25 合格祈願
ベティとデイジー、二人と待ち合わせの約束をしている休みの日
リアンは何時ものように、とは言っても友人と街へ出かけるので王都へ出て来て初めての髪型で学食へとやって来た。
朝食の乗ったトレーを持って先に朝食を摂っている仲間の待つテーブルに向かい腰掛けた。一瞬驚いた顔をされた事に少し照れながら何時もの様に挨拶を交わす。
「おはよう。皆は今日何するの?」
「おはよう。今日はリアンはデイジーたちと約束が有るんだろ。俺らは町へ出て女子が一緒の時は行けない武具屋とか回ってみようと思ってる」
「でもまだまだ貯めた手当てだけじゃ気に入った物は買えないけどな」
「でも気分転換を兼ねて目の保養になるし 今から目当ての品を見つけておくのも悪くないだろ」
「そうだね。何か目標が有るって言うのは自分の為に必要だよね」
「リアンは何か目標にしてる物って有るのか」
「んー、僕も今のところこれって欲しいものは無いかな。でも最近私服が有ると良いかなって思う。何処に行くのも制服って言うのはちょっと気分的に寂しい気がするかな……」
「そうだな。言われてみれば街に出た時いつも ”騎士学校の生徒” って目で見られるから羽目は外せないよな」
「それそれ、俺も最近よく思う。入学したばかりの頃は制服って便利だなって思って重宝してたけどやっぱり遊ぶ時と見回りの時は別々の格好の方が良いよな」
「俺も今日は装備見てるだけじゃなくてそろそろ普段に着れそうな物なんか買おうかな」
「リアンは何時もの場所で待ち合わせ?」
「そうだよ。今日は市は立ってないけれど あの辺は中流階級向けの店が多いからベティ達と色々覗いて歩くのには丁度良いと思ってるんだ」
「俺らは冒険者向きの装備品中心だから今日は完全に別行動になりそうだな」
「うん。何時もみたいに夕食ぎりぎりに戻って来ると思うからまた何か変わった事があったら教えて」
「ああ。じゃあデイジー達によろしく」
仲間と食堂で別れて何時もの広場を目指す。騎士学校からは歩きで数十分かかる。
辻馬車に乗る、という手もあるがお金もかかるし運動する事は苦にならない。
おまけに約束の時間までは十分に余裕がある。
しかし一人で出歩く事が殆んどない上に街歩きする時にリボンを付けているというのは初めての事である。髪型も教えて貰ったばかりの編み込みで一纏めにしているのでなんとなく周りの視線が気になる。
何かおかしな所でもあるのだろうかと不安な気持ちを抱きながら待ち合わせ場所までやって来た。
広場に入いるとすぐにベティ達が手を振りながら近づいて来た。
「リアン、ここよ。びっくりしちゃった。この前は夕暮れだったし
色々な髪型を試してたからあんまり気にならなかったけど 改めて見てみると
良く似合ってて見違えちゃったわ。本当に元が良いんだからちょっとの事で
別人みたいね」
「本当に別人みたい。ジェド達もビックリしたんじゃない?」
「今朝一緒だったけれど何も言われなかったよ。エド兄にはこの前
授業の時はリボンは止めておけって言われたけどね」
「・・・それは解らなくも無いわ。周りは男の子ばっかりですもんね」
「 ? 」
「まあいいわ。さてと、何処へ行こうかしら。リアンは何か希望ある?」
「実はエド兄が入団試験前で様子が変ていうかなんか落ち着かないみたいで」
「えっ、あのエイドリアン様が? まさか緊張してるとか?」
「有り得ないと思うけど」
エイドリアンの性格を知っているベティもデイジーも腑に落ちない様だ。
「でもなんかソワソワしてるみたいで。何か試験に向けて落ち着けるような
方法って無いか相談したかったんだ」
「そうねえ……だったら今流行ってる ”祈りの泉” で合格を祈願して
お守りグッズをプレゼントするっていうのはどう?」
「何それ? 学園で流行ってるの?」
「毎年この時期になるとグッズのお店が泉の周りに出てるらしいわ」
「まあ、気休めにしかならないかもしれないけれど
物は試しっていう事で結構流行ってるみたいよ」
「取りあえず行ってみましょうよ」
「うん。この際何でも良いから取りあえず試してみようかな」
話が纏まりリアン達はセントラルパークの一角にある小さな岩山の裾にある
清水が湧きだして泉となっている場所へと移動して来た。
受験や就職試験目前の時期という事もあり泉近くは噂を聞いてやってきた人達で賑わっている。お守りなど開運グッズを売る店も何軒か立ち並んでいてちょっとしたお祭り騒ぎだ。
時を同じくしてセントラルパークにやって来たアイリーンは公園に入ってから
兄が何かを目で追っている事に気付いた。目線の先を追ってみると
前回とは見た目がかなり違ってはいるが先日文具店で助け船を出してくれた
騎士学校の生徒に間違いない様だ。
そういえば兄は彼女と知り合いの様で自分から話を聞くまでは男の子だと勘違いしていたと言っていたが今日の彼女はどう見ても女性にしか見えない。
様子を伺いながら黙って兄に付いて歩いていたが、ふとある思いが頭に浮かんだ。
兄の様子に変化が有ったのは丁度彼女の話題が上った頃と時期が重なっているのではないか? 男の子と間違えて会話していた事を気にしていた筈だ。
彼女の周りを見てみると一緒に歩いている二人は貴族学園高等部の先輩の様だ。
兄は確か ”男の子と勘違いした事を誤らねば” と言っていたはずだが 今の彼女は友達と一緒だ。女性ばかりで声を掛ける事を躊躇っているのではないだろうか。それならば自分が先日助けて貰った事のお礼を口実に声を掛けてみようかと思い立った。




