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27 幼少の頃のシリル


シリルとの養子縁組を望んでいる叔父夫妻は貴族学園の学生時代に知り合い大恋愛の末に結ばれた。

とある伯爵家の長女として生まれた夫人は生まれつき体が弱く婚姻したとしても後継を望む事は出来なかった。幸いな事にリンゼイ伯爵家次男である叔父も周りが思う程には後継者を望んではおらず 必要であれば縁戚の者から養子を迎えれば良いだけの事と考えて結婚に踏み切った。双方、他の兄弟が伯爵家を継ぐことになっており婚姻に対しての障害は他には無かった。


シリルが物心付いた頃には叔父から養子縁組をしたいという申し出を受けていた。その叔父夫妻は王都へ来る度、王都から叔父の領地に遊びに行く度に幼いシリルをとても可愛がってくれた。そして子爵家の跡取りとなれば領地経営で食べる事には不自由しないからと叔父に説得され続けた。


そんな訳で幼い頃のシリルは甘やかされて育った、というより自分の立場に甘えて育っていった。伯爵家は一つ上の長男が継ぐ事が決まっていた。王城警備騎士団の家系であるリンゼイ伯爵家の嫡男は先祖代々に渡り剣術は元より学問においても厳しく育てられて来た。


シリルの父であるリンゼイ伯爵は歴代当主の中でも特に家族を大切にする人であった。いずれは伯爵家を出る事になる次男であるシリルにも嫡男の兄と分け隔てなく高度な教育や剣術の鍛錬を受ける機会を与えてくれていた。

弟夫妻と養子縁組するのか、しないのかも本人が成長して分別がつく様になってから決めれば良い事だと考えていた。


そんな親心を知ってか知らずか叔父夫妻には事有る毎に養子になれば子爵位を継げるからと甘い言葉を掛けられ、伯爵家嫡男という重責を担いより強くより優秀さを求められる兄とは違い 自分は努力なんてしなくても子爵という地位が手に入るからと せっかく与えられている教育の機会にも真剣に取り込む事無く呑気に過ごしていた。幼いながらに叔父の養子に成りさえすれば 将来の事を考えて厳しい鍛錬に耐えなくても良いという甘い考えでいた。


そんな甘ったれた考えで育って来たシリルに転機が訪れた。それが叔父の領地で催された近隣領地の家族ぐるみの交流パーティーでの出会いだった。


都会っ子の自分が怖くて触るこ事が出来ないでいた大きな虫を「カッコいい!」と言って目を輝かせていた少女。自分より幼い女の子が平気な虫に怯えて泣いていた事が恥ずかしかった。もちろん彼女しか知らない事である。もしまた会う機会が有ったとしても今のままの自分ではそんな彼女に顔向け出来ないと思った。


そしてそれまでは ”カッコ良い” なんて言う言葉さえ知らなかったと言っても良い。大きくて強いもの(者)に憧れる気持ち。幼心に自分もあんな風に目を輝かせて憧れられる存在になりたいと思った。


その直後、そのパティーの会場で心無い者達の「跡取りは未だかね?」という質問を 奥方の腰に優しく腕を回し笑顔で躱す叔父を目にした時、大切な叔母を守っている叔父をカッコ良いと思った。そして自分の中の何かが崩れた。


伯母が病弱で子供を望めない事は子供のシリルでも知っている。叔父はそんな叔母に常に寄り添い 周りの心無い連中からずっと守っているのだ。

思い起こしてみれば自分の母も叔母も父や叔父の剣士としての姿が好きだと言っていた。自分も強くなっていずれ出会うであろう大切な人に ”カッコ良い” と言われる存在になりたい・・・そんな気持ちが芽生えた。


例え貴族の地位が低いとはいえ子爵家当主である以上幸せな家庭を築くには家族を守れるだけの強さは必要なのだと気付いた。

甘ったれた考えの弱いままの自分では大切な者達を守る事は出来ないと幼いながらに思い知らされる事となった出来事であった。



幼い頃から長男と次男を見比べて育ったアイリーンは以前の甘ったれたシリルの事が好きではなかった。

長男が何事にも真剣に取り組んでいても次男のシリルは面倒事はすぐに投げ出してしまうか適当に手を抜いている事が幼いながらに分かってしまう。


一生懸命に剣術の稽古をしている長兄は妹から見てもとても素敵な存在なのである。友達にも自慢できる兄であった。

それに比べ次男のシリルは見た目こそ長兄に引けは取らないものの全く頼りにできない兄であった。


その兄が初等科に通い出す頃に突如変貌した。何事にも真剣に取り組むようになり剣術の腕もめきめきと上達していった。

今では見た目も中身も友人に自慢出来る兄であり、大好きで素敵な兄でもある。




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