第3話 必勝祈願
猫巫女の恋愛祈願が、駄目だった。
成功しなかった。
「ごめんにゃん。初日ちゃーん…」
猫巫女は、半泣きだった。
まだまだ、修行中の猫巫女。
大鈴ロッドを握りしめて、うなだれる。
「元々、縁が無かったのね。気にしないで。コミコ」
初日ちゃんは、猫巫女・コミコの頭をなでる。
なでなで。
「清原厚美さんも、しょうがないって言ってたから。気にしないで。コミコ」
なでなで。
「…でも、アタシの祈願が悪かったんだにゃん」
「悪くないわよ」
「…初日ちゃーん」
猫巫女は、初日ちゃんにしがみついた。
落ち込む猫巫女。
立派な福を呼ぶ招き猫になるためには、まだまだ、修行が必要なのだ。
「…次のお手伝い希望のお話してもいいかしら」
初日ちゃんは、気を取り直して、猫巫女に言う。
「…次にゃん?」
「そう。伊集院くんの必勝祈願なの」
「必勝祈願…?」
猫巫女は、首をかしげる。
第3話 必勝祈願
招福神社の前に、リムジンが止まった。
「お坊ちゃま、招福神社に到着しましたニャ」
「ジミー。ご苦労だぜ」
颯爽と、リムジンを降りる美少年。
その側には、猫耳と猫の尻尾の猫又執事がいる。
伊集院翔平。16歳。
黒髪のさらさらショートヘア。
洗練された顔立ちと、自信に満ちあふれた瞳。
野球部所属の野球大好きっ子。
ジミーと呼ばれた猫又執事を引き連れて、招福神社の鳥居をくぐる。
「来栖初日。オレ様の必勝祈願の件は、準備ができているのかだぜ?」
伊集院くんは、威張っている。
その隣の猫又執事のジミーは、ジェラルミンケースを持っていて、それを開いて、ズラリと敷きつめられた一万円札を見せてくる。
「お賽銭だぜ」
明らかに多すぎる。でも、伊集院くんは偉そうだ。
「い、伊集院くん。いつも豪快ね」
「セレブだからだぜ」
「必勝祈願は、私の家の飼い猫で、招福神社で修行中のコミコがやってくれるわ」
初日ちゃんは、伊集院くんに、猫巫女を紹介する。
恋愛祈願を成功できなかった猫巫女は、自信をなくして、初日ちゃんの後ろに隠れている。
「オレ様は、野球部所属の伊集院翔平だぜ。全国大会を控えて、必勝祈願に来たぜ」
伊集院くんは、大きく威張る。
「…そうかにゃん?」
自信の無い猫巫女。
それを、見た伊集院くんは、“恋愛祈願失敗”の件は、聞いているという。
招福神社の祈願なんて、あまり気にしたりはしないという。
ただの、願かけ。
申し訳程度の期待しかしていない。
「…オレ様は、セレブの親の言いつけで、あまり野球に没頭できないんだぜ」
伊集院くんは、野球は好きだが、お金持ちの両親に止められているという。
「しかし、野球部が関東大会を目指しているから、仲間の必勝祈願を望んでいるんだぜ」




