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26 泉での再会


通称 ”祈りの泉” 近くにやって来たリアンとその友人二人は先ずは立ち並んでいる露店を見て回る事にした。色々なグッズを売っていたり食べ歩きの出来る食品を扱っていたりと様々な露店が立ち並んでいる。


普通は貴族の子女が公園で食べ歩きをするという事は考えられ無いのだが

下級貴族や一般市民等も多く訪れる為、平民や貴族の若い勤め人や学生達が分け隔てなく気軽に立ち寄れる店舗が立ち並んでおり王都の中心に位置している公共公園らしい風景だ。

尤も高位貴族は屋敷内に立派な庭園を持っているので街中の公園を散歩する、といった事は無い。


この時期の ”祈りの泉” には合格祈願に訪れる人が圧倒的に多いのだが

平素より恋愛成就祈願や病気平癒祈願に訪れる人も多い。それぞれの目的に合ったお守りを購入する為に店によっては人だかりが出来ている所もある。


「やっぱりこういうのって人気のあるお店の方がご利益が有るのかしら」

「神頼みだけなら人気の有るお店が良いかもしれないけれど本人にそれなりの

実力が有るのなら自分が気に入った物を購入すれば良いんじゃない?」


「そうそう。あくまでもお守りなんだから気持ちを込めるっていう事が

大事だと思うわ」


領地に居た頃は受験に対しての合格祈願などという神頼み的な事は聞いた事も無かった。日頃から家族の平穏を祈り 誰かが危険な事に直面する時や病気、ケガに見舞われた時に無事や回復を祈る事は当たり前の事であったが。



先ほどから楽しそうに友人とやり取りしているリアンの様子を遠目に窺い見て落ち着きのない兄に アイリーンは今初めてリアンの存在に気付いた、という振りを装って声を掛けた。


「まあ、あそこにいらっしゃる方は先日文具店でご助力頂いた騎士学校の

リアン様ですわ。私ちょっと伺ってお礼とご挨拶をして参りますわ」


そう言うとリアン達のいる方へと向かって行く。シリルは一瞬迷ったが妹の後について歩き出した。


リアン達三人は初めてのお守り選びに夢中になっている。並べられたお守りに見入って三人が会話をしていると不意に後ろから声を掛けられた。


「すみませんが騎士学校のリアン様ではありませんか?」


”リアン様” なんて呼ばれた事が無いので一瞬誰の事?と思ったリアンが

キョトンとした顔で振り返った……のだが

声を掛けて来た令嬢の後ろに思いがけない人物を見つけて大きな目を一層見開いた。シリルはアイリーンに追いつき横に並び立って声を掛けた。


「やあ。リアン嬢お久しぶりです」


照れ臭そうに挨拶したシリルだったがリアンはアイリーンを追うようにして現れたシリルとこの綺麗な令嬢が連れだって現れた事に動揺してしまい 自分が ”リアン嬢” と呼ばれた事は頭の中に入ってこなかった。二人の関係が気になる。


先に声を掛けてきたご令嬢が何者だったのかと記憶を辿っているとリアンが思い出す前にベティとデイジーが


「「 リンゼイ伯爵令息様! アイリーン様⁈」」


と揃って声を上げた事でリアンも先日の見回りの際、姉が迷惑をかけていた令嬢であった事を思い出した。しかし何故この二人が一緒に此処を訪れているのか?という疑問が勝り何も言えないでいるリアンに再びシリルが声を掛ける。


「リアン嬢、どうかされましたか?」


再び呼ばれた事で今度は聞きなれない敬称で自分の事を呼ばれたと気付いたのだが色々な思いが一度に頭の中をぐるぐると巡っていて動揺が隠せない。


「あの、いいえ、突然お声掛け頂いてちょっと動転してしまって。

お久しぶりですリンゼイ様・・・」


生まれてこの方 ”リアン嬢” なんて呼ばれた事が無い。それも相手は最近知り合って間もないシリルであるからだろうか。顔が熱くなるのを感じる。何も言えないでいるリアンを不思議に思いデイジーが尋ねる。


「リアンてリンゼイ様だけでなくアイリーン様ともお知り合いなの?」


「先日の騎士学校の見回りの時にちょっとした出来事があってその時にお声掛けさせて頂いたの。まさか覚えて頂いているなんて思ってもみなかったわ。お二人は貴族学園では有名な方々なの?」


リアンは気になっている事をこれ幸いとばかりデイジーに聞いてみる。


「ええ。学園一番の美男美女のご兄妹で有名よ。その上お二人とも

学業優秀でいらっしゃるし」


デイジーから聞いた二人の関係になぜかぐるぐる回っていた思考が落ち着いて来た。


二人のやり取りを聞いていたアイリーンが笑顔で続ける。


「先日はお世話になりありがとうございました。とても助かりましたわ」


「いいえ。こちらこそ姉がご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありませんでした」


「お姉さま?」


「ああ、アイリーンには伝えていなかったがリアン嬢とジョゼフィーヌ嬢はリトレー子爵家のご息女でご姉妹だそうだ」


「えっ?そうなのですか?!」


「はい。似ていないから姉妹には見えないとよく言われます」


「そうだったのですね。でもリアン様が気になさる事ではありませんわ。

御助力頂いた事の方が私にとっては重要な事です」


「そう言って頂けて光栄です。ところでリンゼイ様、その ”リアン嬢” って呼び方何とかなりませんか? まだ君付けの方が落ち着きます」


「いや、先日は本当に済まなかった・・・三年の先輩相手にあの度胸の良さを見せられたものだからすっかり勘違いしてしまって。一緒に居た仲間と男子生徒にしては……可愛すぎるという話しはしていたんだが」

そこまで言ってシリルも心なし目が泳いでいる。


「なかなか謝罪する機会に恵まれず……本当に申し訳なかった。ところで私もその ”リンゼイ様” という呼び方はちょっと慣れそうにないから・・・出来る事なら名前の方で呼んで頂けないだろうか」


そんなやり取りを傍観していた三人が顔を見合わせて意味深に微笑み合っていた事には気付く事無くやり取りを続ける二人なのであった。


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