28 合格祈願 2
「なかなか謝罪する機会に恵まれず……本当に申し訳なかった。ところで私もその ”リンゼイ様” という呼び方はちょっと慣れそうにないから・・・出来る事なら名前の方で呼んで頂けないだろうか」
「僕、物心つく前から頃から何時も兄達に混ざって遊んでいたので女の子って言う自覚が無いまま中等学校に入学したんです。騎士学校では周りが幼馴染の男子ばかりで自分の事も僕って言うのが当たり前になってるし。間違われるのは何時もの事だから全然気にしないで下さい」
「ありがとう。そう言って貰えると助かるよ。妹が助けて貰ったっていう話しを聞いてからずっと気になっていたんだ。これで肩の荷が下りたよ」
「どこでご縁が有るか分かりませんね。僕もまさか姉がご迷惑をおかけしたご令嬢がリン…シリル様の妹君だなんて思いもよらなかったです。ところでシリル様は私とジョゼフィーヌ姉さまが姉妹だという事をエド兄…エイドリアン兄さまからお聞きになったのですか?」
「あ、いや…… 私の友人の妹が偶々リアン…嬢の友人のお一人と親しくしているらしくてね。その友人から伝え聞いたんだ」
「そうでしたかーーー ところでその ”リアン嬢” という呼び方、私も ”シリル様” と呼ばせて頂きますので ”リアン” でお願い致します。私の友人は皆私の事を ”リアン” と呼び捨てにしていますから……ご友人の妹君の友人の友人という事でそのようにお願いできればと思います」
「そ、そこまで言って貰えるならば遠慮なく リ…リアンと呼ばせて貰うよ」
話を続けていた二人が納得したのか会話が一段落した様に見て取れたので
アイリーンが偶然とはいえ祈りの泉で再会した理由を探ってみる。
「ところでリアン様方は今日はどのようなご用件でこちらの ”祈りの泉” にお越しになられたのですか」
「エイドリアン兄さまの王都警備騎士団入団試験の合格祈願に、と友人を誘って訪れたのです」
「それは偶然ですわね。私達も兄の入団試験の合格祈願に訪れたのです」
「そうでしたか。ところで失礼な事をお伺いいたしますが
シリル様は王城警護騎士団への入団を希望されていらっしゃるのですか」
リアンはずっと気になっていた事をこの機会に本人に聞いてみる事にした。
「いや、私は王都警備騎士団を希望しているからエイドリアン殿とはライバル? になるのかな」
その言葉を聞いてアイリーンが並び立つ兄の顔を見上げた。
「まあ。リアン様のお兄様はシリルお兄さまが ”ライバル” とお呼びする程の実力をお持ちの方なのですか」
「ああ。合同合宿で二度ご一緒した事が有るのだが 他の生徒達とは一線を画した剣術の腕前と リーダーとしての統率力も目を見張るものだったよ」
「まあ。お兄さまがそこまで実力を認められた方のお身内の方との此処での再会は 何か特別なご縁がある様に感じますわ。お互いの健闘を称えて一緒に祈願をするというのも良いかもしれませんわね」
「賛成です。お二人はきっとこれから先もずっと好敵手となられるでしょ? エイドリアン様はいらっしゃいませんけど 代わりにリアンがお兄様のご健闘を祈願して差し上げるのが良いかもしれませんわ」
デイジーが乗り気でリアンに提案する。
話が纏まったので五人で泉のお祈りスポットへと移動して来た。
泉の縁に2~3人ほどが並んで祈願ができる台座が設けられており順番を待つ人の行列が出来ていた。
リアン達も最後尾に並んで順番を待った。
順番が回ってきた途端リアンの前に並んでいたアイリーンが一歩下がりリアンに順番を譲った。
「私は当事者ではありませんし兄の良きライバルのエイドリアン様のご検討を兄と一緒に妹であるリアン様に祈って頂きたいですわ」
「「それは良い考えですわ」」
声を揃えてアイリーンの提案に賛成した友人二人を見ながら 何か言いたげに口をパクパクさせているリアンに シリルが声を掛ける。
「それではエイドリアン殿の代理として入団試験で良きライバルとしての健闘を一緒に誓って頂けますか? …リアン」
少し照れたようにシリルが申し出る。
「分かりました。シリル様に良きライバルと認めて頂いて
今この場に居ない兄もきっと喜ぶと思います」
頬をほんのりと染めたリアンが答える。
ベティーやアイリーンに提案され拒否する理由も無いので先にシリルとリアンが二人並んで両手を合わせて合格祈願を済ませた。
その後5人で改めて露店を見て回る。ベティーとデイジーは学園で人気のシリルと一緒という事もあり澄ましているのかいつもより口数が少ない。リアンは元々口数が少ないのだが何故かアイリーンから色々な質問をされていつもよりよく話していた。
シリルはと言うと今まで身内以外の女性と出歩いた事は皆無である。
それが一度に四人もの同年代の女性と連れ立っているという事で
周りのざわつきや人目が気になって落ち着かないのであった。




