うと、媚薬の代償として、男性から数十年分の命を吸い取った。
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ルルアたちが、山岳地帯の麓の町にやって来て3か月くらいが経った。この町では、寒い時期の大半が吹雪になるらしく、広場で花屋を開けられる日は限られていた。それでも、ルルアが花屋を開いた日にはたくさんの人が広場に集まって来て、お店の前に列ができるほどだった。そんなわけで、ありがたいことに順調に路銀は貯まっている。
今日は、何日ぶりかで青空が広がっていたので、ルルアはいつものようにたくさんの花を用意して、広場で花屋を開いていた。
ロクは、今は別の仕事に行っていて、後から手伝いに来てくれる予定だ。時々1人で仕事をしに行くが、どんな仕事をしているかは知らない。遊んでるわけでもなさそうだし、別に聞く必要もないだろうとルルアは思っている。
路銀も貯まってきたことだし、今日花を売ったら魔女狩りや魔法使いのことを調べに行こうかな……などと考えながらぼんやりと店先に座っていると、1人の男性がルルアの前に立っていた。
「両想いになれる花をくれ!」
「…………は?」
両想いになれる花だと?
そんな花、あるわけがないだろうが。
何を言ってるんだ? この人は――
「両想いになれる花だよ、あるんだろう?」
「そんな花、あるわけないでしょ」
「嘘つくなよ、アイツには売っただろう?」
「……知らないんだけど……え、誰?」
ルルアにはまったく心当たりがない。てゆーか、誰よ?
「そんな魔法みたいな花ないから。ほら、買わないなら離れてよ」
「だって、アイツはここの花で両想いになれたんだぞ!」
「いや、だから、誰だか知らないし。そもそも、そんな花は売ってないから」
もしも、花にそんな魔法をかけられたとして、魔法で両想いになったところで、そんな恋愛は偽りの愛であり、いずれバレてしまうだろう。長続きするはずもない。魔法で誰かの気持ちを自分に向けるなど、まるで魔族が人間を操るようなものではないか。
頑なに粘る男性だったが、ないものはないのだからと、ルルアは丁重にお断りして帰ってもらった。当然のことながら、納得していない様子で去っていく男性。ルルアは大きなため息をつきながら、店先に座って空を見上げた。
それから順調に花が売れていき、そろそろお昼ご飯にしようかなと思っていた矢先。先程の男性が、カップルを連れて戻ってきた。そのカップルを見て、ルルアは眉間にシワを寄せた。これは――
「こいつが、ここで花を買ったって言ってる」
「まぁ、花は売ったけど?」
「あ、いや……えーと……」
目を泳がせるカップルの彼氏。彼女であろう女性が「何の話?」と顔を見上げている。
「媚薬か?」
背後から現れたロクの言葉にビクッと肩を震わせて、見るからに動揺していた彼氏。そんな彼を見ていた男性は、状況が飲み込めない様子でロクと彼の顔を交互に見ていた。
「ち、違う! そんなものは……つ、使ってない! い、行こう!」
「あ、オイ!?」
彼氏はあからさまに動揺しながら、彼女の手を強引に引っ張って広場から出て行った。残された男性は呆然と立ち尽くしている。
「わかったでしょ? ここでは、両想いになれる花なんて売ってないよ」
「あれは、悪魔から媚薬でも手に入れたんだろ。代償として、命吸われてると思うぞ」
「悪魔!?」
「人の心を操ってまで両想いになりたいなら、あなたも同じことをすればいい。おすすめはしないけどね」
男性は、そこまでして想い人の心を自分に振り向かせたくはないと言い、花かごを1つ選んで代金を手渡した。ルルアは男性から代金と花かごを受け取ると、可愛らしくリボンを結んで花かごを男性に返した。
「まぁ、頑張ってよ」
「……うん、ありがとう」
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「えーと……何これ?」
「さぁな」
翌日も晴れていたので、ルルアとロクが家を出て歩いていると、媚薬の香りが漂っていた。怪訝そうな顔をしながら広場まで行ってみると、何とも異様な空気に包まれていて、そこら中カップルだらけになっていた。
路銀がだいぶ貯まってきたので、今日は魔女狩りについて調べてみようとやって来たのだが――それどころではなさそうだ。
露店のおじさんと目が合うと、手招きして呼ばれた。
「何か、おかしくないか? この町の連中」
「そうだね。おじさんは大丈夫?」
「俺は別になんともねぇよ」
「そっか、それは良かった。でも、ここの空気は良くなさそうだから、口んとこ何か巻いといたほうがいいかもしれないよ」
「マジか!?」
露店のおじさんは、慌てて首に巻いていたタオルを口に巻いた。息苦しくてたまらないと言っていたが、この状況が改善されるまでは我慢した方が良さそうだ。
「魔女狩りよりも、こっちが先かな」
「そうだな」
ルルアとロクは、おそらくこの元凶であろう悪魔を見つけ出すため、人目につかない場所に移動して悪魔の気配を探ることにした。
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