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31 贈り物のその後


ベティとデイジーに今までに無く苦心して仕上げたシリルの合格祝いの品物を託した時、次に待ち合わせる日を決めていた。そしてその約束の日に待ち合わせの場所を訪れたリアンに二人は満面の笑顔を向けて ”シリル様からお返しの品物を預かって来たわ” と小さな包みと手紙を手渡してくれた。


そして ”早めにお返事を出した方が良いわ” と提案する二人に急かされて

これならば、と納得のいく便せんと封筒を探して歩き、二人お勧めの気軽に入れるカフェでアドバイスを貰いながらお礼の手紙を認める事となった。


そこで初めてシリルから贈られた小箱を開けてみた。

自分の瞳と同じライラック色のグラデーションの髪飾り。

今までお手頃なリボンしか身に着けた事が無かった。


シリルからの手紙には 心の籠った品物を贈って頂き大切に使わせて貰うというお礼の言葉と 家族以外に初めて贈り物するという事で妹に助言を貰いながらお礼の品を選んだ、という内容の言葉が丁寧な字で認められていた。


素敵な髪留めはタオルとハンカチの返礼品にしては高価すぎる。少しでも喜んで貰えたのだろうかと とても心躍る気分になった。


兄であるエイドリアンには何度も書いた事のある手紙も やはりシリルへの贈り物を考えた時と同様、書く言葉一つ一つに気を遣う。

敬語使いは合っているだろうか、もう少し丁寧な言葉を使った方が良いだろうか、何か誤解を招くような文になってはいないだろうか……

アドバイスを貰いながら何度も見直して何とか書き終えたお礼の手紙を何故か嬉しそうに微笑む友人に託した。



それからしばらく経った頃、騎士学校の仲間達とエイドリアンのいる騎士団へ見学に行こうという話しが持ち上がった。リアンはベティ達から託った合格祝いを渡してからというもの何かと忙しかった兄に会う事は無かった。


もしかしたら同じ騎士団に在籍するシリルにも会えるかもしれない。せっかくの機会だから贈られた髪飾りを身に着けて行こうと思い立った…… のではあるが 

髪飾りを受け取ってから最初の対面となるかもしれないという思いは

贈られた髪飾りを着けている姿を見て欲しいという気持ちとどこか気恥ずかしい気持ちの入り混ざった複雑な物となった。


一方のシリルは、というとアイリーンをはじめ周りの者達がリアンとの関係に何かと気を使ってくれている という事を何となく感じ取っていた。

”リアンから託った” と言って思いもしなかった合格祝いを渡され

彼女が刺繍を施したという品物を目にした時、何とも言えない感情が込み上げて来た。

まだ二人の関係を知らなかった合同合宿の時、エイドリアンがリアンに制服の補修を依頼し、出来上がったそれを手渡す場面を目の当たりにした時に今まで経験した事の無かったモヤモヤした感情が込み上げてきたのを覚えている。


その後、公園で仲間と屈託のない笑顔で会話する彼女を見かけた時、オスカーからエイドリアンとの関係を教えて貰った時、泉の周辺を並んで歩いた時、彼女と関わる事が重なっていく度に強くなっていくその感情の正体に気付かずにはいられなかった。



騎士団に入団してからというもの研修などでエイドリアンと顔を合わせる事が多くなった。リアンとの関係が兄妹と知らないままでいたならば 悪い意味でライバル視していたかもしれない。今の様に落ち着いて接する事は出来なかったのだろう。彼の良い所から目を反らしてしまい 良い意味でのライバルで友人という関係を築く事は出来無かったのかもしれない。


そのエイドリアンに ”次の休日に同郷の後輩が見学に訪れる事になっているから休みが合うのなら一緒に案内しないか” と誘われた。

何故誘われたのか疑問に思ったが全く知らない連中でもない。

彼女には泉で会った後、アイリーンを介しての手紙と贈り物を交わして以来の交流となる。


一瞬躊躇ったがすぐに肯定の返事を返すと意味深に口元を緩めて

「やはりな……」

と呟いた気がしたが深い意味は無いと受け取っておこう。


そして迎えた見学当日、待ち合わせの場所に行くとエイドリアンの学生時代からの友人であるサイラスの姿もあった。

程なく門の向こう側から近づいて来る賑やかな一行が目に留まる。

すぐに目的の人物に目が釘付けになった。

ハシバミ色の髪を肩に流しいつものように仲間たちと笑顔で会話しながら近づいて来る。こちらに気付いた様なので片手を挙げると柔らかく微笑んで軽く会釈を返してくれた。


合流した見学者達と挨拶を交わして歩き出した。リアンに並び立って歩き出して始めて彼女の髪飾りに目が留まった。


「改めて以前貰った心の籠った贈り物のお礼を言うよ。それと… 髪飾り、着けてくれてるんだ。ありがとう」


「こちらこそ、かえって気を使わせてしまって。とても素敵な髪飾りをありがとうございます。勿体なくて今日初めて使わせて貰ってます……」

気恥ずかしくて下を向いたままのリアンが答えた。


「気に入って貰えて良かった。私もとても気に入ったから

 まだ使った事がないんだ」


それを聞いたリアンがパッと顔を上げてシリルの顔を見る。


「えっ、なんで?! エド兄なんてすぐに汚しちゃって

 ”また作ってくれ” って言うのに。せっかくだから使って欲しいんだけど」


思わず素に戻って訴えるリアンに目を泳がせたシリルが答える


「汚してしまったら勿体ないから……」


ハンカチやタオルが汚れて勿体ないなんて言う事は初めて聞いた。

不思議に思ってシリルを覗き込むように見やる。


「せっかくリアンが刺繍してくれたのに汚すと勿体ないから……」


その返答を聞いてリアンも思い当たる。シリルが贈ってくれた髪飾りは今日まで使う事が出来なかった。部屋に帰ったら綺麗に磨いてまた箱に仕舞うだろう事は必至だ……


「せっかくだから使って。違う刺繍をするからまた貰ってくれると嬉しい」


「ほんとに? じゃあ俺もまた何かお返しするよ」

シリルも素に戻って会話する。


同行している面々は以前から薄々気付いていたリアンの変化の原因がはっきりしてニヤニヤとしながら前を歩いているのだが そんな事には気付きもしないで会話を続ける二人なのであった。


ここまでお付き合いいただきありがとうございます。

あと一話で完結予定です。下書きは出来ているのですが

何度見直してもおかしなところを発見して

校正に時間がかかってしまいます・・・(;^_^

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