9 東の森
そして迎えた週末の休みの日
リアンたちは早起きして荷物を詰め込んだリュックを背負い
一番乗りで食堂に集合した。トレーを持っていつもの場所に陣取る。
休日の食堂はまだ他に人影はない。
「東の森ってさ、どんな魔物がいるんだ?」
「どうだろ。学科の ”魔物の特徴と生態” で習ったのは大雑把な事だけで
細かい分布を習うのは二年になってからだろ。三班が合宿するんだったら
南の森よりは強いのがいるんじゃないか?」
「あまり強いのはちょっと無理っぽくないか?」
「森の奥に入らなきゃ問題ないだろ。それより荷車とか必要ないのか?」
「ジンはどんだけやる気満々なんだよ。また明日から合宿で狩りをやるんだから
今日は ”楽しくピクニック” ていう感じで良いじゃん」
「そうだな。明日の準備運動って事にしとくか」
「明日も北の森まで歩いてからキャンプ地設営とかもあるし
今日は程々にして疲れを残さないようにしないとね」
「リアンも最近忙しそうだったから久々の遠出だろ。大丈夫?」
「領地にいた時は一日中駆け回ってたから寧ろ最近の運動不足が心配」
食事が終わり東の森を目指して出発する。
東の森まで普通に歩けば三時間ほどかかる・・・のだが重いリュックを背負って
速歩きで進む。その間無駄話に花を咲かせる程には余裕もある。
「エドさん、ここんとこ忙しそうだよな」
「そりゃ合宿だけでも実行委員やらリーダーやらやってるし生徒会の事もあるし
ぼちぼち入団試験の事なんかもあるだろ。二年後の自分たちも休みだからって
こんなに呑気に過ごせなくなるんじゃないか?」
「うわー、それは嫌だな。俺は休みの日はのんびり好きな事やって過ごしたい」
「あっ、俺もニースと一緒。まあ、俺らみたく凡人はそこまでは忙しくないんだろうけど」
「リアンなんかもエドさんと同じ感じで忙しくなるんじゃないのか?」
「えっ、なんで?僕は実行委員とか生徒会は遠慮したい。
エド兄は目立ちたがりだから好きで立候補してやってるって聞いたし・・・」
「だよな。俺もわざわざ自分から面倒事に首を突っ込む気はない」
「馬鹿だなあ。リックがやりたいって立候補したとして
誰が票を入れてくれるんだ?」
「あはは、それは言えてる」
「普通それを自分で肯定する?」
なんやかんやと雑談しながら二時間ほどで東の森に到着した。
騎士団の詰め所から少し離れた所で森が深くなく、小中型の魔物がいそうな場所を探して移動する。森の外円沿いに歩いて見つけた川が在って下草の茂った林近くに拠点を構えた。
荷物を下ろし周りの様子を伺いながら薪にする小枝を集めていく。
暫くして林の方でガサガサと音がした。六人が一斉に剣を掴んで三方に分かれて林に飛び込む。
数分後、藪の中から二人がかりで獲物を携えたリアン達が現れた。
獲物を持った二人は川へ向かい、一人が火を起こす。リアンは川原の土手で香草を探し、後の二人が藪近くに自生するバンブの木を数本切って来た。
バンブの木は20~40センチごとに節があり節の間が空洞になっている。
硬い繊維が縦に走っていて裂けるように割りやすい。
リアンは見つけたガリクとジンジヤの地下茎を川の水で洗って土を落とす。平らな石と掴むのに手頃な石の表面をさっと水洗いして採って来た香草をすり潰す。
ボブはバンブの木の節を避けて切った物を縦に割って肉を刺す太目の串を作っていく。ジェドが両端に節の部分が残るようにして切った数本を林近くの開けた場所で土の上に設けた焚火に放り込んだ。
暫く様子を見ていたジェドが「弾けるぞ!」という声を上げた。
警告しておかないと皆驚いて飛び上がる・・・間髪を入れず
バン‼ バン‼ パン! と大きな音を立ててバンブの木が弾け飛び散った。
こうしておくと捌いた魔物の匂いがしても暫くは他の魔物が寄ってこないと
田舎の元冒険者のじい様が教えてくれた。
皆で慣れた手つきで捌かれたファングボアの肉を串に刺す。それを石の上のすり潰した香草の上を擦り付けるように転がし、最後に塩を振って焚火の周りに刺していく。暫くすると香草と焼けた肉の香りが辺り一面広がっていった。




