第11話 恋愛を成就させる魔法の花②
寒さで震えながら目が覚めたルルアは、カーテンを開けて窓の外を見て目を見開いた。昨日の夜から降り始めた雪が積もって、辺り一面真っ白な世界になっていたのだ。
ベッドから降りたルルアは、そのまま外に飛び出して行った。そんなルルアを見ながら、暖炉の前で猫の姿で丸くなっていたロクは、あくびをしながらもうひと眠りしようと顔をうずめた。
一方、外に飛び出したルルアはと言うと。
「さ……寒いよぅ……」
降り積もった雪の中に膝上まですっぽりと埋もれてしまい、身動きが出来なくなっていた。吹き付ける冷たい風に、ぶるぶると身を震わせながら涙を流す。
そうして、何とか雪の中から抜け出して家の中に入ると、暖炉の前に座ってロクを抱き上げた。
「おい、冷たいだろうが! 離せ!」
「寒いよぅ、温めてよぅ」
「断る!」
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「あんたら、そんな薄着で寒くないのか?」
ルルアとロクが広場で花を売り始めると、露店のおじさんが声をかけてきた。もちろん、寒くないわけがない。防寒具を持っていないルルアとロクは、ぶるぶると震えながらおじさんに目を向けた。
「さ、寒いけどさ……お金稼がないと……あったかい服が買えないんだよ」
「……気の毒すぎるだろ」
見かねたおじさんが、ルルアとロクに毛布を持って来てくれた。ルルアがお礼に、店先に飾れそうな花かごを渡すと、おじさんはさっそく飾ってくれた。自分の花が飾られているのを見るのは、何だか嬉しく感じる。
おじさんの毛布で、今日は何とかしのげるかと思っていたが、花を売るのにジーッとしていると、どんどん体が冷えてくる。これでは凍死してしまいそうだ。魔法で焚き火をとも考えたが、さすがに広場で焚き火はダメだろう。何か防寒対策を考えないと、この先ここで花屋を開くのは厳しそうだ。
寒さに耐えながら花を売っていると、昨夜花かごを買ってくれたご婦人が、また花を買いに来てくれた。
「花かごを飾っていたら、娘も部屋に置きたいって言ってね。ついでにお友だちにもプレゼントしたいから、花かごを3つ頂戴な」
「はい、どうぞ」
「それとね、あなた達とっても寒そうだから、これでも飲んで温まって」
ご婦人が、カゴから何かを取り出してルルアとロクに渡した。2人の手にあるのは温かいスープ。なんていい人なんだろう。ご婦人が立ち去ると、さっそくスープを頂いた。体の芯から温まる気がして、ほっこりと笑顔になる2人だった。
ルルアの花屋は、最初は客足がまばらだったが、少しずつ訪れる人が増えていき、日暮れ前には完売となり、それなりのお金を稼ぐことができた。これで、ある程度の防寒対策ができるだろう。露店のおじさんに毛布を返すと、店じまいの片付けをして、さっそく防寒具を取り扱っている店を探した。
この町には、山岳地帯を抜ける旅人が多く訪れるため、防寒対策の道具が充実していた。店員に聞いて知ったのだが、これから行こうとしている山岳地帯には、暑い季節でも雪が消えない場所が多いらしい。もしも、足止めされずに入っていたら、暑い時期だったとしてもルルアたちは凍死の危機に遭遇していたかもしれない。足止めされたことに感謝だ。
その日は、とりあえず店員に勧められた、外で使える小型暖炉と防寒の上着を購入すると、食堂で夕食を食べてから家に帰った。
翌朝――
昨日買ったあったか上着を着て外に出たルルアが、一瞬で雪だるまになって戻ってきた。それを見て笑いが止まらないロクに、ルルアは頬を膨らませた。
「ロクも外に出てみなよ」
「嫌だね」
昨日は、雪は積もっていたがそんなに雪は降っておらず、晴れ間もあった。ところが今日の外は猛吹雪で、一瞬でも外に出れば、先程のルルアのように雪だるまになってしまう。これでは広場で花を売るのは無理だろう。せっかく防寒具を揃えたが、今日は家で過ごすことになりそうだ。
「食材、あんまり買ってなかったよね? パンケーキばっかじゃ、さすがに飽きるでしょ?」
「…………」
ロクは、ある日のパンケーキを思い出していた。いつものようにルルアが焼いたパンケーキの隣に、黒い物体が添えられていた。
「何だ?これ……」
「木になっていた実を焼いてみたんだけどね。何か、じゃりじゃりして香ばしくなったよ」
ロクは、あの日の会話を思い出しながら言った。
「普通のパンケーキでいい。何もするな」
「野菜とか果物なら少しあるよ?」
「いいか? 何もするな」
窓の外を眺めながら、ほんの少しの間でいいので、何か食べるものを買いに行くくらいの時間、吹雪が止むことを祈るロクだった。
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